365:『Carl Zeiss Milvus 100mm F2 M』
2016年07月04日
CarlZeiss Milvusシリーズの第5弾はマクロレンズの『Carl Zeiss Milvus 100mm F2 M ZF.2』が登場です。
旧モデルにあたる「Makro Planar T* 100mm F2」と同じく、100mmマクロレンズとしては最も明るい開放F値”2”のスペックを持ち、大きなボケが期待できます。
カタログスペックで旧モデルと比較してみるとレンズ構成やMTF曲線はほぼ一緒で、外観と最新のT*反射防止コーティングが施されたこと以外には違いを見つけられませんでした。はたして新しいMilvusマクロレンズはどのように生まれ変わったのか?さっそく試してみました。
梅雨の時期ということで初日は生憎の空模様。色温度を少し下げ雨の雰囲気を少し引き立てみました。気持ちアンダー目にもなりましたが、花菖蒲の薄い花びらが雨露でしっとりとした様子が綺麗に再現されています。
鏡筒のリニューアルで、防滴性も向上したのも心強い限り。深めのフードは横からの雨風を防ぎ前玉の濡れ防止に一役買ってくれました。
雨に濡れ瑞々さを増した紫陽花の鮮やかな色も綺麗に捉えてくれました。開放F2による大きなボケも凄いの一言です。透明感高いクリアーな描写は旧モデル同様、さすがツァイスレンズと言ったところでしょうか。
紫陽花の生垣をシンプルに切り撮っただけですが立体感ある描写は、その1箇所を極限まで引き立ててくれました。
翌日は雨も上がったので水郷地域まで足を伸ばしてみると、珍しい嫁入り船を見る事ができました。
少し高い橋上からの撮影でしたが、高い解像力のおかげで花嫁さんの白無垢模様までしっかり確認することができました。光沢ある白い生地でしたが、白トビすることなく綺麗に捉えたあたりにコーティングの進化を感じることができます。
シャープでキレのある描写は中望遠としても使いやすい印象です。
旧モデルと比べ147g(ZF.2マウントの場合)重くなった本レンズ。さすがに移動時では快適とは言えませんが、大きな回転角を持つピントリングは適度な重さを持ちつつも滑らかで、操作感はとても良い印象を持ちました。
白無垢の写真で白を綺麗に再現する印象を受けたので、白い被写体を集中的に狙ってみました。
まずはタンポポの綿毛から。何処に飛んでいくのか分からないので、被写界深度を稼ぐため少し絞りましたが、背景の芝が緑の壁紙の様にボケてくれたので綿毛のフワフワ感がより引き立つ画になりました。細い毛の柔らかさがはっきりと分かる高い質感描写です。
白紫陽花に最短44cmまで寄ってみました。開放F2のボケと相まってとろける様なボケを味わうことができました。小さな花が集まる紫陽花は引きの画も綺麗ですが、マクロレンズで接写するとまた違った印象で花を楽しむ事ができます。
睡蓮の白い花も綺麗に捉える事ができました。水辺に咲く花は近づく事が難しい為、中望遠マクロレンズがとても重宝します。
境界線が分かりにくいほどの真っ白な花びら。それでも1枚1枚、模様までしっかり描いているのに驚きました。また花の上部に水面反射で生じた点光源が9枚絞り羽根のおかげで綺麗な円形をしているなど、細部までしっかり作られているのがよく分かりました。
続いては機材をキヤノンにスイッチ。夜に町を歩いていた時に目に入った、電球のディスプレイを開放で撮影しました。電球ならではの艶やかな輝きと発光するフィラメントを見事に写し出しています。コントラストも高く、『ZEISSらしさ』を感じられる一枚です。
寝ている2歳の息子のまつげに最短距離でピントを合わせて開放撮影しました。さすが100mm F2という焦点距離もあって被写界深度は極浅。まつげの前後でもボケ味が包み込んでいるのがわかります。しかしながら近接時の解像感は流石ですね、細かな産毛まで鮮明に写し出していますから、ポートレートレンズとしての使用では写り過ぎに注意しないといけないかもしれません。
テーブルに置いたグラスを近接撮影。後ろに写っているのは飼っている金魚です。コクのある色合いとグラスの映りこみが綺麗に出ています。
こちらは金魚にフォーカスしたカット。尾っぽの部分にハイライトが当たり、暗い背景にシルエットが浮かび上がった様が美しく感じたので撮影しました。この写真もピント面が薄いですが、鱗の質感を見事に写し出しています。
アガパンサスの花を最短距離で撮影。この時期に咲く花で好きな品種の一つです。好みもあると思いますが、私の感覚だとマクロ撮影はMFレンズの方がAFレンズよりも使いやすく感じます。微妙なピント調整をする時にねっとりとしたヘリコイドのトルク感があった方が感覚に合うんですよね。この写真も雄しべにフォーカスを合わせて、息を止め、カメラを構えた体が揺れるタイミングに合わせてシャッターを切りました。
『Carl Zeiss Milvus 100mm F2 M』は高い解像力とコントラスト、そして深くなめらかなボケ味を両立させた素晴らしいレンズでした。先代と比べてより先鋭さが増したと言ったら良いでしょうか、現代の高画素機にしっかりと画作りを合わせた描写を見せてくれます。今まで発売されたMilvusシリーズはレトロフォーカスのディスタゴンだったのに対し、今回の100mm M及び、次回発売予定の50mm Mは伝統のダブルガウスタイプであるプラナーという点も特徴の一つですね。現在は他社のマクロレンズもレトロフォーカスタイプがほとんどですから、CarlZeissの伝説を残してきたプラナーを最新の光学設計で、しかもマクロ用途としても使えるというのは非常に贅沢な1本とも言えるかもしれません。また、接写の用途以外でもポートレートレンズとしてもその実力を発揮してくれることでしょう。Zeissレンズの持つ立体感と繊細さは被写体の魅力を引き出してくれるはずです。「良いレンズは一生ものの資産」などと聞いたことがありますが、『Carl Zeiss Milvus 100mm F2 M』もその通りだなと感じました。すでに完成されたMFレンズというジャンルを描写性・操作性・デザイン性さらに突き詰めた1本です。レンズにこだわりを持たれているユーザーにぜひ使っていただきたいレンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff
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