驚愕の精彩さと独自の色彩で高い人気を誇るMerrillシリーズ、高い描写力で魅力のArtラインを初めとする再編されたレンズライン。話題のプロダクトに事欠かないSIGMA社ですが、新たに世界初のスペックを誇る1本が登場しました。『SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM』、デジタル一眼レフカメラ用交換レンズにおいて、ズーム全域で開放F1.8を実現したAPS-C用大口径標準ズームレンズです。
これまでデジタル一眼用の大口径ズームレンズといえばF2.8が主流、極僅かな例外としてF2クラスの超大口径レンズが存在しましたが、今回はAPS-C用とは言えF1.8という驚愕のスペックです。噂を聞いた時にはまさかそんなレンズが登場するなんてと疑問でしたが、実際に手にすると想像以上にコンパクト。「これでF1.8通し?」と驚いてしまうサイジングですが、その描写を見て、再び驚きました。
世界初のF1.8通しズーム、その実力をご覧下さい。
まずは広角端での描写。絞り込んでは居ますが、ヌケも良く発色もいい、文句の無い描写です。ゴーストも僅かで、この程度であれば優秀と言って良い性能です。ポールの表面の細密な質感描写もぜひご覧下さい。
6000分の1秒クラスのシャッタースピードがあると、この大口径レンズも活用の幅は広がります。夏の日差しの強い中でよもや開放撮影は無理かと思いましたが、難なく撮影できました。そしてその浮き上がる様な描写。ピントもシャープで、色滲みや収差も殆ど見られない驚きの描写力です。AFスピードや精度に関しても素早く、こちらも使っていて気持ちの良い仕上がりです。
“立体写真の様な”という表現がありますが、これはまさに飛び出す様な存在感です。ズームレンズの描写でこの表現が可能なレンズは未だかつて無かったでしょう。通しでF1.8と言えば少々の収差や滲み、コントラストの低下はあるものだろうなと思っていましたが、SIGMA Artラインの凄みを感じさせるパーフェクトな描写です。
APS-Cサイズセンサーでも近年は細密・精緻な描写とトーンの美しさを得られていましたが、ズームレンズ使用時はどうしてもボケ味が少なく、被写体を浮かび上がらせるには大口径単焦点という選択肢になっていた様に思います。逆にそのボケ味が表現可能なら、カメラボディとレンズシステムはAPS-Cの方が35mmフルサイズに比べてコンパクトで使い勝手は良い訳で、このレンズの登場はAPS-Cセンサーカメラの活用の幅すら広げてしまう様に思います。
少し絞り込めば、もう文句のつけようの無い描写です。
そして、このレンズのもう1つの利点が最短撮影距離の短い事。小さな花すら画面一杯に出来るその接写能力は、簡易マクロとは言ってしまうには惜しい素晴しい性能です。ズームレンズとしての使い勝手に、もう1ポイントボーナスがある感じで、撮影していてもそのボケの大きさとともに楽しんで撮影する事が出来ました。
色のヌケや、描写が近接でも変わらず良いのには驚きます。そして、ボケも素直なのです。間違いなくSIGMA Artラインの銘玉の1本となるでしょう。
開放です。周辺のハットのストローまでよく見てみてください。細かく、綺麗に描写しています。F1.8開放でこれほどまでに安定した描写を実現しているのですから、これは手放しに拍手を送ってしまいます。
素材の雰囲気も、しっかり出ていますよね。収差や滲みの無い素直な描写が生きています。
もちろん、薄暗いシチュエーションでもこの大口径は活躍してくれるでしょう!「ズームレンズと、明るい単焦点を1本。」と言った押さえのレンズが不要になるのは間違いありません。
初めて見た時には本当に驚きました。「これでF1.8!?」という様なスリムさで、前玉も控えめ。あんまり大きくて重いレンズではどんなに描写が良くても持ち出す機会が減ってしまいますが、このサイズなら文句は無いでしょう!それでいて、使い古された表現かもしれませんが、掛け値無しに単焦点レンズに匹敵する描写です。SIGMA Artラインの底力、圧倒の描写を試してみて頂ければと思います。
※今回の試写に使用したレンズはβ版になります。
製品の精度や安定感、そして描写はこれでβ版かと疑いたくなる完成度でしたが、 製品版では更に完成度が上がる訳ですから、楽しみな1本に違いありません。
Photo by MAP CAMERA Staff