140:『Carl Zeiss Makro-Planar T* 100mm F2』
2013年07月13日
古くから徹底した品質管理と厳しい検査で、歴史に残る名レンズを多数送り出している「カールツァイス」ブランドは、いつの頃からか最高峰レンズの代名詞のように呼ばれています。
その中でも特に人気の高い「Makro-Planar T* 2/100」に触れる機会を頂いたので、ぜひこの優れた描写を皆様にもご覧頂きたいと思います。
手前の紫陽花の葉脈まで確認できる解像力の高いシャープな描写と奧に広がる美しい大きなボケ味。一つの画面にこれだけ豊富な表現力を収めた贅沢な描写に一瞬で心を奪われました。
カメラの解像力も一緒に向上したのではと錯覚しそうな驚愕の描写力に、本レンズの人気の高さも頷けます。
せっかくのマクロレンズですから、被写体にグッと寄って撮影をしてみました。
1/2倍までの近接撮影が可能なマクロレンズは、最短撮影距離44cmと他のマクロレンズと比べると今一歩寄れきれない感もあります。しかし写真を見て感じるのはそれを補う見事な解像力。高画素のデジタルカメラとの組み合わせならば倍率はあまり気にしなくて良いのかもしれません。
十分薄いピント面を際立たせる美しいボケ味は、マクロレンズならではの美しい質感描写で花粉の粒子感もしっかり見てとれます。また大きなボケの中にも細かな雄蘂の1本1本の様子が見てとれた感動の1枚です。
一方こちらは、古い真空管蓄音機の一部を切り撮ったもの。
ガラスショーケース越しの撮影でしたが、ひんやりとした金属の質感と、少し曇った真空管のガラスの様子がしっかりと伝わってきます。
中望遠レンズとしても使いやすい100mmという焦点距離は、ポートレートやスナップにもピッタリです。
少し絞ってもしっかり残る大きなボケ味は奥行き感があって中望遠レンズでも画に広さを感じます。
金属製部品でしっかりと作られた鏡筒はピント合わせの操作もしやすく、マクロレンズという垣根を越えていろんな撮影で重宝することでしょう。
上の写真は科学館での液体窒素を用いた実験の一コマ。植物を-190℃の液体窒素に漬けると一瞬で凍ってしまいす。その様子をしっかり捉える事ができました。
今にも割れて落ちそうな葉の様子、液体窒素が放つ冷気の様子を暗い実験室でもしっかり描写しています。
光の透過率が高いと言われるT*コーティングは、暗い場所で不気味に光る静電気誘導ボールの奇妙な光もしっかり捉えます。
青から赤紫に変化する色のグラデーションや煙のように消えるボケが光の動きを切り撮り、撮影時に感じた不思議な感覚をそのまま伝えてくれました。
水流の中に生じた細かな気泡が照明に反射して無数の点光源を演出しています。これだけ広範囲に広がると光源が目立ちすぎてうるさく感じる事が多いのですが、光のトーンが穏やかなおかげで自然な印象を受けます。
光を上手に操るレンズですから、モノクロなどバリエーション豊富な撮影に挑戦したいものです。
カメラの性能も上がったのではとも錯覚する見事な描写力は、ツァイスレンズの凄さを改めて感じました。
ファインダーを覗いた瞬間に目の前に広がるクリアな画に、他のレンズとの違いが実感できることでしょう。
マクロレンズと聞くと接写用レンズと捉えがちですが、そんな先入観を全て払拭する最高峰の中望遠レンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff