「点が点に写るレンズ」と聞いたとき真っ先に連想したのが、ノクト・ニッコールレンズ。 手作業による研磨の非球面レンズを採用した夕景・夜景撮影用レンズは30年以上も前に製造されたにも関わらず、プレミア価格で取引されている伝説のレンズです。
今回リリースされた「AF-S 58mm F1.4G」は”ノクト”の冠名はないものの、つい「ノクト」と呼んでしまう不思議な魅力があります。 もちろん最初のレビューも夜景でと思い、日没まで待って撮影に出掛けてきました。
さすがナノクリスタルコートと思わせる透明感の高いクリアーな描写は、照明のグラデーションを細かな階調で実に美しく再現しています。
滑走路に無数に広がる誘導灯の光や、対岸の街灯りもにじみを抑えた実に細かな描写にノクトの思想を感じる事ができます。
もちろんF1.4の大きなボケも強力です。最短に近い距離での撮影は、ピント面を見つけるのに苦労する薄い写りをみせれくれました。
F1.4の大口径から多少の周辺光量の低下は覚悟していましたが、別に照明を用意したかのような隅々まで明るい描写に驚きます。
遠景撮影ではF1.4でも隅々までコントラストが高くシャープな描写です。
イルミネーションが始まった東京の夜景。木々に付けられた小さなLEDライトが大きなボケの光源となり奇麗な演出をしてくれます。
重なり合っている部分にも1つ1つの輪郭を確認する事が出来るあたりに、ボケの中にもしっかりと芯が残っている事が分かります。
今回は撮影機材に最高画質機のD800Eをチョイス。
夜間でもタイルの目が確認できる素晴らしい解像力は、本レンズとの組み合わせでさらに引き立てられた感があります。
中央部に強い光源が入っても、全体の透明感が損なわれることはありません。
小さなゴーストが発生しましたが、夜間とは思えない隅々までメリハリの利いたクリアーな描写です。
高感度に強いニコンならISOを上げてもザラツキは僅かなもの。
夜景に強い光学設計に、暗部に強いセンサーとの組み合わせにデジタルカメラの凄さを改めて感じます。
Nikonのレンズ開発の設計思想に、「3次元の被写体を2次元に、自然に表現する」という理念があるそうです。そう聞くととても難しい事のように聞こえますが、写真は平面で表現するもの、その中にいかに被写体を自然に、美しく、立体的に表現するのか。具体的にはピント面の解像力をグッと上げて、そこからなだらかにアウトフォーカスさせていく、そこにレンズの味があると言います。その性能やスペックから、往年の銘レンズである”ノクト”の名を冠してしまいましたが、そこにあるのはNikonの目指す夢のレンズ像があるのでしょう。その”夢”に近づいた新しい1本、「AF-S Nikkor 58mm/f1.4G」の登場です!
Photo by MAP CAMERA Staff