待望のフラッグシップ機『Nikon D6』発売から早一ヶ月。前回のKASYAPAでは普段使いの視点からお送りいたしましたが、今回は連写やAF追尾、高感度耐性などより実践的な使い方でのご紹介をさせていただきます。
まずは水上を自在に泳ぎ回るイルカにフォーカスしてみました。高速のシャッタースピードでしっかりと動きを止める事、被写界深度を確保しつつ致命的なピンボケを防ぐ事、を目標にISO感度のみAUTOに設定して撮影に臨みました。高感度に強いカメラのスペックに全幅の信頼を置いての撮影です。 カメラが導き出した感度はISO 3600。想像より低い感度設定になりましたが、水しぶきを綺麗な点として捉えることができました。照明の当たっていない影の部分もしっかり描かれており、豊かな階調を持っているのもわかります。
続いて鉄道写真をご覧いただきましょう。既にKasyapaでも何回かお邪魔している東海道新幹線の小田原駅。ホームから離れた通過線を時速200km以上のスピードで列車が走り抜けます。撮影した日が強い雨の日だったため、先のイルカ写真同様、水しぶきを上げる迫力あるカットが撮影できました。 筆者は列車を撮る際、ヘッドライト部が白トビしないようアンダー気味に撮るよう心がけていますですが、描き出されたカットはまさにイメージどおり。 以前Nikon D5を愛用していましたが、その時の感覚とイメージがピッタリ一致。派手すぎないニコンの変わらない絵作りが嬉しく感じます。
ホームでの撮影では手前に設置された安全柵が邪魔になりがちですが、これも少しアンダー気味に撮影することと望遠レンズによる大きなボケで目立たなくなるよう撮影しました。 ポイントはAFを手前の柵に移動させないこと。予め線路にピントを合わせておき、列車がピント面に来たタイミングで追従を開始させます。D6はオートエリアAFの応用範囲が広がったことで、AF開始位置からより高精度な追従が可能になっており、より失敗カットを減らす手助けをしてくれることでしょう。結果白い車体が闇から浮き上がるように描かれ、カッコいい仕上がりに。空気を後ろに流す新幹線特有の形状も綺麗に捉えてくれました。
翌日は前日の雨が嘘のような青空になったので、空港側の海浜公園で航空写真に挑戦しました。ただ現地に着いてみると想像以上に海風が強く、フードをかぶせた望遠レンズが風に煽られ構えるのが一苦労。上空の飛行機も揺れているのが分かるほどです。そんな条件下では、握りやすいグリップが頼りになります。 ファインダー内の被写体の位置が定まらない中でのAFの食い付きは流石。連写の中から綺麗に収まった1枚は、機体の細部までシャープに捉えていました。機体の全長に対し、大きな翼が特徴のボーイング787型機は翼のしなりがとても綺麗です。 高画素のカメラに目が奪われがちですが、D5譲りの2082万画素センサーは解像感と階調、ファイルサイズのバランスが良くとても使いやすく感じました。
公園の片隅に夏を花を見つけたので南国の雰囲気に撮ってみました。強い風の影響で花は大きく揺れていましが、ここでもカメラのAFがよく頑張ってくれました。D6からグループエリアAFのパターンが大幅に増えたことで、特定の構図で撮りたい時のAF設定もかなり便利になってます。
イルカの撮影に戻りましょう。AFの設定は3Dトラッキングで撮影しています。イルカが水中から飛び出してきた瞬間にシャッターを切っています。欲しい瞬間に3Dトラッキングが反応し、小気味いい連写音。浮上した時の水を纏ったままのイルカ、まさに超高速だから撮れる世界です。この3Dトラッキングが非常に優秀で、シャッターを切りながら少し構図を動かしても被写体を追いかけ続けます。
水中から猛スピードで上昇しボールにタッチ。とっさの縦位置での撮影でもAFはしっかりと食らい付きます。この超ジャンプの後には大量の水しぶきをあげて落下するのですが痛くないのでしょうか。あの爆発のような水しぶきもまた見ものだったりします。
こちら、ぜひ画像を拡大してご覧いただきたのですが、まるで撮ってる事を見透かされてるような目線にドキッとします。私が座っている座席からはちょうど真反対の位置、つまり一番遠い距離のはずなんですが歯の輪郭まできっちりと写っています。ISO8000とかなり高感度なのですが、汚いノイズというわけでもありません。写真の使用用途にもよると思いますが、全く支障のないレベルではないでしょうか。
こちらのカットに関してはもはや意識外での撮影で、席に最も近い位置で跳んだイルカをテレ端で連写した際の一枚です。撮ってる最中はなにが撮れてるのか全く分かっていなかったのですが、カメラはしっかりとピントをイルカの尾ビレに合わせてくれていました。背景のライトを浴びて色づいているイルカが良いアクセントになっていてお気に入りの一枚です。
こちらも撮り方は先ほどと全く一緒。イルカが纏った水がまるで生き物のように見えます。手前の一本線は噴射されている水です。「決定的瞬間」は写真を撮っている中でも特に魅力的な瞬間です。自分では想像もできなかった瞬間が撮れている、という経験は一度体験してしまうと病みつきになってしまいそうです。
信じ合い頼り合う。
イルカに鉄道、飛行機と今回は動体をメインに撮影しました。注意することは被写体を見失わないこと、シャッターチャンスを熟知すること、そして撮りたいと思った瞬間を諦めずひたすらシャッターを切り続けること。そうすればこのカメラは必ず応えてくれるパートナーになってくれると確信できました。秒14コマの高速連写中もミラーショックは少なく、ファインダー像も安定。不慣れな被写体でもすぐに対応できる使いやすさがあります。
愛用する機材をよく「パートナー」と呼ぶことがあります。ただ、その言葉の中には欠点も許せるとか、ネガティブな要素もひっくるめてという意味が含まれています。このカメラへの意味合いはまさしく「信頼」です。絶対に失敗することのできない、撮り逃したくない瞬間を撮りに行くとき、D6は本当に頼りになるのです。
フラッグシップ機と聞くと敷居が高いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、単に失敗したくないという気持ちが強ければ、自然とこのカメラに導かれることでしょう。この安心感は何物にも代えられないのです。
二回に渡りKASYAPAでご紹介してまいりました『Nikon D6』、このカメラの良さが少しでも伝われば幸いです。
Photo by MAP CAMERA Staff