530:『SONY FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS』
2019年08月24日
SONYFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
一言でズームレンズと言っても、焦点域やF値など様々な種類が存在します。その中でも400mmを超える焦点域をカバーできる超望遠ズームレンズは近年注目を浴びているジャンルの一つ。今までは一眼レフ用やマイクロフォーサーズ用しか存在していなかった超望遠ズームレンズですが、ついにフルサイズEマウント用レンズとしてソニーより発売されました。今回のKasyapaは『SONY FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS』をご紹介いたします。
航空写真や野鳥撮影で必要と感じる300〜600mmの焦点距離。サンニッパ、ヨンニッパ、ゴーヨン、ロクヨンと暗号のような愛称で親しまれている超望遠単焦点レンズは見た目の迫力だけでなく金額も特別な存在です。そんな「興味があるけど手を出しづらい」と感じる超望遠の世界を、1本のズームレンズでカバーできてしまうのが今回の『FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS』。手に持った瞬間に感じるズシリとした重量感とライトグレーの鏡胴は、「被写体を狙い撮る」という気持ちのスイッチが入り、非常に写欲がそそられます。
どのような写真が撮れるか楽しみに出かけた撮影初日はあいにくの雨。傘を片手に持っての撮影となってしまいました。降りしきる雨の中、首と肩で傘を挟みながら撮影したファーストショットです。崖の上で辺りを見渡しているトビを撮影したのですが、クリアでシャープな描写はもちろん、効果的に手ブレ補正が効いてくれたおかげで、600mm・1/125秒でもしっかりと写真に収めることができました。
雨天で光量が少ない状況でしたが、波しぶきを止めるために1/2000秒で撮影しました。やはり被写体の見せたいテーマを絞って写真にするには望遠レンズが最適です。動きのある被写体が見せる一瞬の表情を捉えました。
岩陰に隠れていたイワガニを600mmで。この時はレンズを支える左腕をかがんだ膝に添えて撮影をしたため、1/60秒という低速シャッターでもブレずに撮影することができました。磯や岸壁でよく見かけるカニではありますが、写真に撮るとこんなにも鮮やかで綺麗だったのかと驚かされます。
頭上に立ち込める低い雲が高層ビルの上部をすっぽりと隠していました。普段見ることができない珍しい光景に思わずシャッターを切ります。ビルに使われている外壁やガラスの細い線とモヤ掛かった雲のニュアンスまで見事に写し出しています。
想像以上の使いやすさ
超望遠ズームと聞くと、スポーツ、航空写真、鉄道、野鳥、野生動物など特定のジャンル専用の機材のような印象を持っておりましたが、実際に『FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS』を使用してみると決してそれだけの用途ではないと気づかされます。使用感としては100-400mmに代表される望遠ズームレンズの延長線上にあるレンズ。200mm以下はほとんど使用するシーンがない撮影では、これほど便利で機動力に優れたレンズは無いかもしれません。600mmでもまだ足りないと感じるなら『1.4x Teleconverter SEL14TC』と『2x Teleconverter SEL20TC』のテレコンバーターを併用すると最大1200mmクラスの撮影をこのスペックでお楽しみいただくことが可能です。
続いてはボディを『α9』へスイッチ。
水元公園で発見したアオサギを写しました。手前の木で前ボケを作る事で空間を演出し、531mmという半端な焦点距離で撮影出来るのは、この様なズームレンズならではです。レンズ越しにアオサギが考えていることまでわかりそうです。
西日を浴びて離陸するANAのB787-8を追いました。この様な動き物に対してα9との組み合わせは最適です。オートフォーカスはカメラ本体に任せ、撮影者はフレーミングだけに集中できます。航空機を撮るのも、以前とは撮り方が変わってきたとつくづく思う次第です。「いってらっしゃい、気を付けて」と思う程、こちらにも余裕が出来ました。
羽田空港に駐機している旅客機が次のフライトに向けた準備を行っています。グランドスタッフの方と航空機の前脚付近に寄ってみました。機体に記された細かな文字も鮮明に写すことが出来ます。
雨上がりの成田空港、B滑走路の端からA滑走路方面が焼けていました。丁度やってきた着陸機は、エミレーツ航空、A380の特別塗装機です。陽に照らされる空気の渦が印象的な1枚です。A380は最近、ANAが成田/ホノルル線に投入した事で国内でも話題の航空機です。
超望遠ズームレンズとして完璧な1本
600mmまでの超望遠域をカバーし、強烈な圧縮効果を生み出す『FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS』。大口径レンズとは思えないキビキビと動くAFも相まって、静も動もこなせる素晴らしいレンズです。望遠端の開放F値6.3が気になる方もいるかもしれませんが、常用ISO感度の領域が広くなったα7シリーズにおいて大きな課題では無いと感じました。レンズを替えると写真が変わると言いますが、そのことを大いに体感することのできるレンズです。これからの季節に開催される航空祭や運動会等でもその力を発揮してくれることでしょう。全てのEマウントユーザーにお勧めできる1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff