ニコンからAPS-Cサイズセンサー搭載の『Nikon D500』が発売されました。
2009年発売の「D300S」以降となる久しぶりの3桁機は、ここ数年APS-Cサイズ機の上位モデルを担ってきたコンパクトな7000番台のモデルとは明らかに一線を画した造りで、手にした瞬間からテンションが上がります。
性能的にも先日発売された『Nikon D5』と同等の機能がふんだんに盛り込まれており、まさにフラッグシップと呼ぶに相応しいモデルとなっています。
私もAPS-Cのフラッグシップ機の登場を心待ちにしていた1人。発売日は生憎の空模様でしたが、とにかく早く使いたいという気持ちを抑えられず、早速撮影に出掛けてきました。
まずは雨宿りを兼ねて入った水族館のカットから。
映画でも人気になったカクレクマノミが、イソギンチャクの周りを駆け回ります。しかし素早い動きに翻弄されるのは撮影者だけ。D5譲りの153点AFシステムがしっかり追い続けてくれます。
APS-Cサイズのファインダーの中にD5のシステムを詰め込んだおかげで、D5ではファインダー中央部に集まっていたAFポイントがD500ではファインダー全域をカバー。画面の外に逃げるまでしっかり追い続けてくれたのには驚きました。
画素数こそD7200の2416万画素から2088万画素に抑えられたものの、ローパスフィルターレスの新型センサーは高い質感描写力を披露してくれました。
柔らかなら羽毛の様子がしっかり見てとれます。鴨も新型カメラに興味を持ったかのような熱い視線。ガラス越しの撮影でしたが、生きものの持つ生命力のようなものも感じ取れます。
圧倒的な高感度耐性を持つD5と同じ最新の映像エンジン”EXPEED 5″の搭載で、APS-Cセンサー機でも広い感度域を手に入れることができました。
ISO 8000では暗部に若干のザラつき感があるものの、色再現も高く水中の世界を綺麗に切り撮ってくれます。ストロボに頼らずシャッタスピードも稼げるのは心強い限りです。
また照明下では、新機能のフリッカー低減機能も見逃せません。撮影時には実感できませんが、常に「明」のタイミングで画像を揃えてくれるので撮影後の編集がとても楽になりました。
常用感度上限のISO 51200も試してみました。拡大するとザラつきは気になりますが、細い触手もしっかり描いており高い解像力とのバランスの良さを感じます。今回は背景が黒だったので、宇宙空間のような面白い写真になりました。
焦点距離が1.5倍相当になるAPS-C機は望遠撮影に有利です。特に秒間約10コマ/秒をを実現したD500は、D5に迫る高い機動力でスポーツなどの動きものに威力を発揮します。イルカのジャンプも早いAFと高速連写で綺麗に捉えることができました。さすがD5譲りのAF専用エンジンと言ったところでしょうか。
バッファーメモリーの大容量化と次世代高速メディアXQDカードの採用で撮影コマ数に余裕があるのも嬉しい進化です。次々と繰り広げられるアクロバットな動きを追い続けても止まらないシャッターは決定的シーンを逃さず捉えてくれました。
フラフープを上手に回しながら立ち泳ぎするイルカ。水面の波の様子まで綺麗に捉えています。
連写中もミラーバウンサーによる安定したファインダー像のおかげで、イルカの動きにしっかり合わせることができました。
翌日は前日が嘘のような好天。より望遠効果の恩恵を受けるべく空港での撮影に挑戦です。
旅客ターミナルの展望デッキから飛行機を望遠端で狙います。離陸時の主翼のしなりがはっきりわかる迫力ある画になりました。大きな機体は少しはみ出てしまいましたが、APS-C機の持つ1.5倍相当の迫力が実感できました。
続けて似たようなカットで恐縮ですが、ここでD5/D500から搭載された新機能「AFロックオン」を試してみました。
項目の中の「横切りへの反応」を調整することで、被写体を横切るものに反応するかしないかを選択することができます。 空港には照明用のポールが等間隔に設置されており、滑走路を走る飛行機を追い続けるとポールが横切るため、今回はそれを試してみました。デフォルト時の「3」のままでは、終始滑走路上の飛行機を補足し続けましたが、敏感1では横切るポールにピントが移動してしまいました。テストとは言え、連続撮影中に突然1枚だけピントが外れるとドキッとします。撮影ごとに最適な設定を身につけることで、撮影の失敗を大幅に減らすことができそうです。
マイクロレンズの接写では大きくて柔らかなボケ味を楽しむことができました。薄い花びらの質感をしっかり捉えています。
新宿の新名所、新バスターミナルから渋谷方向を望みます。
キットレンズの「AF-S DX 16-80mm F2.8-4E ED VR」との描写は驚くほどクリア。遠景のビルまで細かく描いているのが分かります。
画面上部に黒点を見つけてしまいました。使用開始2日目にして早くもセンサーダストかとショックを受けましたが、拡大して一安心。ゴミかと思った黒点はヘリコプターでした。撮影の際には全く気がつかなかっただけに、改めて高い解像力に驚きました。
広角端で若干の歪みを感じる「AF-S DX 16-80mm F2.8-4E ED VR」ですが、軽量で標準域を幅広くカバーする24-120mm相当のレンズはとても使い勝手の良いレンズです。優れた手振れ補正に加え明るくヌケも良く、スナップ撮影には最適な1本です。
初夏を思わせる強い日差下でも、豊かな階調で境内下の暗部までしっかり確認できます。
公園から隣の乗馬倶楽部が見えました。少し距離がありますが、サラブレットの筋肉の立体感や綺麗な毛艶が見てとれる高い解像力と色再現性を再確認。優れたセンサーと映像エンジンのバランスの良さに加え、初見で綺麗と思わせるオートホワイトバランスも逸材です。
神社の倉庫に仕舞われたお神輿。格子戸の隙間から覗いたカットでも綺麗な装飾を確認できます。照明が反射するキラキラ感も綺麗です。
暖かな日差し感も伝わる花壇の写真。ボケも綺麗でレンズの実力を存分に引き出してくれる印象です。
最後に新たに搭載された新画像共有アプリ「SnapBridge」を試してみました。撮影画像がBluetooth機能で接続したスマホでも素早く確認できます。
カメラ自体の液晶モニターもD5同様、約236万ドットのタッチ液晶でスムーズな画像確認ができますが、カメラの電源を切ってバッグに仕舞った状態でも画像確認ができるのは便利です。
リモート撮影機能では、ライブビュー時同様タッチでピント合わせと撮影が可能に。家族との集合写真等に重宝することでしょう。
他にもファインダー部のアイピースが丸窓になるなど、D5に寄せた嬉しい進化がいっぱいです。
フィルムカメラ全盛期、フラッグシップのF5ジュニアとしてF100が爆発的人気を誇った頃を思い出させます。センサーサイズこそ違うものの優れた性能はD5に瓜二つ。まさに待望のフラッグシップ機となりました。携帯性に優れたD5ジュニア、ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff
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