この機種のフォトレビューを待っていた方も多かったのではないでしょうか、今回のKasyapaは5060万画素のローパスキャンセルモデル『Canon EOS 5DsR』のご紹介です。『Canon EOS 5Ds』と基本設計は同じにしながら、より高い解像感とキレのある描写を求めるためローパスフィルターの効果を無くした超解像モデル。前回ご紹介した5Dsのレビューで『ナンバー付きレーシングカー』と例えましたが、5DsRも言うならば『保安部品無しのレース専用車』といったところでしょうか、撮影にモアレ・疑似色というリスクはありますが、総合力よりさらなる解像力を求める方の為に作られたモデルです。
今回UPした作例写真の拡大サイズは6000×4000pixで用意しました。『Canon EOS 5DsR』に付けられたR=Resolution(解像度)という意味を少しでも感じていただけたらと思います。
撮影日は久しぶりに気持ちのいい天気に恵まれました。管制塔の後ろには青い空と白い雲、旅客機も小さく写っています。この写真は『EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM』の400mm端で撮影しました。管制塔を拡大してご覧になりましたでしょうか?外観のディティールはもちろんですが、管制室の中までクッキリと写し出しているのが分かります。撮りながら「これはスゴい!」と驚きつつ、ここまで写ってしまっていいのだろうかと思ってしまった解像力です。
離陸前の飛行機をスタッフが手を振ってお見送りする一枚。グッと拡大して客室ドアの左上部、ハイライトが当たって光っている部分があると思います。その周辺もキラキラと丸く光るものが。きっとこれは機体のスポット溶接の痕がわずかに盛り上がり、そこに当たった光の反射を5DsRとEF100-400mm IIは捉えたのだろうと思います。5DsRの実力はもちろんですが EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMの光学性能も素晴らしいですね。
さて、皆さんはこの写真を見てお気づきになりましたでしょうか? 5DsRを使用していて一番気になっていた事であるモアレが発生している写真です。モアレはドーム天井の中央付近と背面のガラスに現れました。実はこのレポート1枚目の写真にも同様のモアレが発生しています。被写体となった天井は均等で細かい凹凸が付いているもので、背面のガラスはレース地のようなUVフィルムが貼られていました。モアレはベイヤー型センサーの配列と被写体の規則性のある模様が不適切に重なった時、周期が干渉して出来る縞模様です。本来ローパスフィルターがその現象を防ぐ効果があるのですが、その効果をキャンセルしている5DsRでは顕著に現れました。これは超解像度を誇る本機ならではの悩みと言えるかもしれません。
解像感はもちろんですが、写真の立体感であったり、撮影した場所の空気感であったり、『リアル』という言葉がとても合う画を5DsRは表現してくれます。
最後の写真も「ここまで写るのか!」と思い知らされたカットです。滑走路を挟んで向かいの建物を400mmで撮影したのですが、写真のちょうどセンターに展望デッキが見えるかと思います。そこに写っているフェンスの網目、滑走路を眺める人々の仕草まで捉え表現しています。見れば見るほど、もの凄いという言葉しか出てこないですね。
『Canon EOS 5DsR』はCanon史上最高の解像感を得る事ができる機種と言っても過言ではないでしょう。最高性能を出す為には撮影状況や被写体を選ぶ事もあるカメラですが、その表現力は撮影者を圧倒する凄みがあります。私は『写真はそんなに拡大してみる物じゃない』と思っていた人間だったのですが、5Dsと5DsRを使用してすっかり超解像力の世界に魅了されてしまいました。
本機のライバルは中判デジタル機となるかもしれませんが、35mmフルサイズ機の大きさと既存のレンズシステムのままでこの画質を表現できるという点を大きく評価するべきではないでしょうか。既にCanonのカメラをお使いでレンズも揃えている方はボディのみを5DsRへ変えるだけで超解像力を手にすることができます。
本機は何でも出来る万能な機種ではありません、安定感は5Dsの方が上ですし、白トビや高感度という点では5D Mark IIIの方が上でしょう。しかし、他の機種では絶対に得る事の出来ない世界を『Canon EOS 5DsR』は表現してくれるはずです。
Photo by MAP CAMERA Staff