NikonZ50
ニコンのフルサイズミラーレス、Zシリーズの登場から約1年。新たにAPS-CサイズのDXフォーマット『Nikon Z50』が、2本のNIKKOR Z DXレンズと共に発売されました。
「ニコンプラザ」での先行展示で実機には触れていたものの、改めて手にするとその軽量さに嬉しさを覚えます。加えて指かかりの良い深めのグリップ。内部に電池を収納しているため、適度な重さがあり、手にしっかり乗る感触があるのです。これなら少し大きめのレンズを装着しても不便さを感じることは無さそうです。
筆者は20年近くBillingham ハドレーのコンパクトモデルバッグを愛用しているのですが、お財布やスマホ、飲料水などを一緒にするとフルサイズミラーレスでは、ボディと中型レンズ1本を収めるのが精一杯。そのため、持参するレンズ選びにはいつも悩まされていました。ところが、Z50と2本の新レンズの組み合わせなら、幅広い焦点距離をカバーしつつ、他のアイテムを詰めてもまだ若干の余裕が残ります。さらにアクセサリーを追加しても普段より軽いバッグに、足取り軽く出発しました。
自宅から少し離れた横浜へ。朝早めに出発したこともあり列車は通勤ラッシュの時間。混雑時の小型・軽量システムは、本当に助かります。
そしてファーストカットは標準ズームの「NIKKOR Z DX 16-50mm F3.5-6.3 VR」で、季節の花の飾りを撮影しました。菊の花からは生花らしい瑞々しさを、紅葉した葉からは静かに深まりゆく秋の気配を感じさせてくれます。小さくても良く写る。一瞬でこのカメラの凄さが分かります。
池では白鷺が羽を休めていました。次は新レンズの望遠ズーム「NIKKOR Z DX 50-250mm F4.5-6.3 VR」に交換して引き寄せます。レンズも軽いので交換も楽々です。
1枚撮影して液晶画面でピントチェック…。驚きました!羽毛の質感をここまで再現するとは。さらに足のシワなど肉眼では分からなかった部分までしっかり描写しています。カメラのセンサーはD500と同等の2088万画素。画像処理エンジンにZ7、Z6と同じ EXPEED 6が採用されていることを考慮しても驚きの描写力です。レンズからもZ50の性能を十二分に引き出す高性能さを感じました。
寒さが増す季節、偶然見つけた囲炉裏で思わず足が止まります。炎の灯りがあっても薄暗い室内で茶釜の質感も捉えるべく、露出を調整します。こういったシチュエーションでは、見やすいEVFファインダーが本当に便利。シャッターボタン下にあるサブコマンドダイヤルのおかげで補正操作もスムーズです。結果、高感度での撮影になりましたが、ノイズ感もほぼ見られず期待以上の描写を披露してくれました。
少し高い軒下に干されていた柿。このようなシーンではフリーアングルのモニターを活用し、手を伸ばして撮影する機会も増えました。Z50は、その軽さと持ちやすいグリップにより、片手でもしっかりホールドできます。一方で、ボディ小型化のためカメラ内の手ぶれ補正機能の搭載は見送られました。Z7、Z6では重宝していた機能だけに少し残念ですが、新レンズ2本にはこれを補う4.5段分の補正効果を持つ強力な手ブレ補正機構を搭載。これまでのZシリーズ同様、ブレを心配することなく撮影が楽しめます。
昼食を兼ねて中華街から山下公園へ散策を続けます。氷川丸を係留する鎖にはたくさんのユリカモメが留まっていました。皆、同じ方向を向いて留まる規則正しさに面白さを感じカメラを向けました。一羽でも多く収めようと対角線上に配置。軽いカメラは構図も自由自在です。
芝生の広場から子供たちの賑やかな声が聞こえてきました。その方向に目をやるとシャボン玉イリュージョンを練習する女性と、飛んできたシャボン玉を楽しそうに割っている子供たちを発見。虹のように輝くシャボン玉を割られる前に捉えるべく、すぐさまカメラを構えます。カメラはそんな私の動きに瞬時に反応。シャボン玉が膨らんでいく様子まで捉えることができました。一瞬を逃さない機敏さも頼りになります。
もうすぐ師走、日の入りも早くなりました。日中は少し雲が多かったものの、夕方にかけては晩秋らしい空の色が味わえました。歴史あるレンガ造りの開港記念館の時計塔が西日によって綺麗にライトアップされていきます。そんな光のグラデーションも暗部を潰すことなく丁寧に描いてくれました。
次の撮影場所を求めて街を物色していると、窓越しにこちらを見つめる猫と目が合いました。可愛がられているのがわかる穏やかな表情と綺麗な毛並みが窓越しでも伝わります。
夜になり光り始めた椅子。イルミネーション撮影も楽しい季節になりました。お菓子のようなカラフルさを忠実に捉えてくれます。
最後にランドマークタワーの展望室から横浜港の夜景を狙いました。小型化により空いたバッグのスペースに忍ばせたミニ三脚がここで活躍。同じAPS-Cサイズの一眼レフと比べても格段に軽くなった約450gのカメラは小さな三脚でもしっかり固定することができます。念には念を入れ、静音シャッターで振動を無くし、ガラスの映り込みを防止すべく上着でカメラ周辺を覆います。無音になったカメラは、本当に撮り終えたのか不安になるほどです。
直下の遊園地からベイブリッジまで街の灯りを綺麗に捉えることができました。大桟橋に停泊する大型客船「飛鳥II」の煙突から船首に伸びるライトの帯も、よく見ると1灯ずつ点を打っているのが分かります。細部まで捉える高い解像力に丸1日驚かされました。
小型ボディに高性能を凝縮
飛鳥IIの出航を見送りながら撮影しているところで、バッテリーの残量を警告する赤いアイコンが液晶モニターに表示されました。1日の総カット数は約380枚。劣化度0の新品電池ということもありますが、小さなバッテリーでも十分なスタミナ性能です。旅行などでもっと多くのカットを撮影する際は、予備バッテリーがあると安心です。
そしてカメラ以上に1日フルの撮影を可能にしたのが、機動力を向上させた小型・軽量ボディです。年齢を重ねるにつれ、カメラのバッテリーより先に体力の限界を迎えることが増えた筆者にとって、この軽さは何にも勝る魅力です。液晶モニターからでも伝わる高精細な画質からもテンションが上がり、もっと撮りたいという気持ちにさせてくれました。
簡単に自撮りできるモードや、多彩なシーンモードを搭載するなど、初めての方にも親切な設計になっています。小型・軽量ボディに親切設計と聞くとエントリーモデルを連想しますが、本機は基本性能が高いので、普段からカメラをお使いの方にも十分満足していただけるはずです。ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff