季節はまさに春真っ只中、日中は汗ばむような陽気に心が躍る。それは植物にとっても同様なようで、新緑や色鮮やかな花々が方々に見受けられる。暖かさも相まって、写真好きとしてはどうしても花や草木の撮影機会が増えてくる時期ではないだろうか。
そこで今回、富士フイルムXマウントの中で最長の単焦点にして、唯一のマクロレンズ。XF 60mm/f2.4 Macroの試写に赴くこととした。
35mm判換算でおよそ90mmの焦点距離。写したいものだけを写し、余計なものはフレームから除く。このレンズが持つ画角だからこその絵になる風景を探すのはとても楽しい行為だ。
また1+1/3段絞るだけで十分にシャープであり、中望遠単焦点として使うにも非常に長けたレンズだ。
もちろんマクロレンズとしての性能は申し分がない。最大撮影倍率は0.5。いわゆるハーフマクロながら、焦点距離も長いため個人的には気になることはなかった。
この一枚も凝視しているだけで、花や葉の香りが画面を超えて漂ってきそうだ。
最短撮影距離はマクロモード時で26.7cm、こちらはそのギリギリまで寄って撮影を試みた。
とてもシャープでありながら、階調も豊か。このあたりはフイルムメーカーの面目躍如とでも言うべきだろう。
この表現力があるからフジフイルムのカメラを使うのは楽しい。という方は多いのではないだろうか。勿論、斯くいう私もその一人である。
鮮やかな色と美しいボケ味。マクロレンズとして必要な要素がしっかりと組み込まれている一方で、非常に軽量なのもまた嬉しい。
更に、ボケ味は非常に癖がなく、どのようなシチュエーションでも使い勝手が良いのも特徴だ。
フィルム発想による非周期性の高いオリジナルのカラーフィルター配列が特徴のセンサー、X-Trans CMOSにより、モアレが発生しにくいXシリーズのカメラ。さらに今回のようなシャープなレンズと組み合わせれば、撮影の幅は大きく広がってゆく。
日差しの中を歩いていたら、突如くつろいでいた御大臣に出くわした。やはり春は生き物の垣根を越えて嬉しい季節なのかもしれない。
こうした被写体も、長い焦点距離と小型な佇まいを持つレンズだから写せる専売特許だ。
やはりマクロ撮影は非常に楽しい。
このひと時を更に有意義なものとしてくれるアイテムとして、このレンズはまさにうってつけであろう。心地よいボケ味、階調表現の豊かさ、どれをとっても一級品である。
願わくはもう少々マクロモード時のAF速度が早くなれば言うことなしであるが、現在でもストレスになるレベルではないと考えている。
それは1枚1枚をじっくり撮ることが、フジフイルムのカメラで撮影する上での最大の醍醐味だと思うからだ。
このレンズを使って良かった。そう思える1本が多く揃うフジフイルムXマウントのレンズ群。今回の試写で改めてその素晴らしさを実感することが出来たように思う。
Photo by MAP CAMERA Staff