SONYα7III
快進撃を続けるソニーのα7シリーズから、いよいよ『α7III』が発売されました。
昨年5月にプロフェッショナル向けであるハイスピードモデル『α9』が発売され、その後11月には4240万画素を誇る高解像度モデル『α7RIII』が、そして今月23日にはバランス重視のベーシックモデル『α7III』が発売されたということで、この1年弱の間に3機種もの大型製品が発売されたことになります。羅列してみると改めてソニーの勢いに圧倒されます。
筆者は普段α7IIを使用していることもあって、α7IIIの登場をかなり楽しみにしていました。私のように待ち続けていたα7IIユーザーは決して少なくないはずです。
ソニーはα7IIIのことを「フルサイズミラーレスの新基準」と謳っています。基準として据え置くにはかなりスペックが高いようにも思いますが、それだけソニーがα7シリーズに力を入れているということでしょう。
冒頭の写真は、河津桜に囲まれたヒヨドリを捉えた1枚です。忙しなく蜜を吸っているところの一瞬の隙をついておすまし顔を写真に収めることが出来ました。α7IIIの追従性能はかなりのもので、この時もヒヨドリをずっと追い続けてくれました。連写も使い何十枚か撮影をしたのですが、その中でピントを外している写真はほとんどなく、どの写真を使おうか迷ったほど精度が良かったです。それもそのはず、測距点数はα9と同等の693点。そしてコントラストAF測距点数はα7RIIIと同等の425点を誇ります。被写体に食らいついたが最後、シャッターを切るまで逃しません。
CP+でα7IIIの使い心地について別のkasyapa担当スタッフと話していたところ、「モードダイヤルのロックが無くなったのが嬉しい」という声を聞きました。確かに言われてみればα7RII以降ずっと付いていたモードダイヤルのロックがありません。この点においてはα7IIを踏襲しているようです。
α7IIIには新開発の35mmフルサイズ裏面照射型センサーのみならず、α7RIII、α9と同じ画像処理エンジン「BIONZ X」も搭載されています。見たものをありのままに表現するだけでなく、その被写体が持つポテンシャルを最大限まで引き出してくれる抜群の描写性能を備えているので、少しの間撮影をしただけですっかりα7IIIの作り出す世界の虜になってしまいました。
特に上の写真はお気に入りの1枚で、カーテンを束ねるタッセルのディティールや陰影表現が見事です。
バランスの良さがα7IIIの最大の魅力だと思うのですが、操作性と機能性を兼ね備えながらも価格を22万円台に抑えたそのリーズナブルさも忘れてはならないポイントです。(※価格は2018年3月現在のマップカメラでの販売価格です。)
スペックを紐解いてみると、コストカットの努力が随所に垣間見えます。特に背面の液晶モニターのドット数はα7IIよりも控えめになっていました。ですがそれによってモニターが見難いということもありませんし、タッチパネルが搭載されたので使い勝手は向上しています。むしろα9やα7RIIIほどの高精細さが不要である方にとってはその分少しでもリーズナブルになってくれたほうが嬉しいというもの。
ファインダーも同じく高精細という点ではα9とα7RIIIに及ばないものの、倍率に関しては0.78倍とα7IIから進化しています。
ユーザビリティが考えられつつも、α7IIIの目指しているところに向けてカットできるところはカットしていく。全部入りではなく敢えて取捨選択をすることによって、α7IIIが目標とするターゲット層の心を大きく揺さぶる1台が出来上がったように感じます。
ふと空を見上げると、左右のビルを結びつけるように一筋の飛行機雲が流れていました。
今回の撮影は全てJPEG撮って出し。どの写真もほとんど調整をかけていません。というか、かける必要が無いのです。
植木鉢に植わっていたみかんを、チルトモニターを起こして撮影した1枚。
チルトモニターを可動している間はファインダーとモニターがオートで切り替わらず、モニターがずっと表示されたままになります。最新のα7シリーズやα9をご利用の方にはもうあまり珍しくない機能だとは思いますが、普段α7IIを使用している筆者にとってはかなり嬉しいポイントでした。これでローアングルの撮影も快適に行うことができます。
タッチパネルを使用し、真ん中の緑色のビーズが入った瓶にフォーカスを合わせました。タッチパネルはもちろん、マルチセレクターも搭載されているため、このように密接している被写体を撮影する際に煩わしさを感じることもありません。
日が変わって、この日はどんより曇り空の中での撮影でした。曇りの日の撮影はメリハリが付きづらく画がフラットになりがちですが、α7IIIの描写力のおかげで迫力のある1枚に仕上がりました。
春らしい陽気が続いていますが、この写真を撮影した日は手がかじかむほど風が冷たく、ついつい温かいお団子に手を伸ばしてしまいました。手だけ出演していただいているこちらの女性にはお子さんがいるそうなのですが、お団子待ちの間に「そのカメラ、ミラーレス?うちの子どもも今欲しがっているのよね」と言われ、ミラーレスカメラは世間にこんなにも浸透しているのかと驚きました。
飛び散る水滴を捉えようとシャッタースピード優先で撮影をしたところ、いつの間にかISO8000まで上がっていました。撮影の際も全く気になりませんでしたし、上の写真を拡大してみてもとてもISO8000で撮影したものとは思えません。
α9と同じく最高で51200、拡張で204800まで使用することのできる抜群の高感度耐性は昼夜問わず活躍してくれることでしょう。α7IIを使用していても暗いところに強いなと感じていましたが、α7IIIはその比ではありません。
今回は2日間に渡って撮影を行ったのですが、充電をせずとも十分に耐えうる大容量のバッテリーには大変助けられました。
バッテリーはα9、α7RIIIと同じ「NP-FZ100」。しかしながらα7IIIには専用の充電器が付属しておりませんので、必要な方は別売の充電器をお求めになることをおすすめいたします。
ミラーレスカメラの革命児。
『SONY α7III』いかがでしたでしょうか。
「フルサイズミラーレスの新基準」とソニーが謳っているように、α7IIIの登場によって今後のミラーレス市場は更なる進化を遂げていくことでしょう。長く低迷していたカメラ業界ですが、α7シリーズを筆頭とするミラーレスカメラの登場と成長により、最近ではテレビでカメラに関する明るい話題を目にすることもしばしば。そう考えるとα7シリーズはカメラ業界に現れた救世主のようにも思えます。…なんていうと大げさに聞こえるかもしれませんが、α7シリーズ所有率が右肩上がりで増え続けているのも事実です。
また、今や当たり前のようになっている4K動画撮影ですが、もちろんα7IIIでも楽しむことが出来ます。α7RIII、α9にも無い動画に関する機能としては、今までよりも簡単かつ短時間でHDR(High Dynamic Range)映像表現が可能な「インスタントHDRワークフロー」を実現するHLG(Hybrid Log-Gamma)への対応がなされている点が挙げられます。
この価格帯で写真だけでなくムービーも本格的に楽しめるスペックを備えているのはとても嬉しいです。
今でも大人気のα7シリーズですが、α7IIIの登場によりその人気はさらに加速していくことでしょう。シグマもソニーのフルサイズ用レンズを発表しましたし、今年はソニーのフルサイズ用レンズのラインナップがぐっと増える予感がしてとても楽しみです。
Photo by MAP CAMERA Staff