SONYα9II
ミラーレスカメラの弱点とも言われていた動体撮影を高い技術で克服し、プロのニーズに応えた「SONY α9」の登場が2017年5月。それから約2年半の歳月を経て、さらにブラッシュアップされた「α9II」がデビューしました。
α9IIといえば、圧倒的なスピード。データ量の多いフルサイズ機にもかかわらず、連写をはじめとしたあらゆる動作が高速で、多くのプロもその高速性能に信頼を寄せています。そんなα9IIで、2つの動体を試写してきました。
ステージ撮影は光量が不足することが多く、カメラが苦手とする被写体のひとつです。動きの少ないストレートプレーでしたらよいのですが、素早く動く演目の場合、撮影に使用する機材は最高ランクのものが求められます。そのような困難に立ち向かい得る圧倒的な性能を誇るα9IIを携え、シルク・エロワーズの舞台「サルーン」の撮影に行きました。シルク・エロワーズは、卓越したアクロバティックなパフォーマンスと様々な表現の融合を得意とする、世界的に人気のあるサーカス・エンターテインメント集団です。
舞台はアメリカ西部開拓時代の酒場。見事に息が合ったアクロバットで、歌姫がドラマチックに宙を舞います。決して明るくはない場面でしたが、α9IIは速やかに被写体のピントを掴み、絶妙なバランスでしなる彼女の肢体を捉えました。
クラブという道具を使うトスジャグリング。7つを操るのは、間違いなく世界トップクラスの技術です。徐々に増やされていくクラブの数にハラハラドキドキ。繰り出される多彩な技の数々を目の当たりにするのは、最高にエキサイティングです。
歌姫とヴァイオリニストがシャンデリアに妖艶に絡みます。高く吊り下げられますが、命綱はありません。回転するシャンデリアに自らの筋力だけでつかまり、次々とポーズを決めて行く様子は、華麗でいてスリリング。
この「サルーン」ではミュージシャンによる生演奏が行われるのですが、右のアーティストは他のシーンではヴァイオリンを弾いています。演奏もサーカス・アクトもこなしているというわけです。本当にすごい!
ストラップを使った空中演技。不安定なストラップに手を固定させ、その身体は飛び回ったかと思いきや圧倒的な筋力で静止したりと、目が離せません。被写体が奥から手前に高速で移動してきましたが、ピントを合わせ続けられたことにより、こちらに向かって飛んできた一瞬を切り取ることに成功。なお、今回はメカシャッターにて撮影しました。α9では約5コマ/秒だった連写性能が、α9IIでは倍の約10コマ/秒に向上。決定的瞬間を逃したくないシーンをより強力にサポートします。
続いて航空祭の写真をご紹介します。毎年11月3日に開催される埼玉県入間基地での航空祭は、最寄り駅からのアクセスが良いこともあり毎年多くの来場者で賑わいます。当然、行き帰りの電車はラッシュ並みの混雑。ですから機材は少しでもコンパクトに。でも速い被写体を狙うわけですからハイスペックのものとなるとα9IIはまさにうってつけと言えます。
使用したレンズは超望遠ズームの「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」1本。ボディに対しかなり大きなレンズですが、α9IIのグリップがより指掛かりの良い形状に改良されているので、無駄な力を入れずに構えることができます。AFの反応も素早く、人混み先の機体を瞬時に捉えます。
輸送機からの空挺降下のシーンは圧巻です。少しでも多くの隊員を収めようと対角線上に配置すると、広いAFエリアが活躍。風に靡く落下傘もピタリと捉えます。
航空祭でのメインイベントは、ブルーインパルス6機による編隊飛行。例年であれば多くのアクロバット飛行が楽しめますが、今年は上空が低い雲で覆われていたため、雲の中に入るのを避ける水平飛行の演目となりました。
低い位置の飛行だけに普段よりより速く感じられる機体。雲と同化してしまいそうな配色もあり、AFが追従してくれるか多少の不安もありましたが、仕上がりはご覧のとおり。遥か彼方から頭上までしっかり追従してくれました。厳しい環境下でも期待以上の性能を披露。さすが失敗が許されない時に頼りになるプロ仕様のカメラです。
イベント終了後、それぞれの基地に帰投する戦闘機を見るのも楽しみの1つ。エンジンから吹き出すアフターバーナーと爆音は凄いの一言です。
かっこいいな…と思いながら、ひたすらシャッターを切った後にさらなる衝撃が待っていました。会場にサインを送るパイロットの姿をはっきり捉えた高い解像力です。まさにボディとレンズの相乗効果によるもの。航空機やスポーツなどの動体撮影には最高の組み合わせと感じました。
そのスピードの虜となる
撮像センサーや映像エンジンなど基本性能はそのままに、操作性などの使い勝手が向上したα9II。先に発売されたα7R IVと似たボタン類は、両機を使い分けるハードユーザーにも嬉しい配慮と言えます。
そしてこの圧倒的なスピードです。RAW+JPEG設定でも200枚以上連続撮影できる大容量のバッファにより、撮りたいシーンを逃すことはほぼありません。唯一の悩みはつい連写しすぎて、後の画像整理が膨大になってしまうこと位でしょうか。画像再生時のコマ送り設定に100枚送りが選択できるのも、増える画像を考慮した結果からかもしれません。
プロの要望に応えより洗練された第2世代は、これまでの長所はそのままに、どなたが使っても使いやすくなったと感じられる1台へと進化しました。
Photo by MAP CAMERA Staff