今回は遂に発売されたフジフイルムとしてデジタルカメラ用交換レンズ史上最も明るい開放F値1.0を実現した単焦点レンズ『FUJIFILM フジノン XF 50mm F1.0 R WR』をご紹介します。非球面レンズ1枚、EDレンズ2枚を含む9群12枚のレンズ構成。XFレンズとしては大柄に思えるサイズですが、フルサイズの85mmレンズのサイズと比べればそこまで大きさは感じませんし、重量も845gと1kg以下です。「-7EV」というほぼ暗闇に近い環境下でもAFが効くようになったということ。鏡筒の11ケ所にシーリングを施し防塵・防滴・-10℃の耐低温構造「WR」仕様であることなど、よりプロフェッショナルな環境でも使えるようになりました。
今回は友人に撮影の機会をもらえたので人物写真メインでご紹介いたします。低感度撮影において至らぬ点がございますがF1.0のボケや写りの良さをぜひご覧ください。
35mm版換算にして75mm相当の中望遠レンズ。一般的にポートレートで使われる85mmより10mm短いこの焦点距離はとても使いやすい画角の上、F1.0の被写界深度の浅さが被写体を容易に浮き立たせてくれます。
髪をまとめる仕草に美しさを感じるタイプです。モデルのおかげでもありますがファインダーを覗いているとハッとするような瞬間が何回もあって、その美しい瞬間を残したくてシャッターを切り続けました。被写体に寄ることでフルサイズセンサーに全く引けを取らないボケの世界。さすがはF1.0です。
なんでもない瞬間、振り向いた時の表情。被写体に目を奪われるその瞬間を逃すことなく撮影できました。
縦構図の画面中央に人物を置いた時のこの立体感、本当に惚れ惚れしてしまいます。ちなみに今回は撮影が夕方頃だったので現像で明るめに仕上げています。
こちらの1枚には「ETERNA/シネマ」を採用しています。色味や明るさを抑えることで落ち着いた雰囲気が切り撮った世界の物語性を増してくれます。75mmという画角はこういったホールケーキからワンカット切りだしたような世界観を作るのが得意な画角だと思います。
虹色の傘の色がクリアに写りました。うまく言えないのですが撮影から現像を通して思ったのが、光が濁らないレンズだなと感じました。ここからどう撮ろう?という試行錯誤の表情。会話しつつ、適度な距離で撮影できるのが中望遠レンズのいいところです。
F1.0の柔らかい階調はフィルムシミュレーションの「ACROS」と、とても相性が良いように感じます。ピント面の解像はもちろん、反射した床の写りもとても良いです。
窓から外を眺める。というシーンが撮りたくて場所を変えて撮影。玉ボケも大きく出て、被写体と背景を彩ります。私はこの1枚を現像中、フィルムシミュレーションをいくつも当てて違いを楽しんでいました。今回は「ASTIA」にしましたが他のフィルムシミュレーションの色味も良くて、なかなか決められません。フジフイルムならではの贅沢な悩み。
フィルムシミュレーションの中でも特にお気に入りなのが「クラシックネガ」。気を抜いたら全部そればかりになってしまうくらい好きですが、今回は数枚で我慢いたします。アウトフォーカスながら車の塗装の色がとても好み。キリッと締まったコントラストに、水面に反射したライトの描写もたまりません。
この状態のスカイツリーを見るたびにRPGのダンジョンみたいだなといつも思っています。「クラシックネガ」は霧やモヤを強調してくれるので、そのニュアンスをさらに強めてくれます。
改めて『FUJIFILM フジノン XF 50mm F1.0 R WR』のボケ量、ピントの薄さと「クラシックネガ」は素晴らしい相性だと思います。ピントの位置を曖昧に置いた写真は、デジタルではなかなか画にしにくいのですが、フィルム時代の「あの」時のような写り。こういう写真が撮って出しから生まれるのですから、非の打ち所がありません。
今までにないF1.0
今回撮影に出掛けたのがほぼ夕方からだったのですが、ファーストショットだけでその写りの魅力にメロメロにされてしまいました。今回はストロボなし、夕方からの撮影だったので近日、日中や低感度の撮影でもう一度このレンズの魅力に触れたいと思います。
ちなみに『FUJIFILM フジノン XF 56mm F1.2 R』と比較するとAFスピードは早く、レスポンスも良好です。気づいたら絞りリングが少し回っていたことがあったので少しだけ気をつけた方が良いかもしれません。機材レビューという名目さえ忘れてしまうほど、開放絞りの写りの魅力に取り憑かれてしまった『FUJIFILM フジノン XF 50mm F1.0 R WR』今までにないF1.0の描写、ぜひ体験してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff