タムロンの“70-200mm”といえば兄貴分にあたる旧モデル「SP AF70-200mm F2.8 Di LD MACRO」が存在し、タムロンレンズらしい開放絞り時の硬すぎない描写やなだらかなボケ味、またレンズ名にMACROとある通り最短撮影距離95cmと圧倒的な撮影倍率を誇っています。さらには同クラスのレンズと比較して350gほど軽量であることも相まって異才を放っていました。そんな一芸に秀でた兄貴分と比較して、この新タムロン“70-200mm”は真逆。言うなれば「可愛げのない優等生」な弟でしょうか。可愛げがないと言うと語弊があるかもしれませんが、撮影者が使いこなしについて全く配慮する必要がない完成度の高さは、そう評するのも適切に思います。
初めて試すレンズではこういったメインの被写体が何かの向こうにある状況においてAFが自信のない動作で行き来することも多くありますが、カメラ側の性能との相乗効果でしっかりとピントを合わせてくれます。こういった信頼性の水準が非常に高く、いわゆる“サードパーティー”レンズという見方を払拭してくれます。
このレンズに限ったことではないのかもしれませんが、最近のレンズは金属の質感の再現性が非常に高いと思います。さほどアップで切り取らずともなんとなくその堅さや冷たさなどを感じることができます。
こちらは開放絞りでの撮影ですがピントの合焦部分の解像感は全く問題がなく、さすがは最新設計のレンズであると感じさせてくれます。地面に置かれている草の葉一枚一枚がしっかりと描き分けられています。
明暗に至るトーン再現やクレーンの部分の精緻な描写なども良いですが、窓の中のブラインドまで分離して描かれていることに気付き、やはり昨今の2000万画素級のデジタル一眼にはこれくらいのレンズを使うべきだなぁと実感しました。
AFモード時のフルタイムMFが可能となったピントリングの操作感もすこぶる良く、効きの良い手振れ補正で安定したファインダーを覗きながらMFで最後の追い込みが容易に行えます。重量級のレンズだけにピントはサッと合わせたいものですが、AF/MFどちらも気持ちに応える作り込みです。
もっと動きのある被写体を撮りたかったのですが、スケジュールの都合上ほぼスナップ撮影を敢行。それなりの重量級機材と相成りましたが、目に付いたものをサッと構えて打ち抜くそのスタイルは“歩くスナイパー“のようでクセになります。旧モデルにあった接写能力など光る長所こそなくなりましたが、代わりに手に入れたのは高い総合力。絶対的な光量不足になりやすいこれからの季節に備えて満を持したリニューアルです。
Photo by MAP CAMERA Staff
使用機材:Canon EOS 5D Mark III +TAMRON SP 70-200mm F2.8 Di VC USD