APS-C専用の『Carl Zeiss Touit 12mm F2.8』。35mm判換算で18mmの超広角レンズは270gとコンパクトで携帯性に優れていながら、高い描写性能を誇る1本です。発売から7年経過した今でもそのシャープでクリアな描写は愛されています。今回、Eマウント用は『SONY α6600』、Xマウント用は『FUJIFILM X-S10』に装着し撮影を行いました。
広角レンズを手にすると美しい青空を眺めたくなります。オフィス街のビルの谷間から雲の流れを待ってシャッターチャンスを待ちます。ビルとブルーとホワイトのバランスを考えながら「今だ!」気づけばファインダーを覗いたまま15分経過していました。
大通りから、少し裏道に入った所で建物の外壁がふと目に留まりました。年季の入った石造りの風貌と鉄扉の半光沢の質感に惹かれた1枚です。画面の端まで石の継ぎ目や模様がしっかりと描写されているのもわかります。
地面に群生している野花。背面モニターを見ながらローポジションでカメラを構え、清々しい青空を入れました。超広角レンズでは、被写体に寄ることで背景の広がりを利用した立体感のある写真を撮ることができます。小型・軽量なシステムとチルト式の背面モニターによる撮影のしやすさも感じられました。
日中の太陽の暖かさと冷たい海風のバランスが気持ちいい初冬。砂浜にできた足跡にピントを合わせました。海に反射した光が綺麗な丸ボケになっています。刻々と変化する雲の形を眺めながら、波の音に耳を傾けるのは気持ちが落ち着き、心が休まった瞬間でもあります。
SONYとはまた一味違うFUJIFILMのフィルムシミュレーションの魅力。鮮やかに仕上げる「ベルビア」、カールツァイスレンズの見事な発色とコントラストは相性抜群です。ファインダーを覗きながらも「あ、いい色だ」そう感じてしまいます。
そして「クラシッククローム」に切り替え、逆光に立ち向かいます。フレアやゴーストも「写真の味だ」と考える私は、基本的に撮影に出る時はフードを装着しません。これだけ強い光を浴びてもとても自然に表現していることに驚きを隠せませんでした。シャープ過ぎず柔らかすぎず絶妙なバランスが自然と理想の1枚に仕上げてくれました。
増上寺から東京タワーに向かって歩きます。今も昔も変わらぬ絶景です。昔と変わったことは、カメラが「デジタル全盛」になったことと東京タワーの電飾が「LED」に変わったこと。いつみても安心感を与えてくれる不思議な存在であり、大好きな被写体です。
見える範囲、全てがストライクゾーン
開放絞りからの鮮明な描写は撮影意欲をより高めてくれます。また、コンパクトなサイズはそれぞれのボディともバランスが良く、コンパクトカメラのようなフレキシブルな撮影を可能にしてくれました。遠近感のある写真では主題がよりシャープに引き立ち、写真全体にピントが欲しい1枚では隅々までくっきりな表現。どのような場面でも撮影者の意図に答えてくれるでしょう。『Touit 12mm F2.8』の高画質を堪能できるのはSONY APS-Cサイズのミラーレス機とFUJIFILM Xシリーズだけ。軽快に超広角でスナップ撮影を楽しみたいという方には、ぜひお手に取っていただきたい1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff