今回のKasyapaでは、フジフイルムのミドルクラスミラーレス一眼『X-T10』の後継機である『X-T20』をご紹介いたします。
フジフイルムらしい洗練されたクラシカルなデザインが目を引く本機。X-T10と比べると全くと言っていいほど外観の違いはありませんが、なんとフラッグシップモデルである『X-T2』と同等のセンサー(X-Trans CMOS III)と画像処理エンジン(X-Processor Pro)を搭載しているとのこと。これはかなり期待が出来そうなスペックです!
また、X-T10の大きな特徴の1つであった「コントロールモード」と「オートモード」の切り替えは健在。シャッタースピードダイヤルのすぐそばにある「オートモード切り替えレバー」を操作することで、初心者の方でもX-T20の良さを存分に生かした高品質な写真を簡単に撮ることが出来ます。
X-T20はスペック的にはミドルクラスではありますが、操作系はエントリークラス、ミドルクラスの両方に適していると言っていいでしょう。ユーザーを選ばない親切な設計が嬉しいですね。
X-T20の写りの程を確かめるべく、まずはキットレンズである『フジノン XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS』を装着して撮影へと向かいました。
明るいズームレンズなのにも関わらずコンパクトな設計が魅力的な本レンズはX-T20とのバランスもとても良く、スナップ撮影をはじめ風景写真や物撮り、そしてレンズの明るさを生かしたポートレート撮影等、オールマイティに活躍してくれる優れものです。
冒頭の写真は、にわか雨に降られた後に撮影した花壇の花たち。フジフイルムらしい深みのある色彩表現が特徴的です。
関東はもう桜も見納め。噴水に落ちた桜が一か所にぎゅっと集まっていました。初夏を感じさせるような暑いくらいの日差しが、水面に反射してきらきらと輝いています。
今回キットレンズで撮影をした写真は、ほぼ全てが撮って出しです。フジフイルムはJPEGで既に完成された画を作り出してくれるとよく耳にしますが、フジフイルムのカメラを使うたびにその写りの素晴らしさに引き込まれていきます。
光による陰影の描写が上手いというか、その場の空気がそのままカメラに入り込んできているような、そんな気さえしてきます。
旧来の約4倍の処理速度を誇る画像処理エンジン「X-Processor Pro」の搭載によりAF性能が飛躍的に向上した『X-T20』ですが、他にも様々な部分がブラッシュアップされています。
そのうちの1つとして挙げられるのが、AF-Cのカスタム設定です。被写体によって「急加速する被写体向け」「加速減速に強い」等、5つのプリセットからAF-Cの設定を選べるようになったため、動体撮影に重きを置いている方にも非常におすすめしたい1台となっています。
ハイライトからシャドウまで、見事に描き切ってくれました。強い光が当たっている部分も白トビすることなく、それどころかコンクリートの質感をきちんと残しています。もちろんこの写真もJPEG撮って出し。シャドウを持ち上げたりはしていません。
この日は強風注意報が出ていて、台風かと思うほど強い風が終始吹き荒れていました。強い風に吹かれて波打つ芝生が綺麗だったのでどうにかして写真に収めようとシャッタースピードを上げて撮っていたら、いつの間にか感度がどんどんと上がっていてISO1600に。
ですが、ISO1600でもノイズは全くと言っていいほど気になりません。高感度性能についてあまり触れられていない本機ですが、センサーが刷新されたことにより高感度耐性もかなりパワーアップしているようです。
『X-T20』では4K動画撮影が可能となっています。しかも、フィルムシミュレーションを適用している状態でも4K動画撮影が行えるとのこと。
大人気のクラシッククロームやベルビア等を使用して、一味違った動画撮影を楽しむことが出来るのが嬉しいですね。
陰影が美しかったので、前機種には無かった「ACROSモード」で撮影。
明暗のはっきりしている場所で撮ったおかげもあるかとは思いますが、グッと光に吸い込まれていきそうな見事な描写です。さすがACROSモード!
また、こちらの写真はチルト式のモニターを利用してややローアングルから撮影をしています。ローアングルやハイアングルでの撮影が出来るのがチルト式モニターの良い所ですが、そこにタッチシャッターが加わることによって格段に撮影の幅が広がります。
これまでファインダーを覗けないことで撮ることを諦めていたアングルも、これからは積極的に挑戦することが出来そうです。
タッチパネルが出て来始めたころは「タッチパネルなんて…」と頑なに使うことを拒んでいた筆者ですが、今となってはタッチパネルが搭載されていることがカメラを選ぶ指標のうちの1つになりつつあります。特に画像確認の際には非常に重宝する機能です。
さて、先ほどまではキットレンズである『フジノン XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS』を使用した写真をご紹介いたしましたが、ここからは『X-T20』と同時発売のレンズ『フジノン XF50mm F2 R WR』で撮影した写真をご紹介いたします。
こちらの写真は、ふらりと入ったカフェでの1枚。海外からの旅行者の方でしょうか、二人で語り合っている光景を写真に収めました。
逆光の中に浮き立つような写真にしたかったためあえて一切の調整をしていませんが、現像ソフトで暗部を持ち上げるときちんと色もディテールも保存されています。暗いところを黒く潰さずギリギリまで階調やディテールを残しているので、とてもリアルに感じますね。この写真を見ていると、自分自身撮影をしている時の記憶が鮮明に蘇ってくるのを感じます。
開放で撮影した際の柔らかな描写はお見事。また、開放からしっかりと解像しているのがよく見て取れます。
これだけしっかりとした写りをしているのにも関わらず、お値段はなんと5万円以下(2017年4月時点のマップカメラ価格です。)というのには驚きを隠せません。しかも軽量・コンパクトときていますから、人気レンズにならない理由が無いというもの。XFレンズシリーズは本当にハズレが無いですね。
私がフジフイルムに惚れこんでいる理由のうちの1つとして、はシャッター音が挙げられます。
硬質なキレの良いサウンド。目の前の時間とともに移ろいゆく一瞬をパチリと写真に変えてとどめていく、そんな感覚にしてくれるのです。
思わず少し歩いてはすぐに足を止めてシャッターを切ってしまいます。今回使用した『フジノン XF50mm F2 R WR』の高速なAFはテンポよく撮影するのにはうってつけのレンズでした。
夜の風景をACROSモードで切り取ってみました。
ACROSは白黒フイルムの粒状性を再現したフィルムシミュレーションなのですが、この粒状性は均一と言うわけではなく、明るい所では小さく、暗い所では大きくなるように演算されているのだそう。実際に拡大をして見てみると、明るい所と暗い所で粒子の荒さがわずかに違うのが見て取れます。
ACROSモードを実現するのには「X-Processor Pro」のパワーが必要とのことですので、残念ですが『X-T10』のバージョンアップでACROSモードが追加されるということは無いでしょう。
個人的にはACROSモードが使えるというだけでX-T10からX-T20に買い替えたいと思うくらい、ACROSモードの描写が好きでたまりません。なので、今回画像処理エンジンが刷新されたことによってACROSモードが使えるようになったというのは自分にとってかなりのメリットでした。
『X-T10』から大幅な進化を遂げた『FUJIFILM X-T20』。中身が大幅な進化を遂げたのにも関わらず外観はそのままほぼ据え置きサイズという事実に、改めて驚きを感じてしまいます。
中身がX-T2と同じ…というとどちらを買ったらいいのか迷う方もいらっしゃることでしょう。X-T2はさすがフラッグシップ機と言うだけあって、フォーカスレバーの搭載や、高い堅牢性、防塵・防滴性能など使い勝手だけでなくタフネスさでもX-T2に軍配が上がります。
逆に言うと、「シンプルに使いたい」「過酷な撮影環境には持っていかない」「タッチパネルで撮影を楽しみたい」とはっきりと用途が決まっている方には胸を張って『X-T20』をおすすめしたいです。最新のフラッグシップ機と同等のセンサーとエンジンを積んでいてもなおこの価格帯というのは、正直かなりお買い得だと言えるでしょう。
また、X-T2ボディとX-T20ボディでレンズ1本買えてしまうくらいの価格差があるので、レンズに資産を回したい方にもおすすめです。
『X-T10』を既にお持ちの方はもちろん、これからカメラを始める方や、上位機種のサブ機として軽量で質の高いカメラをお探しの方にもおすすめしたい1台のご紹介でした。
Photo by MAP CAMERA Staff