337:『Carl Zeiss Milvus 85mm F1.4』
2016年03月08日
今回は『Carl Zeiss Milvus 85mm F1.4』の撮影に出掛けてきました。
21mm、50mmと高い性能を披露してくれた「Milvusシリーズ」ですが、カールツァイスブランドからは同じ85mmF1.4の「Otusシリーズ」が存在します。Otusシリーズが世界最高を謳うだけに、2番手レンズの印象を受けてしまいますが、それは撮影前の話。実際に撮影してみるとさすがツァイスレンズと唸ってしまいます。高い透明感と柔らかな描写を兼ね備えた写りは、最新レンズらしい高いパフォーマンスを披露してくれました。
近所の川に河津桜が咲きました。下から見上げる樹木は逆光の影になることが多く、露出合わせを難しくさせます。
今回も白く飛ぶのを覚悟して露出を+2補正しました。花びらはイメージより少し白くなりましたが、ピンクと白のグラデーションを綺麗に捉えてくれました。そして何よりこの柔らかなボケ味に驚きます。さすがポートレートの王道レンズ。優しさと温もりを上品に伝えてくれました。
高画素化に対応すべくリニューアルされた85mmレンズは、中望遠レンズとしても優秀です。
ポートレートとは真逆の遠景描写もご覧のとおり。明暗差の大きいシーンでも豊富な階調で自然な色合いを残してくれました。
手間に広がるなだらかなボケが、境内の奥行きを伝えてくれます。早春の温かい日差しと、日陰のしっとりとした感じもバランス良く捉えることができました。
被写体に寄っての開放撮影では、この上ない大きなボケを楽しむことができました。アニメの絵柄にマッチしたまさに幻想の世界のような写りです。
撮影中、人懐こい猫に遭遇。カメラを向けた途端すり寄ってきましたが、無視して撮影し続けたら途端に不機嫌な表情になりました。
動物の細かな表情を見逃さない高い表現力に、ポートレート撮影のシンボル的存在である所以を感じます。
休憩中の猿の一息つく表情もしっかり捉えることができました。普段ポートレートの撮影をする機会が少ない筆者ですが、このレンズのおかげで、ポートレートの楽しみが少し分かった気がします。
カメラをCanon EOS 5Ds Rに変えて撮影を続けます。
背景がごちゃごちゃとしているシーンでも、ボケはうるさくありません。 むしろ、柔らかく溶けていくような優しいボケが印象的です。
実はこの写真、前にフェンスがあったのですが、開放で撮ったらフェンスが消えてなくなってしまいました。
これも大口径の明るいレンズだからこそ撮れる写真。邪魔な背景や障害物を魔法のように消してしまいます。 動物園等でも活躍しそうですね。
開放で撮影をすると、少しだけ周辺が落ち込みます。 ですが、F1.4でこの程度の減光ならばむしろ優秀と言えるでしょう。
本レンズは、非常にコントラストが高く発色がいいです。 RAW現像の必要性が感じられないほどに、JPEG撮って出しで美しい色と完成した画を出してくれることに驚きました。
レンズの重量は驚きの1280g!(ZEマウント)カメラ本体よりも重いです。 見た目もかなり大きいですが、見た目に違わぬ重厚感のある写りを見せてくれます。
上位レンズの「Otus 85mm F1.4」よりも若干重い大型レンズは、まさにガラスの塊のような仕上がり。9群11枚の贅沢な光学設計だけに高い描写性能にも納得です。MTF曲線による数値の違いはありますが、美しい描写力は「Otus」シリーズに匹敵するのではと感じてしまいます。そう考えると本レンズのコストパフォーマンスの良さも引き立ちます。
「Otus」「Milvus」「Classic」それぞれ特徴があるものの、いずれも高い次元で安定描写するツァイスレンズ群。3バリエーションが共存する85mmF1.4は、どれを選ぶか頭を悩ませます。
Photo by MAP CAMERA Staff