昨年11月の開発発表から早4ヶ月。首を長くして待たれていた方も多いのではないでしょうか。お待たせいたしました!『Nikon D5』の登場です。
まず注目は、動体への応答性・追従性が向上したというAF性能を試すべく競馬場へ出かけてきました。勝負所の第4コーナーでカメラをセットして馬群を待ちます。
レースがスタートし、3、4コーナーの中間辺りでAFが先団馬群を捕捉。後はぴったり食らいついて離しません。コーナーで外に膨らむ動きにもしっかり対応してくれ、まさにカタログ通りの新AF専用エンジンの恩恵にあずかることができました。
残り400mの標識からシャッターを切り始め、秒12コマの高速連写で馬群を見送ります。その間のカット数75枚。RAW+JPEGのダブル保存でもファインダーから目を離した時には書き込みは終わっていました。今回使用したのは、より高速なXQD-Typeということもありますが、まさに驚愕の書き込みスピードです。
連続撮影時の安定したファインダー像を実現する新開発のミラー駆動により、連写時のファインダー内がより見やすくなりました。
動体撮影に適したSPORTモードモード搭載レンズとの組み合わせなら、さらにその効果が活きてくるとのこと。 今回使用した望遠ズームとの組み合わせは約3.7Kg。これまでの手持ち連写では視界の低下に加え、その重さから被写体の中心がズレることがありましたが、視界の改善によりさらに安定したフレーミングができるようになりました。
観戦スタンド2階から、優勝馬の飾り付けのシーンを覗いてみました。綺麗な芦毛の馬体に汗のしっとり感が見てとれる高い解像力です。
D810などの高精細なカメラに慣れてしまったため、2082万画素に少し不安もありましたが、十分すぎる高精細な写りを確認することができました。
ナチュラルな発色に際立つ立体感。鮮明とという言葉がピッタリです。高速連写と美しい画質とのバランスの良さ。まさにフラッグシップに相応しいハイスペックカメラです。
AFの進化は専用エンジンの搭載だけではありません。ファインダー内のフォーカスポイントセンサーがなんと153点に。
選択可能なポイントはD4Sの51点から55点と操作感覚的にさほど変化を感じませんが、点数が増えたことにより1点のポイント自体が小さくなったので、よりピンポイントが狙いやすくなりました。
噴水池に浮かぶ桜の花。水の流れで回転していましたが、雄しべの細い額にもピントが瞬時に決まりスムーズに撮影できました。AF撮影の中でも難しいとされるマクロ撮影ですが、迷いなくスッと合掌した辺りにも新AFの凄さを感じます。
高感度耐性の進化も止まりません。常用感度ISO 102400に加え拡張でISO3280000相当までの増感が可能になりました。スポーツのナイター観戦など、夜間でシャッタースピードを稼ぎたい時には威力を発揮してくれることでしょう。
高感度ノイズは目立ちやすい被写体とそうでない被写体の差が出やすく、またどこまでを実用とするかは賛否両論あると思いますが、ISO51200でこれだけの画質が得られるのであれは、上々ではないでしょうか。ライトアップでコントラストの差が大きくなった被写体でも、ディテールを損なうことなく見事な立体感を演出しています。
常用感度域の拡大は実用域も大きく広げてくれました。カメラ内のノイズ除去を切ったISO12800の画は、等倍表示でこそ粒子感が気になりますが、A4サイズでのプリントでは、見たイメージに近いクリアーな画が得られます。照明のある場所での色の再現などは驚愕の一言です。
AFの速さで定評のある「AF-S 24-70mm F2.8E ED VR」との 組み合わせでは、さらにAFの凄さを実感できました。ミラーレス機に迫る驚愕のスピードです。ナノクリスタルコートによるヌケの良さは、澄み渡る青空を再現してくれました。
ショーウインドウのガラス越しでも透明感の高さと色乗りの良さが実感できます。パンの香ばしさとクロワッサンのサクサク感が伝わります。
高速連写に対応したシャッターは静音性も向上。気持ちよさそうに寝る猫を邪魔することなく撮影できました。
薄暗い室内に電気ストーブの明かりでも猫の柔らかな毛並みがしっかり見てとれます。暖かな特等席。周囲の温度差も再現されています。
「AF-S 50mm F1.8G」も使ってました。高画質なカメラでは高性能レンズを推奨するモデルもあますが、正統フラグシップの1桁機はどのレンズとも好相性です。
コンパクトなレンズのおかげでフットワークも軽快。ボケも綺麗です。使うレンズでスポーツからスナップまで幅広く楽しめる。さすがのフラッグシップ機です。
すりガラスの越しの優しい明かりも上手に捉えました。とても上品なグラデーションです。
夜景から木漏れ日まで、光の質は異なりますが、光を上手に捉えるカメラと再認識できました。メーカーカタログの表紙に書かれた「未知なる光を、捕捉せよ。」まさにこの言葉がピッタリのカメラです。
最後にD4Sとの比較にも触れておきましょう。(写真左がD5、右がD4S)
ペンタ部分が少し角張りD3に近いデザインに戻りました。グリップ部も少し調整され、親指と中指のかかりが良くなったように感じます。少し肉厚になった印象のグリップですが、赤いラインが横に伸びたおかげで、見た目はスマートに見えます。
プレビューボタンとファンクションの間にもう1個ファンクションボタンが追加。4K動画など多彩な機能が盛り込まれているだけに割り当てボタンが増えるのは嬉しく思います。
また、バッテリーがD4シリーズと同じ「EN-EL18a」というのも朗報です。D5を買い増しという方が羨ましく思います。
軍艦部の注目は何と言ってもシャッターボタン周りに「ISO」ボタンが設置されたことでしょう。
ファインダーから目を外すことなく、シャッタースピード等を確認しながらISOの設定が可能になりました。シャッタスピードの調整にISOは無くてはならなくなっただけに嬉しい配慮です。
背面表示パネル下の「ISO」ボタンがあった場所には「レリーズモード」ボタンが新たに搭載。
上部のレリーズモードダイヤルをCLに設定時は1~10コマ/秒、CHに設定時は10~14コマ/秒に調整することができる他、セルフタイマーの待機時間の変更や静音連写などが設定できます。
そして忘れていけないのが、タッチパネル採用になった液晶モニターです。
約92万ドットから約236万ドットに解像力が上がりより精細な画像確認ができるようになった上に、スマートフォンのような操作で画像送りができるので高速連写で膨れ上がった撮影カットもスムーズに整理できます。撮るだけではなく管理もしやすくなった嬉しい進化です。重要な液晶モニターだけに保護フィルムはお忘れなく。
伝統の1桁番代のフラッグシップ機は、速さ、画質、使い勝手の全てにおいて期待以上の仕上がりでした。オリンピックイヤーのモデルと言うこともあり、相当の力作というのが伝わってきます。
今考えられる全ての便利機能がバランス良く搭載されているフラッグシップ機はまさに万能。とことん使い尽くしてみようと感じさせる1台です。
Photo by MAP CAMERA Staff