「α7S」シリーズは高感度性能はもちろん、動画性能の高さから映像業界でも人気の機種です。特にα7SIIは長い間、4Kミラーレスを牽引する存在であり、後継機の登場が待ち望まれていました。そのα7SIIから約5年の時を経て、登場したのが「α7SIII」。今回は進化した「α7SIII」がどんな世界を映し出してくれるのか、実機を使って確かめていきます。
撮影の舞台は神奈川県西部にある小さな半島、真鶴半島。真鶴での旅の記録を映像として残しました。ぜひ4K画質でお楽しみ下さい。
カメラの撮影設定は4K60pを選択、編集で24pのタイムラインへ変換することで2.5倍のスローモーション効果を狙いました。α7SIIIは内部収録で10bitに加え、編集時の自由度が高いALL-I形式で記録可能となります。従来のαシリーズでは8bit収録のみ、10bitとなれば、Log撮影やカラーグレーディングも積極的に行えます。また、4Kでの120p撮影も可能となり通常撮影とスローモーション撮影が混雑するシーンでもフレームレートによる解像度の違いを気にすることなく撮影に臨む事が出来ます。
撮影セッティング
α7SIIIの機動力を生かし、「SONY FE 24-70mm F2.8 GM」「SONY FE 70-200mm F4 G OSS」の2本で各所を撮影。映像にはほとんど登場しませんが、RODE「VideoMic NTG」も使用しました。このマイクはUSB充電対応の内蔵バッテリーを採用、カメラと共有のモバイルバッテリーが使用出来るので野外での撮影には便利です。
いざ、撮影へ!
収録設定は「Cine1」ガンマ、カラースペースは「Cinema」で進めました。Cine1(PP5)はピクチャープロファイルで設定できる階調・発色を決める項目の一つ。通常のビデオガンマよりもなめらかな階調特性を持っているため、個人的に好きな設定です。S-Logとは異なり、撮って出しでも使用できる一方、撮影後に簡単なグレーディングで好みのルックにも調整しやすいです。
次は曇り空の中撮影したカット。晴天など条件の良い環境で綺麗に撮れるカメラは沢山ありますが、悪条件でも思い通り撮影出来るカメラは多くありません。正直、撮影された映像を見るまでは少し不安でしたが、ノイズ感の無いとても素直な映像が撮影できました。α7SIIIの捉える4K映像はディティールがしっかりしているので、風景の立体感も自然に表現されています。
撮影も終盤となり、夕暮れの空が綺麗な時間となりました。空の微妙なニュアンスを見事に捉えています。8bit素材ではバンディングの出やすい空などは特に気を付けながら調整を行っていましたが、10bitあると表現の幅が広がります。
ダイナミックレンジ
同じシチュエーションにおいて、メインで使用したCine1と、S-Log3の両方で撮影してみました。日差しの強い逆光ではダイナミックレンジの広さを実感できます。
少し極端な比較ですがS-Log3はメーカー発表値では15stop以上、今回のシーンでは特にハイライト・シャドウ側の見え方が大きく異なることが判ると思います。
信頼できる高感度耐性
やはり「S」の称号がついた最新機種となれば、高感度での撮影は試さないわけにはいきません。初代α7Sも高感度に強いカメラとして異彩を放っていましたが、α7SIIIの高感度性能はいかに
このカットはISO5000で撮影、この程度のISOではノイズは気になりません。筆者の場合、ISO6400以上の感度を使うのに抵抗がありましたが、手元にあるレンズの明るさでは厳しいロケーションです。試しにISO12800まで感度を上げて撮影したのが次のカット。
さすが最新のα7Sシリーズ、ISO12800で撮影したとは思えないほど綺麗。映像では船体の形や遠方の建物が認識できますが、肉眼では見えなかった光景です。もちろん、これ以上の感度であっても作品によっては使用に耐えられると思います。素材が良いとノイズ除去をする必要がなく、編集作業も短く済ますことができます。
4Kカメラの完成形
最近では6Kや8Kミラーレスも登場し、4Kで撮影できるカメラと聞いて、驚く人は少ないでしょう。確かに「解像度」という点だけで見れば派手さは有りません。しかし、低画素の恩恵を存分に発揮した「ダイナミックレンジ」や「高感度」など、「α7SIII」の捉える映像には驚かされることばかり。まだまだ試せていない機能もたくさんあり、「次はこのカメラとどんな映像を撮ろうか」と楽しませてくれます。
4Kミラーレス機の完成形ともいえる一台、これまでと次元の違う写りを間違いなく体験することができます。
Movie by MAP CAMERA Staff