世界初のフルサイズ・ミラーレス機として人気を集めている『SONY α7』だが、その特徴からマウントアダプターを使用するボディとして注目している方も多いのではないだろうか。そんな中で、新たに注目の新製品が登場した。それが”Voigtländer”ブランドで発売されたライカMマウントをEマウントに変換するマウントアダプター、『VM E-Close Focus Adapter』だ。通常のマウントアダプターであればこれまでに複数ブランドから発売されているが、今回『Close Focus Adapter』として発売された本アダプターは4mmのヘリコイドを内蔵し、レンジファインダーレンズの最短撮影距離を縮める事が出来るというスグレモノ。
一眼レフスタイルの『α7』では最短撮影の長さが気になった物だが、このアダプターがあれば50mmの標準レンズで50cmほどの近接が可能になる。実際に撮影してきた画像をご覧頂きたい。
まずは最近発売となった”Voigtländer Nokton 50mm/f1.5″から。近接でも崩れの無い、素晴らしい描写で魅せてくれる。通常70cmの最短距離が41.8cmまで寄れるので、これまで見る事が出来なかったマクロ域での描写が楽しめる。
濃厚な発色だが、柔らかい雰囲気も残す。通常の撮影距離であればアダプター側のヘリコイドにロックをかける事で、スムーズな撮影が可能だ。
総金属製の素晴らしい仕上げのレンズだ。少々重量の有るレンズだが、ヘリコイドがしっかりとしているお陰でスムーズにフォーカス出来る。簡易なヘリコイドではスタックしてしまう様な重量レンズでも、このアダプターなら安心だろう。
オールドレンズらしい柔らかな質感と優しい発色、そしてその中で描かれる精細な描写が印象的だ。レンズの個性も存分に味わえる。
少々操作は煩わしいが、初代リジッドズミクロンでマクロ撮影が楽しめると有れば、オールドレンズファンにはたまらないものだろう。
個人的にモノクローム撮影で重宝しているのがこの”Summar 50mm/f2.0″である。柔らかく繊細な描写が持ち味なのだが、少々眠いその個性がどう出るか気になっての撮影だった。結果はご覧の通り、柔らかく優しいその描写が実に美しく再現されている。それでいてピント面はシャープなのだから、これは実に楽しい。古い時代のLマウントレンズは最短が1mのものが多いが、50cm近くまで近接出来るとこれまで見えなかった個性が見られる。
ボケも乱れに乱れているが、これも撮影していて楽しいものだ。
オールドならではの描写が持ち味のレンズである。こうした描写をこれまでに無い自由度で楽しめるのが『α7』の大きな魅力である。ただし、レンズを沈胴させる際には注意が必要だ。内部に接触してしまう恐れが有るため、その点は注意して使用して頂きたい。
ライカの王道標準レンズ、『Elmar50mm/f2.8』の最終型の描写である。透明感のある発色と、滑らかな質感描写。そしてトーンの美しさでフィルム時代にも根強いファンの居た銘レンズ、『α7』でもその描写は健在で、艶やかなガラスの輝きは実に鮮やかだ。
軽量、コンパクトながらレンズとしての完成度が非常に高い1本である。高感度にも強い『α7』であれば2.8というF値も苦にならず、その鮮明な描写を楽しめるのではないだろうか。
変わって、こちらは『Voigtländer nokton 35mm』。大口径でコンパクト、更にオールドレンズの柔らかな描写を意識して設計された1本だ。通常の撮影距離でも優しい描写が楽しめるが、近接するとそのボケ等が強調された面白い描写が楽しめる。35mmレンズではより近接が可能で、28.8cmという近接撮影が可能なのも楽しいポイントだ。
コンパクトで取り回しも良く、開放も明るい。その画角と描写もあいまって、好きな方にはとてもコストパフォーマンスの良いレンズだ。また、「ボディバランスが良く単純にカッコいい」というのもお勧めしたい理由である。
それでは、90mmの望遠レンズではどうか。75cm近くまでの近接が可能になるエルマリートではボケも大きく、大口径望遠ならではの描写をしっかりと楽しめる。レンジファインダーでは難しかった厳密なフレーミングも可能で、評判の良いLeitz望遠レンズ群を楽しめるボディとしても最適だ。
こうした望遠レンズ使用時に、ヘリコイドの造りの良さがしっかり伝わってくる。大きく、重いレンズでもヘリコイドの使用が可能で、信頼感のある仕上がりは実に頼もしい。
それでは、より広角ではどうか。『Voigtländer SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5』では何と最短撮影距離が10cmまで短縮される。広角でぐぐっと寄った、よりデフォルメした写真表現が可能だ。小さなポインセチアも画面いっぱいに描写されるのだから、その違いをお分かり頂けるだろう。
これもコンパクトなレンズだ。気軽なストリートスナップに新しい画角をもたらしてくれる、スパイスとしてもオススメな1本である。
以上、様々なレンズを試してきたが、この使い勝手の良さと楽しさをお伝え出来れば幸いだ。レンジファインダーで使用しているとあまり気にならない最短撮影距離だが、一眼スタイルになるとどうも気になってしまう。『もう少し寄りたい!』という思いにまさかの方法で答えてくれる『Voigtländer VM E-Close Focus Adapter』は『α7』シリーズの新しい魅力を伝えてくれるアクセサリーだ。
Photo by MAP CAMERA Staff