561:『Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 E-mount』
2019年12月27日
VoigtlanderNOKTON classic 35mm F1.4 E-mount
カメラを趣味にしていると、偶然目にした作品などからクラシックレンズが気になることがあります。ふわりとベールをかけた様な柔らかい表現や、逆光時に発生する印象的なフレアなど、現代のレンズにはない味のある描写に魅力を感じている方も多いのではないでしょうか。しかし、古さゆえに状態が良くなかったり、どれが自分好みのレンズが分からないのも事実としてあります。レンズに関して色々調べ、自分でお気に入りの1本を探す面白さはありますが、欲を言うならば現代レンズの安心感とクラシックレンズの描写を合わせた様な「古くないクラシックレンズ」があったとしたら理想的です。今回ご紹介するレンズはそのような理想を具現化させた「2018年生まれのクラシックレンズ」という言葉がピッタリ合うレンズ。『Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 E-mount』をご紹介いたします。
まずNOKTON classic 35mm F1.4と聞いてピンと来たカメラ好きの方も多いはずです。元々はレンジファインダー用レンズとして発売されていた『Voigtlander NOKTON Classic 35mm F1.4 MC VM』の光学設計を見直し、Eマウント用に最適化したのが本レンズになります。開放時の柔らかな描写とMF・マニュアル絞りの操作はそのままに、絞り値を変えた時にピント位置がずれるフォーカスシフトを軽減、Exif情報や5軸ボディ内手ブレ補正機能にも対応したミラーレス専用レンズになりました。
一枚目の写真は、街中で視線を感じ、見るとバンビが黒い瞳をこちらに向けていたというシーンです。すかさず開放F値1.4で撮影すると、得も言われぬ玉ボケがふわふわと浮きあがりました。ブラウンの色合いと相まって優しい雰囲気に。
今度はとてもきれいな色のバイクが飾られていました。手前にあるクリスマスツリーを前ボケでフレーミングし、バイクのヘッドライトにピントを合わせて撮影。普段あまりMFを使わない筆者でも、ソニーのMFアシスト機能を使うと簡単にピント合わせができました。MFアシストとは、ピントリングを回すとビューファインダーやディスプレーが自動で拡大され、ピントの微調整がしやすくなる便利な機能です。
クリスマスツリーが吊るされていました。頭の上にあるツリーを下から眺めるなんてはじめてのような気がします。ツリーの下にオーナメントが下がっていて、下から見ても華やかです。おしゃれなライトと、壁にできたツリーの影を合わせて撮りました。本当に小さくて軽いレンズなので、カメラを上に向けるなどの少々不安定な体勢でも軽々と撮影することができます。
濃い色のアコースティックギターも、深みを添えてその色味をしっかりと再現しています。カーテン越しに光が差し込み優しい雰囲気も出せました。
あまり懐いてくれない実家の猫ですが、レンズが物珍しかったのか、暫くじっとこちらを見つめてくれました。レンズを絞ると美しくシャープさが増していくのが分かります。猫の表情や毛並みもくっきりと写りました。
観覧車のある広い公園へと向かい、三脚を据えての撮影も試してみました。観覧車の脚が電飾の光に照らされ立体感を強くしています。個人的な感覚になりますが、光の写り方が普通のレンズよりも綺麗だと感じます。
葛西ジャンクションの方へ移動をして、長時間露光で撮影。街灯や車のライトが尾を引いているような写真が撮れました。広い画角を使えるので、奥行のあるダイナミックな撮影にも強いレンズです。周囲が暗くなってくる時間帯でしたので、この時はファインダーではなく液晶モニターを見ながら撮影をしました。
現代生まれのクラシックレンズ
普段はとにかく楽できるAFレンズを好んで使っている筆者にとってMFレンズは勝手が違うため、撮影に持ち出す際に心配したのですが、それは杞憂に終わりました。動体撮影は慣れが必要なものの、静止した被写体であればMFアシスト機能を利用してテンポよく撮影を楽しむことができます。189グラムと軽く小さいので携帯性に優れ、持ち歩きが楽だというのも大きなポイント。また何よりふんわりした味のある描写が気に入りました。特に開放F値1.4では独特の写りをしてくれます。一方で少し絞るととてもシャープで、全く別の顔を覗かせてくれるのも魅力です。クラシックレンズのような強い印象を与えられる写真を撮ってみたい方に方におすすめのレンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff