351:『Carl Zeiss Milvus 35mm F2』
2016年04月26日
デジタル撮影素子に最適化された「Milvus」シリーズ。今回はスナップから風景まで幅広く活躍する『Milvus 35mm F2』の撮影に出掛けてきました。
カタログには準広角レンズと紹介されていますが、寄れる35mmレンズは準標準レンズと言っても差し支えないとても使いやすさがあります。
旧モデルの「Distagon T*35mm F2」と同じレンズ構成は、定評ある性能をそのまま引き継いでいる印象です。
コントラストが高く自然で滑らかなボケ味。立体感も素晴らしくさすがツァイスレンズと言ったところでしょうか。
ボケの花でボケの具合を探る。少し遊び心を加えたファーストカット。
最短30cmでの撮影ですが背景の存在感を残した程よいボケ味です。より大きく柔らかな35mmF1.4と違い、開放F値の違いでしっかり住み分けがされている印象です。
高いコントラストは遠景の建物も細部までシャープに捉えます。
撮影の日は生憎の空模様。湿った感じの空気感の中でも、本レンズの透明感の高さはしっかり伝わってきます。
菜の花の薄い花びらの質感もしっかり捉えています。
黄色と緑に覆われた花畑は色のメリハリが少ないものの、レンズの持つ豊かな階調で手前の1本をしっかり浮き立たせてくれました。
花畑の中でヒヨドリの雛に遭遇。大きくて重いイメージのツァイスレンズですが、シリーズの中では小型軽量の部類に入る35mmF2は思いのほか機動性が高く、花の隙間からギリギリまで寄ることができました。
厚い雲越しとは言え、太陽が真正面に入るカメラ泣かせのシチュエーション。グレーだけの暗い写真になりましたが、高いコントラストのおかげでシャープでメリハリのある画になりました。これならモノクロ撮影でも活躍すること間違い無しです。
ここからはボディを『Canon EOS 5DsR』へ変更して撮影へ。やはり焦点距離35mmは使いやすいですね、自然な画角で建築物からスナップ、ポートレートまで様々なシーンに活躍できます。
本レンズの最短撮影距離は30cmから。絞り開放でもフォーカス部の解像力は非常に高く、ボケ味も同時に楽しむことができます。色乗りのいいCanonボディと組み合わせればツァイスレンズらしい濃いめの色合いを表現することが可能です。
高コントラストの中に緻密な描写を感じられる一枚。シャドウのトーンも豊かでアンダー気味の表現もいいですね。外壁のタイル、ガラスの重さや温度まで感じ取れるような質感が見事です。
塗装が剥がれたタンク、くすんだクロームパーツ、革シートの艶やかな輝きなど、男臭い道具の表現にはモノクロームが良く似合います。まるでこのハーレーが走ってきた歴史まで本レンズが写し出しているように感じました。
高コントラスト・高解像力が生み出す本レンズの写りは、写真の中に独特の世界を表現してくれます。現実よりも強調された世界と言ったらいいでしょうか、被写体の色・質感・立体感をより引き立てて写真にしてくれるレンズです。この『Milvus 35mm F2』と一生付き合っていけば素晴らしい作品が生み出せるはずだと思いました。
他のMilvusレンズ同様、旧モデルと比べ若干重くなってしまった「Milvus 35mm F2」。気軽なスナップ撮影に重宝する35mmなだけに少々重さが気になりますが、それは描写性を求めるが故のこと。高い堅牢性と防塵防滴性のメリットは大きく、より万能性が増した印象です。マニュアルレンズとしての操作性も申し分なく、まさに永く使える1本と言えましょう。ツァイスレンズの新たなスタンダードとしてふさわしいレンズでした。
Photo by MAP CAMERA Staff