3本の新Milvusレンズ、続いてはシリーズ最広角の『Milvus 15mm F2.8』のフォトプレビューをご覧いただきましょう。
本レンズはClassicシリーズの「Distagon T* 15mm F2.8」と同じレンズ構成で、公表されている性能表も酷似しています。とは言え、フードの脱着が可能になるなど利便性は明らかに向上しています。果たして新レンズはいかに進化したのか?早速、撮影に出掛けてきました。
撮影場所を模索中、同等仕様のClassicレンズとの違いが見出せるかと言う不安以上に筆者を悩ませたのが、先に撮影した「Milvus 18mm F2.8」との近い焦点距離による使い分け方です。しかし実際に撮影してみるとその不安は露と消えました。
広大な景色を迫力満点に映し出すワイド感に圧倒です。単焦点レンズは足を使って構図を調整すると言いますが、この3mm差を足で稼ぐのは相当難しいと感じます。普段ズームレンズばかり使っていただけに、今更ながらにレンズラインナップの奥深さを知ることとなりました。
高台から捉えた太平洋の荒波、超広角による引きの画でも失われない迫力は臨場感をそのままに伝えるクリアな描写のおかげでしょう。
滝の前に丁度良い岩場があったので、カメラを置いて低速撮影にトライしました。水面ギリギリに設置しても水濡れに強い構造のおかげで心配ありません。2~3mの小さな滝ですがローアングルで撮るとなかなかの迫力です。
混雑する水族館では難しい水槽全体の引きの画も、超広角の本レンズなら前方で撮影できるので、前を横切られることなく画面一杯に捉えることができます。
水槽内ではLED照明によって様々な演出がされており、クラゲの透明感や照明が織り成すグラデーションを綺麗に捉えてくれました。暗部の色再現性の良さにも驚きます。Milvusシリーズの特徴でもある、フレアやゴーストの発生を極限まで抑えているコーティングレイアウトの凄さを改めて感じることができました。
接写時の放射状に広がるパスは群れで泳ぐ魚の迫力をより引き立てます。本ページを作成中、この写真を見たスタッフから「怖い」と言う声が上がりました。写真を見て怖いと感じるほどの臨場感に改めてレンズの凄さを感じました。
写真をご覧になって同様に怖いと感じた方、申し訳ございません。でもその分だけ本レンズの実力を感じていただけているはずです。
撮影はレンズを水槽に密着させるスタイルで行いました。冒頭に書いたフードを外せる恩恵によるものです。暗い水族館では水槽までの距離があると周辺の写り込みが生じやすくなるため密着できるのはとても便利です。
公園を散策中、足元に猫がすり寄ってきました。散々私に身体をこすりつけた後、身体を洗い始めたので、私の足元はそんなに汚いか!と詰め寄っての1枚です。ほぼ最短域まで寄っても逃げる気配なし。逆に鋭い眼光で睨み返される始末です。そんな逞しさも伝わってきます。
開放からシャープで透明感の高い描写は、最短撮影距離25cmまで寄ることによってさらに質感描写力を高めます。フードを装着しての接写では光量不足になりがちですが、ウエイトバランスのとれた扱いやすい鏡筒は低速シャッタ-でも安定した撮影が可能で、マクロレンズの様な楽しみ方もできます。
続いてはボディを『Canon 5D Mark IV』へスイッチ。撮影先に向かったのは東京・代々木上原にある『東京ジャーミイ・トルコ文化センター』へ。オスマン様式で建てられたこの施設はイスラム教の礼拝堂とトルコ文化を紹介する『トルコ文化センター』が併設されています。
まずは礼拝堂に入る前に回廊を見上げてでのカット。内側がドーム状に分かれており、模様がとても美しいのが特徴です。強い光を逆光で写真に入れるという広角レンズには意地悪な構図だったため、中央右上にゴーストが写り込んでしまいました。まぁ、こんな構図は『意図的にゴーストを出す』以外ではやらないと思いますが、実は肝心のゴーストがなかなか出なくて苦労しました。(笑)
ZEISSレンズといえば『T*コーティング』も大きな魅力の一つですが、その性能も現代の光学系にふさわしく大きく進化していると感じられます。大口径の超広角レンズにもかかわらず、通常の撮影時ではまずフレア・ゴーストは発生しません。
大理石に映る影とのコントラスト。強い日差しで白く輝く中『Carl Zeiss Milvus 15mm F2.8』は大理石の表情をしっかりと捉えているのがわかります。
礼拝堂へ入るとドーム状の天井施されたアラベスクとステンドグラスのあまりの美しさに圧倒されます。この『東京ジャーミイ・トルコ文化センター』はトルコの宗務庁が中心となり、トルコ全土から建築の寄付金を募ったほか、モスクの建築資材や、内装・外装の仕上げを手がける職人を派遣し2000年に完成しました。
拡大してご覧いただくとよくわかると思いますが、そしてその細密な装飾を本レンズは見事に写し出しています。歪みが大きいはずの四隅までしっかり解像していることも驚きですね。素晴らしい描写力です。
ハイキー気味の露出だった天井ドームの写真とは雰囲気を変えて、光と影を意識した露出で撮影。礼拝堂内には外国人観光客の姿も多くありました。窓際で腰をかけている彼はニューヨークから来たアフガニスタン系のアメリカ人。「2週間の日本旅行で、次は京都へ向かうんだ」と話していました。都心にある大きなこのモスクは国籍という概念を超えて多くのムスリム(イスラム教徒)や、異文化の魅力に触れたい日本人が訪れる場所です。
クルアーン(コーラン)にも美しいアラベスクが施されています。日陰で薄暗い中、金の装飾にうっすらと反射した光を印象的に捉えてくれました。
天井から入り口に掛けて縦構図で撮影してみました。印象的な天井を写しつつ、周りの情景も一緒に切り撮れる独特の構図は超広角レンズだからこそ出来る技です。上から吊り下がっている巨大なシャンデリアは、実はクルアーン(コーラン)に書かれている言葉をカリグラフィーと呼ばれる手法で文字をデザインし装飾したもの。なかなか触れることの少ないイスラーム文化ですが、今回撮影で訪れた『東京ジャーミイ・トルコ文化センター』ではムスリムでない私たちも気軽に見学ができ、異文化を体感できる場所です。アクセスもしやすい場所にありますので日帰りトリップにおすすめです。その際にはイスラーム文化に敬意を払い、マナーを守って見学をお願いします。
『Carl Zeiss Milvus 15mm F2.8』は「さすがツァイス!」と唸らせるほどの素晴らしい描写を持ったレンズでした。15mmという画角はホロゴンから続くCarl Zeiss伝統の画角であり、歪みが極めて少く四隅まで解像する本レンズは、高画素時代に突入した現代のデジタル一眼レフにベストマッチする1本です。超広角の単焦点レンズということで使うシーンを選ぶかもしれませんが、その代わりにズームレンズでは描くことが難しい超高画質を手に入れることができます。そして、この画角でありながらフードが取り外せるのに加え、フィルターが取り付けられるのも嬉しいですね。ぜひ『Carl Zeiss Milvus 15mm F2.8』とともに素晴らしい景色を作品に残してください。
Photo by MAP CAMERA Staff
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