インコ、イスカ、フクロウ…様々な鳥たちの学名を冠された「Touit」「Loxia」「Otus」に続いてZeissから登場した、フルサイズEマウント用交換レンズ「Batis」シリーズ。中望遠と広角の2本がリリースされた中から、本稿では『Carl Zeiss Batis 25mm F2』を取り上げます。調べてみると、やはり今回も名前の由来は鳥類。 「Batis」は、ヤブモズ亜科に属するセワタビタキの種名。どの種も小柄で、とても可愛らしい鳥のようですが…はたして本レンズの実力は如何に。
8群10枚、Distagonタイプの光学設計を採用。そのうち4枚が両面非球面レンズというのも納得の、破綻のない描写で魅せてくれます。リニアモーターで駆動するフォーカスは静穏性に優れ、その速度と精度の高さから、ストレスなく撮影に臨むことが出来ました。
天気に恵まれたこの日、Zeissの十八番である色乗りの良さが更に際立ちます。印象的だった抜けるような青空も、しっかりと再現してくれています。
Zeissが生み出した開放値F2クラスの“Distagon”といえば、1960年代のコンタレックス用交換レンズ「Distagon 25mm F2.8」(7群8枚) 、ヤシカ/コンタックスシリーズ用交換レンズ「Distagon 25mm F2.8 AE/MM」(共に7群8枚)等が挙げられます。長らくツァイスに在籍したエルハルト・グラッツェル博士により設計された“逆望遠タイプ”の光学系は、脈々と現世まで受け継がれているのです。この「Batis 25mm F2」においては、特殊硝材や非球面レンズ、そしてフローティング機構の搭載により、更に“伝統”の輝きが増しているように思えます。
数ある広角レンズの中でも、25mmという画角は最も使いやすい画角では無いでしょうか。本レンズの最短撮影距離は20cmと言うこともあり、身の回りにあるものは何でも撮れてしまいそうな錯覚に陥ります。
光量が目立って不足する事無く、画面周辺部までしっかりと解像しているのには流石の一言。データシートで公表されているMTF曲線は、良好な弧を描いています。
α7IIの背面液晶を立て、ガマの群生の中へ右手ごと差し入れる。Zeissでこうした撮影が出来るのも、この組み合わせならではでしょう。蕩ける様な後ろボケは、こうした比較的煩い背景においても被写体を浮かび上がらせる助力となっています。
逆光耐性は強く、陽が直接差し込むようなシーンでも安心して絵作りに集中出来ます。変にフレアやゴーストが出ないお陰で、光を忠実に再現してくれるのは良いですね。少々ハイコントラストにはなりそうですが、モノクロでも使ってみたいレンズです。
風が強かったこの日、335gというレンズの軽さがネックにならないものかと心配しましたが、適度なサイズの鏡胴はホールド感も良く、終始安定した絵を得る事が出来ました。
フルサイズEマウント用では初となる、オートフォーカスのZeiss製交換レンズ。距離目盛には有機ELディスプレイを搭載し、電源投入時には「ZEISS」の文字を映し出す・・・そんな、遊び心のある造りも魅力的ですが、防塵防滴に配慮した強靭な一面も兼ね備えていることも忘れてはいけません。環境を選ぶことなく、常に「Zeiss」と共に歩みたい貴方に、お勧めの選択肢です。
Photo by MAP CAMERA Staff