SIGMAが提案する理想のカメラ『dp』シリーズ。初代からMerrill、Quattroへと進化したそのカメラに、ついに待望の中望遠レンズの付いた『SIGMA dp3 Quattro』が発表されました。今回は発売前の本商品をレポートしたいと思います。
超高精細と立体感を生み出す唯一無二の3層センサー「Foveon X3」。そのセンサーの為に専用設計された50mm F2.8のレンズを搭載するdp3 Quattroは、35mm版換算で約75mmという印象的なイメージを切り取るのに適した画角のカメラです。先代のDP3 Merrillからこの50mmは味わい深い写りをすると好評判で、3シリーズの中でも人気の機種でした。 センサーを一新し、形も大きく変わったdp3 Quattro。はたしてその描写性はいかなる進化を遂げたのか、その写りをご覧ください。
これは私の個人的な感想なのですが、プライベートも含めて初代DP2、DP2/DP3 Merrill、dp1/2 Quattroと使用してきて、このdp3 Quattroは最も優しく繊細な描写をしてくれると感じました。 dp1/2 Quattroで少し感じたザラっとした硬い感覚が無く、滑らかでしっとりとした印象です。これは中望遠域ということでSIGMAがポートレートを意識した描写傾向にしたのかもしれません。 1枚目の少女がコチラを見つめている写真は、高コントラストで高解像度だけではないdp3 Quattroの魅力が伝わればと思い選んでみました。
もちろん「Foveon X3」の持つ立体表現は健在です。1画素単位で色表現が出来るdp3 Quattroはサビや影の微妙な色合いを見事に表現してくれました。
寒さの為か、池では鴨たちが並んで寝ていました。細かい所ですが、光沢のある鴨の緑色は他のセンサーでこの緑色を出すのは難しいのではと感じました。
何気なく撮った落ち葉の写真ですが、葉の一枚一枚に立体感があり、淡い中間色の表現が独特の味を出しています。
急須に“生々しい”という表現はおかしいかもしれませんが、取っ手の部分の浮かび上がるような描写。シャドウのトーン階調も豊かで、滑らかな影の表現です。
艶やかな表現もdp3 Quattroが得意としているところ。光と影を繊細に写し出してくれます。
3層センサーの「Foveon X3」はカラー写真だけでなく、モノクローム写真も本格的に楽しめます。 専用ソフトの『SIGMA Photo Pro』にもモノクロームモードがあり、重厚感のある黒を表現する事が出来ます。
和室をモノクローム現像してみました。繊細で緻密なグレートーン。畳の目は潰れる事無く影の中に描写されています。
今回の『SIGMA dp3 Quattro』より新たなアクセサリーが加わりました。
この『コンバージョンレンズ FT-1201』は焦点距離を1.2倍へする dp3 Quattro専用のコンバージョンレンズです。 装着すると35mm版換算で約90mmとなり、より被写体を際立たせる撮影が可能になります。また、一眼レフ用のコンバージョンレンズのようにレンズの明るさが暗くならない点にも注目です。
描写はどのように変化するのか、早速試してみました。
さすが専用設計されたレンズと言ったとこでしょうか、コンバージョンレンズを付けても立体感はそのままに、シャドウ部の階調も非常に豊かな表現を見せてくれます。
菜の花を飛び回るミツバチに薄いピントを合わせ撮影しました。
最短撮影距離と最大撮影倍率が(22.6cm/1:3 → 29.4cm/1:3.6)へ変わります。マクロ倍率が若干下がりますが、深いボケ味が楽しめます。
光と影が折り重なる被写体でもこの表現力です。これはdp3 Quattroのもう一つの完成形と言っても良いかもしれません。非常に完成度の高い『コンバージョンレンズ FT-1201』は表現の幅を広げてくれるアクセサリーです。
今回の撮影では『LCDビューファインダー LVF-01』と『レンズフードLH4-01』+『エクステンションフードHE1-01』というフル装備で使用しました。
LCDビューファインダー LVF-01は背面液晶を2.5倍にしてファインダー越しに見ることができます。晴天時でもしっかりと被写体を確認することができ、また手振れ防止にもなってくれます。使用してみて筆者も非常に気に入ってしまいました。
dpシリーズ共通のレンズフードLH4-01にはdp3 Quattroの遮光効果を高める エクステンションフードHE1-01を装着。遮光性はもちろんですが、金属製のしっかりとした作りはアクセサリーとして質の高いものでした。
そしてなにより、このフル装備はカメラとしてカッコイイということ。アクセサリーを装着した姿までまとめあげられたデザインは持つ悦びを与えてくれます。
dp3 Quattroのアクセサリーの組み合わせです。撮影者の好みによって姿だけでなく焦点距離も変えられる本機は、表現の可能性を広げてくれる一台です。
dp3 Quattroは唯一無二の画質表現をしてくれるすばらしい一台でした。じっくりと被写体と向き合えば、その奥まで捉えてくれるカメラと言ったらいいでしょうか。色や解像力だけでない空気感や雰囲気をリアルに表現してくれます。
そしてカメラとしての完成度はもちろんですが、コンセプト・描写力・アクセサリーを装着した形、そして撮影時の姿まですべてをデザインされていると感じました。
筆者もとても心が揺らぐ一台でした。中望遠の単焦点レンズということで好みは分かれるかもしれませんが、写真に対する考え方と本機の特性が合致すれば最高の一台になってくれるカメラです。ぜひ一度dp3 Quattro魅力を体験していただきたいと思いました。
Photo by MAP CAMERA Staff