私がカメラに興味を持ち始めた頃、カメラボディにセット化されていたレンズは50mmの単焦点レンズか35-70mmの2倍ズームレンズでした。それが今では28-300mmの11.1倍ズームとは驚きを隠せません。当時は足りない画角を補うため次にどのレンズを買うかを悩んだものですが「AF-S 28-300mmF3.5-5.6G ED VR」ならそんな心配もご無用。様々な撮影をカバーする広い焦点領域に加え、高画質という性能の高さから、他のレンズが売れなくなってしまうのではと余計な心配すらしてしまいます。
気になる描写も、最新の3600万画素カメラにセット化されるレンズだけあって、シャープで細部までよく解像してくれます。
ズーム全域で最短50cmまで寄れるのも便利です。広角側で寄れば全体的にシャープ、望遠で寄れば大きなボケ味を楽しむことができます。その実力から、何故「マクロレンズ」と名乗らないのかが不思議な位です。
望遠側が300mmもあると、手ブレ補正機能の恩恵も絶大です。ブレたかな?と思った低速撮影もしっかりサポートしてくれました。
望遠側でも開放F値5.6の明るいレンズは、ボディーのAFセンサーとの相性も良く風に靡く被写体でも迷い無くピントを合わせてくれます。
布の質感、模様のコントラストの再現性も良く、改めて良く写るレンズと感心しました。
ちょっと意地悪な撮影。真夏の強烈な日差しを入れてみました。ナノクリスタルコートが採用されていないことから、どれほどのゴースト、フレアが出るのだろうと心配しましたが、元々優れた多層膜レンズコーティングが施されているだけあって五月蠅さを感じません。逆に太陽光の日差し感が強調され温度感が伝わります。一方で陰になった煙突の質感も細部までしっかり捉えています。
高倍率ズームと言えば、レンズメーカーが得意とするコストパフォーマンスが高い、軽量・コンパクトレンズというイメージが強いですが、本レンズは予想を反して重くガッシリとした作りになっています。現在ニコンから発売されているFXフォーマットのラインナップはいずれもフラッグシップモデル。これらのボディに装着することを考えると、あまり小さすぎるのもバランスが悪くなってしまうのでしょう。実際に太めの鏡筒のおかげで、細かなズーム操作もし易く、安定したホールディングが可能です。
旅に持ち出す事を考えると、一見不利にも感じますがレンズ交換の必要が無くホコリ混入の心配がいらないのは大きなメリットです。高画素化されたセンサーにゴミが乗ってしまうと本当に大変ですから。
優れた描写としっかりとした作りは、さすがニコンと言いたくなるレンズ。ズーム幅と同じくらい、幅広い範囲で撮影が楽しめることでしょう。
Photo by MAP CAMERA Staff
使用機材:Nikon D4 +AF-S 28-300mm F3.5-5.6G ED VR