ニコンデジタル一眼レフのフラッグシップ機『D4』が待望のモデルチェンジを果たし、『Nikon D4s』と生まれ変わりました。
プロカメラマンからの数々の要望を取り入れ、より完成度が増したという『Nikon D4s』。
果たして『D4』と比べどれほど進化したのか?気になる進化の度合いを計るべく早速撮影に出掛けてきました。
まず最初に感じたのがより静かに、かつ振動の少なくなったシャッターの感触です。
ここ最近の新製品と言えば画質ばかりに気が取られていましたが、力強さの中に上品さを感じるシャッター音にカメラ本来の進化を感じました。
おかげで連写時の振動によるブレも軽減。望遠レンズでの手持ち撮影時などでは頼もしい限りです。
もちろん画質の面でも改善が図られています。
総画素数が若干増えた新開発のCMOSセンサーを搭載。記録画素数自体にも変化がなく、高画質化したという実感は薄いですが、相変わらずの色乗りの良さで1620万画素という最近ではおとなしめの画素数でも十分な解像力を披露してくれます。
天井から下がる金属の小さな玉も1つ1つをしっかり見ることができました。陰影によるグラーデーションも美しく、カメラは画素数だけではないというのが良く伝わってきます。
ホワイトバランスの強化も見逃せません。
より健康的な肌の質感を再現するとの事でしたが、スナップ撮影でも白がより白に再現される辺りにその進化を感じることができました。
水の白さと透明感がしっかり伝わるとてもクリアな画質からは、日差しの暖かさと水の冷たさまで伝わってきます。
強い日差しの難しい被写体でも、ほぼ見た感じに近い綺麗な描写です。
白が白に見える事で、一見コントラストが高まった感じも受けますが、画面全体ではニコンらしいしっとりとした色使いを見ることができます。
マイクロレンズで雨に濡れる梅にグッと寄って見ました。AFの迷いも無くスーッと瞬時に合焦するのはとても気持ち良く感じます。
スナップには向かない大型高速連写モデルでも、落ち着いた色使いを見ていると自然と和のテイストを追い求めてしまいます。
センサーやホワイトバランスが変わっても不変の色使いから、本機が『D4』の名を受け継いだ正統後継機というのがしっかり伝わってきました。
『D4』から進化した部分で大きく注目されているのがAF機能の進化です。
先の梅の写真でもそうでしたが、明暗差の強弱に関係なくスムーズにピントが合います。
前面フェイスの大きい鉄道写真では3D-トラッキングAFが有効的です。
約200m手前から左サイドに列車が見切れるまで約30枚近くの連写でも、食いついたら離さない見事な補足性能です。
時速100km近いスピードで接近する列車にピッタリ張り付く性能もさることながら、RAW+JPEGの書き込みにも関わらず、メモリーカードへのアクセス待ちにならない余裕のあるバッファーと高速メモリーとの連携の良さには、さすがプロ仕様機と言わざるを得ません。
新たに加わったグループエリアAFはシングルポイントより少し広い範囲でピント合わせをしてくれます。
予測不能な競馬のシーンでも、インコースの先行集団を撮ると決めておけば、しっかり先団の2〜3頭だけを追い続けてくれる快適さがありました。
生憎の雨模様で光量に不安な時でも、シャッタースピードを十分な速度まで上げられる高い高感度性能は頼もしい限りです。
『D4』でも十分高い高感度性能でしたが、最新の画像処理エンジンEXPEED4の搭載によりさらに1段上のISO 25600まで高感度側をカバーするようになりました。
雨によるモヤで鮮鋭感が伝わりにくいですが、ISO 3200位ではもう高感度とは呼ばないくらい、ノイズを感じさせない見事な描写です。
馬の毛並み、瞳の輝き、馬具の質感、細部まで見てもISO 3200と判別するのはほぼ不可能といった感じです。
他にもよく見ないと気がつかない様な細かな改良が施されていました。左の『D4』、右の『D4s』の違いに気づかれましたでしょうか?
まず縦位置撮影の際に親指がかかるラバー部の形状が変わっています。一見、分かりづらいですが実際手に取ると、指掛の違いを瞬時に感じる事ができました。
メモリーカードの開閉蓋の形状も上部が広くなった事で閉めやすくなっています。
さらにサブセレクターボタンの形状が変更されました。『D800シリーズ』などファインダー脇にAF-ONボタンとAE/AFロックボタンが並んでいるモデルに慣れると、必然的にその周辺にボタンを割り当てたくなります。
まさにそんな要望に応えたかの様な、押しやすさを追求した造りになっていました。また大きさが少し小さくなった事で、縦位置側のサブセレクター位置が少し調整された様に感じます。横位置と縦位置がより似た感覚で操作できるようなった感じがしました。
外観からはほぼ違いを見いだせない『Nikon D4s』への進化。しかし2年の歳月でのデジタル進化は絶大でした。
正直、『D4』でも必要充分な性能を有しており果たしてこのモデルチェンジは必要だったのかとも思いましたが、実際手にして、撮影するとその違いと魅力がじわりじわりと伝わってきます。
AF性能やシャッター周り等、カメラとしての進化も所有欲をしっかり刺激してくれます。
「完成度はさらなる高みへ」というカタログに書かれたキャッチフレーズに納得しつつ、まだ気づかない進化が幾つ眠っているのだろうと、使い込むのが楽しくなってくる製品です。
Photo by MAP CAMERA Staff