ニコンからマニュアルフィルムカメラの雰囲気を感じさせるデジタル一眼レフカメラ「Df」が発売されました。
70年代後半に登場したNikon FMやFEに似たデザインの外観には、独立したシャッタースピードダイヤルや露出補正ダイヤルなどが配されており、昔を思い起こしながら操作できる楽しいカメラです。
されど中身は最新のデジタルカメラ。フラッグシップ機のD4と同じ1625万画素のCMOSセンサーと映像エンジンを搭載しているとのことですので、その美しい画質を確認すべく撮影に出掛けてきました。
見慣れたD4の高画質と思いきや、気持ち柔らかい描写に見えるのはこのカメラが持つスタイルからでしょうか?
透明感があってクリアな描写はその場の空気感もしっかり伝えてくれますが、高画素機独特のコントラストの高い派手さが抑えられており、落ち着いた感じのある描写を見せてくれました。
キットレンズとして用意されたレンズ「AF-S 50mm F1.8G」も、レザートーンの塗装やシルバーリングのアクセントが入るなど、フィルムカメラ時代を彷彿とさせるデザイン。
操作感も描写も、昨今のデジカメとは一線を画した仕上がりに感じます。
とは言え、描写が甘いという訳ではありません。被写体の質感再現力は高く、拡大すれば肉眼では見えなかった部分までしっかり捉えているのが分かります。
視野率100%の明るい光学ファインダーも明るく見やすいので、快適な撮影が楽しめます。
ケーブルレリーズ用のネジ穴が切られたシャッターボタンのレズポンスも良く感じます。
グリップにかかった斜めのボタンに慣れてしまった為、指掛りに不慣れさを感じますがソフトレリーズボタンでのカスタマイズが楽しめるメリットがあるのは嬉しく感じます。
フィルムカメラの感覚で操作していても、やっぱりデジタルカメラだなと感じたのは便利なライブビュー撮影が使えた時です。
背の低い筆者でも頭上のススキにピントを容易に合わせることができました。ただ注意したいのはライブビュー撮影は可能でも動画撮影が出来ないということ。
写真を撮る機能には一切妥協せず、その他の付加機能は全て排除。
D4と同じ映像エンジンを搭載しながら動画機能を無くしたあたりに、このDfのブレない立ち位置がしっかりと伝わってきます。
撮影から戻り改めて画像を確認すると、普段にも増して和テイストの写真が多い事に驚きました。
“昔のスタイル=和風”とは言いませんが、自身の中にあるスタイルも呼び起こされた感じがしました。
現代に蘇ったオールドスタイルのカメラに、これまた現代に蘇った銘レンズを装着。
「AF-S 50mm F1.8G」とはまた違った、クリアな透明感でレンズの持つ高い描写力を伝えてくれました。
レンズの特徴もしっかり分かる解像力は、不変のFマウントが持つ豊富な資産をより有効に活用することができます。
非Aiレンズにも対応したという応用性の高さで、新興のカメラメーカーには真似できないアドバンテージを披露しています。
カメラに記されたNikonのロゴも日本光学工業時代のものを採用するあたりに、レンズ資産が豊富な光学メーカーとしての狼煙が上がった様に感じます。
久しぶりに操作したメカニカルな操作性に若干の戸惑いもありましたが、各々が明確に独立しているので悩むことはありませんでした。
逆にフィルム枚数を気にしながら、丁寧に1枚1枚調整して撮影していた頃を思い出しながら、撮影を楽しむ事ができました。
液晶モニター等を搭載することで少し肉厚に見える外観ですが、レンズと合わせても1kgに満たない軽量さは、持ち歩き続けても苦になりません。
写真を撮ることだけに特化すると、自然と昔のスタイルに戻ったといった感覚すら覚えます。
Dfは、ニコンの広告にある「写真を愉しむ。」というキャッチフレーズがまさにピッタリと感じるカメラです。
Photo by MAP CAMERA Staff