今回のKasyapaは富士フイルムより新たなXシリーズとして発表された『FUJIFILM X-T10』をご紹介いたします。
X-T10は一眼レフスタイルのレンズ交換式ミラーレス機で、X-T1の高い撮影性能を持ちながら小型軽量と使いやすさにこだわった機種になっています。ボディは複数の素材を使う事で約381gという重量を実現、いままで外付けだったストロボもポップアップ式の内蔵ストロボを採用しました。
X-T1をお使いになってる方は分かると思うのですが、記念撮影でカメラを誰かにお願いする時困った事ありませんか?マニュアルカメラの要素を多く取り入れた操作系はカメラを使う方には「直感的に使いやすい」となるのですが、カメラを知らない方には「どう触っていいのか分からない」となるのです。X-T10には新たに「アドバンストSRオート」というオートモードを選べるようになりました。撮影シーンを自動でカメラが判断・選択をしてくれるので、誰でもキレイな写真が手軽に撮ることが出来ます。
では、本機種はXシリーズのエントリーモデルなのかというと、そうとは言えません。撮影性能はX-T1とすべて同じで、画作りの心臓部とも言えるセンサーと画像処理エンジンはX-Trans CMOS II と EXR Processor IIを搭載。オートフォーカスはコントラストと位相差のハイブリッドで、動体追尾と精度が向上した最新のAFシステムとなっています。この2機種の違いを簡単に言うなら『防塵防滴性能などが備わっているタフなフィールドカメラX-T1』と、『軽量化され汎用性が向上したX-T10』と言ったところでしょうか。では早速その性能を見て行きましょう。
青い空を切り裂くようなエッジの効いた高層ビル。ぜひ拡大表示で窓ガラスの描写をご覧になってみて下さい。純正レンズキットの絞りF5.6で写し出されたこの描写力には驚かされます。X-T10の性能はもちろんですが、富士フイルムのカメラ作りへ対する本気度を感じられる一枚です。
今回の試写では望遠レンズ『XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS』も持って行きました。このレンズも良く写りますね、テレ側開放でこの描写力です。X-T10に装着したバランスもとても良かったので、標準ズームとこの望遠ズームがあれば軽量ながら上質な写真を撮る事が出来るはずです。
X-T10の描写は先鋭さだけでなく、独自の色配列を持つCMOSセンサー『X-Trans』のおかげでAPS-Cサイズとは思えないダイナミックレンジとフィルムメーカーならではの繊細な色彩表現も大きな魅力です。X-T10を含め、富士フイルムの淡い色表現は他のカメラでは出せないだろと思う事がしばしばあります。
モノクロームも美しいですね、流石と思わせる表現力です。白い花びらの中にある無数のグレートーンを見事に引き出しています。
シャッターを切っていて少し思ったのですが、なにかX-T1と違うように感じました。シャッターの音が大きくなった?とも思ったのですが、おそらくボディの素材がX-T1とは違う事で手や耳への感覚的な伝わり方が変わったのだと思います。ではシャッターショックなどあるのかというと、その心配はご無用です。この写真は手持ちでシャッター速度1/8で切りました。しかもレンズ手ぶれ補正OFFの状態です。(気づいたらOFFになっていたというのが正しいですが)
正直自分でも驚きました、一眼レフでは派手にブレてしまうような状況でもX-T10はしっかりとホールドすれば撮影できる事を教えてくれました。
強い逆光を浴びてでの撮影でしたが、X-T10のクリアなファンダーのおかげでしっかり確認しながら撮影する事が出来ました。電子ビューファインダーは236万画素の倍率0.62。覗いてみると想像以上に広く見えます。そして撮影の際に気になる表示タイムラグは世界最短の0.005秒を実現している点にも注目です。シャッタータイムラグ0.06秒という性能も相まって試写では直感的に撮影する事が出来ました。
Xシリーズと言えば低ノイズな高感度性能も気になるところ。このカットはISO3200で撮影しました。ノイズを感じさせない素晴らしい描写です。
写真ではこの明るさですが、実際は照明が消えた薄暗いショーケースです。
コチラはISO6400で撮影しました。この写真も直接光が当たらない薄暗い夜に撮影したものです。この描写はフルサイズセンサーも含めても最高クラスの高感度性能と言っていいでしょう。
『FUJIFILM X-T10』は素晴らしい描写性能と軽快さを兼ね備えた素晴らしいカメラでした。ボディの素材、ファインダー倍率、背面液晶のドット数などはX-T1と違いはありますが、使用してみると廉価版という印象は全くなく、このカメラのキャラクターとして上手くバランスの取れた機種だと感じました。 作品づくりの出来る本格的な撮影性能を持ちつつ初心者でも扱える懐の深さは、実にXシリーズらしい物の作り方だなと関心してしまいます。
『FUJIFILM X-T10』はこれからカメラを初める方にも、今のカメラにもう一台で考えている方にも、カメラを使う面白さと写真の感動を与えてくれる一台です。
Photo by MAP CAMERA Staff