FUJIFILMがおくるプレミアム・コンパクトラインであるXシリーズ。その筆頭として、斬新なハイブリッドビューファインダーと広角大口径の単焦点レンズを装備し、その高い描写性能で大いに人気を集めた『X100』ですが、この度その後継機種が発売されました。『X100S』、その外観デザインはほぼ先代を踏襲していますが、何より驚かされるのはその操作の俊敏さ。機動からAF、レリーズタイムラグに至るまで驚くほどの快速さです。AF速度は世界最速の0.08秒(2012年11月段階)と言いますから、素晴しいの一言。スナップに最適な仕様の『X100S』ですから、これは特筆すべき大きなポイントです。
逆光にもやはり強い。強い光源でノイズが出てしまうカメラもありますが、『X100S』は素直な反射です。木々の葉も透明感ある描写で美しいものです。
起動からフォーカス、レリーズに至るタイムラグが解消されたのはかなり大きく、狙ったタイミングで迷わずシャッターが切れるのは撮影する上でも大きなアドバンテージです。ここ!と感じたシーンでシャッターが切れないのはフラストレーションの溜まるもの。カメラの基本性能を大きく底上げしてきた印象で、これは『X100S』の完成度を大いに高めています。
レンズの切れ味の良さ、トーン再現の美しさは『X100』でも遺憾なく発揮されていましたが、今回は更に解像力を拾える構造になったという事で、全体に気持ちのよいくらいのシャープネスが得られます。ボケとシャープの差分が大きくなる事で画面にメリハリが効く印象で、今回はJPGそのままの掲載ですが十分に高品位な撮影が可能です。
微妙な色合いが美しいクリスマス・ローズ。少し厚みのある花弁の柔らかな質感も含めて良い描写です。マクロでも大いに立体感を感じさせてくれますね。
絞り羽根は9枚採用されているという事で、円形の綺麗なボケが楽しめます。近接開放近くでの周辺の柔らかな滲みは個人的にとても好ましい描写です。
今回は”デジタルスプリットイメージ”と”フォーカスピーキング”という2つのマニュアルフォーカス・アシスト機能がつき、近接などのシビアなピント合わせもかなり簡便にこなす事が出来る様になりました。 フルマニュアルの撮影というのも、これはなかなか楽しいものです。
輝度差の強いシチュエーションでもさすがの描写です。暗部と明部にコシがあるお陰で、破綻せずに意図した撮影が出来ました。
モノクロームでは諧調の美しさが際立ちます。しかしグッと来るシャープさ、Xシリーズの底力を感じさせます。
ISO1600でも何ら問題ないでしょう。ボケに少々ノイズが、目を凝らせば見える程度で色転びも諧調の破綻も無い。今回『X100S』には新しく『X-Trans CMOS II』センサーが搭載されたとの事ですが、30%以上の低ノイズ化というのも頷ける描写を見せてくれます。
操作系が外部に露出しているのは分かりやすい、『X100』譲りの使いやすさです。外観は大きな変化はありませんが、トップカバーに誇らしげに刻まれた”S”の意味は、使えば即座に分かるものでしょう。レスポンス、描写力、カメラにとっての基本性能を真面目に考え磨き上げた1台という印象で、大いに魅力的なカメラに仕上がっています。
Photo by MAP CAMERA Staff