明るい大口径単焦点レンズを多数リリースするニコンから『AF-S 28mm F1.4E ED』が発売されました。
本レンズの登場で24mm、28mm、35mm、50mm、85mmと5つの焦点距離で開放F値1.4と1.8のラインアップが出揃いました。それぞれに用途があり、全て揃えられればよいのですが、お財布事情を考慮すると、この中から数本チョイスするのが実情です。実は筆者もスナップ用に35mmを愛用しているのですが、見晴らしの良い場所などでは、もう少し広い画角が欲しいと思うことがあります。24mmへの乗り替えを検討しても、普段使いには少々広すぎて、今一歩踏み出すことができませんでした。28mmはそんな自分にも打って付けの1本だと思い、早速テストさせていただきました。
広い景色を求めて向かった先は箱根。2015年の火山活動以降、迫力が増したと言われている大涌谷の火口をロープウェイで横断です。
28mmという広い画角が空中散歩の爽快感を伝えてくれます。ゴンドラの窓越しの撮影でも分かるクリアでシャープな描写に加え、湧き上がる噴煙や落石の後など細部までしっかり捉える高い解像力が確認できました。
ゆっくりとした気分で撮るスナップ撮影でも、早いAFがあればそれに越したことはありません。超音波モーターの高速AFによりロープウェイのすれ違いざまでもすぐにピントが合います。
また幅広いピントリングはMF操作もし易く、ホールド感も良好です。手振れ補正機構がなくても安定した撮影を楽しむことができました。
最短撮影距離は28cm。被写体にグッと寄っても背景を広く取り込むことができるのは大きな魅力です。その場の雰囲気を残しているので、ボケ味も上品に感じます。マクロレンズとはまた違った接写が楽しめます。
少し絞れば手前から奥までとてもシャープな描写が味わえます。高精細なカメラ性能も相まって、細かな木々の葉から水しぶきまでしっかり捉えてくれました。トリミング作業が容易なこともあり、幅広い画角域のレンズとしての活躍も見込めます。
ナノクリスタルコートによるクリアな描写は高い木々に囲まれた神社の木漏れ日も綺麗に捉えてくれます。自然で大きなボケ味は28mmで撮ったことを忘れさせるほどです。
登山電車の沿線では紫陽花が見頃を迎えていました。普段は望遠レンズで車両を主役にするシーンも28mmならば沿線の雰囲気をそのまま切り取ることができます。普段と違った写真を撮りたい時には最適なスパイスになることでしょう。
紫陽花にギリギリまで寄って撮影すれば、こんなにも大きくボケます。正直これは想定外の大きさ。本当に驚きました。
古くから観光地として栄えた街は、所々で古いものを見かけることができます。可愛らしい鳥のノブが付いた水道も相当の年代物らしく水の止まりが良くない様子。近寄りすぎると水濡れのリスクを伴うシーンも、防塵・防滴に配慮された本レンズなら心配無用。さらに最前面・最後面レンズに埃や水滴が付きにくいフッ素コートを採用してので、天候やシーンを気にせず撮影できるのです。
古くからニコンを愛用されている方はご存知かと思いますが、同じ焦点距離の旧モデルに「AiAF 28mmF1.4D」というレンズがありました。サジタルコマフレアを補正するため、ダブルフローティング方式や精研削非球面レンズを採用したそのレンズは「広角ノクト」の異名を持ち、今もなお中古商品が高値で取引されるほどの人気レンズです。その後継の本レンズも旧レンズのDNAをしっかり受け継ぎ、絞り開放でも高い点像再現性を実現しています。
明るく広いレンズは室内撮影でも重宝します。薄暗いシーンでも透明感高い描写は光のグラデーションを綺麗に捉え、歪みも感じさせません。周辺も綺麗です。
強い日差しを受けたステンドグラスも綺麗に捉えました。もちろんナノクリスタルコートですから、ゴーストやフレアがしっかり抑えられています。
重さ645g。F1.8のレンズと比べるとさすがに大きく感じますが、F1.4ならではの柔らかなボケ味は他には代えがたい代物です。広い背景に浮かび上がるようなボケ味により、立体感がさらに引き立ち、その奥行きとワイドな画角で目の前に広がる開放感を気持ち良く切り取ってくれます。APS-C機で使用すれば42mm相当の標準域で使えるのも見逃せません。ポートレートなど幅広いシーンで活躍してくれることでしょう。
F1.4シリーズとしては後発となった28mm。旧モデルの評価が高かった分、開発に苦労したのだろうと勝手な想像をしていましたが、実際に使ってみると、的外れな想像ではなかったと思うようになりました。旧モデルの拘りを受け継ぎつつ、確実なブラッシュアップを果たした「AF-S 28mm F1.4E ED」を是非お試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff
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