Carl ZeissのMilvusシリーズに新しいラインアップが3本発表されました。今回はその内の1本『Milvus 18mm F2.8』をご紹介いたします。
同時発表の他2本は「Classic」シリーズに同スペックのレンズが存在しますが、18mmだけは同じ18mmの「Distagon T* 18mm F3.5」と比べ、開放F2.8とさらなる大口径化が図られました。 Milvusシリーズになって大きく生まれ変わった18mmの実力を早速ご覧いただきましょう。
約100度の広い画角は、普段の見慣れた街並みもまるで別世界のように感じさせてくれます。ご覧の通り高速道路の下の明暗差の大きな場所ですが、透明感高い描写のおかげで暗部の細部までしっかりと確認することができました。とてもシャープな描写は、さすがツァイスレンズと言ったところでしょうか。
少し低い位置からの撮影で、広角レンズらしいパースが生じていますが、歪みも抑えられスッキリとした印象を受けます。さらにフィルター径が95mmとより大きくなったDistagonレンズは隅々まで明るく、より開放感を感じる描写になりました。
最短撮影距離も5cm縮まって25cmになり、利便性も向上。
スポットライトのような木漏れ日が落ちる場所に咲く彼岸花にギリギリまで寄って撮影をしました。しっとりとした花びらや花粉の粒子感など、マクロレンズに匹敵するかのような質感描写に驚きます。
秋晴れには程遠い空模様でメリハリの薄い画になりましたが、コントラストの高い描写のおかげで個々の色はしっかり再現されました。
落下防止用のネットなど隅の細かい場所まで捉えており、Milvusシリーズの「フルサイズセンサーの能力を十分に引き出す」というコンセプトを感じることができました。
見晴らしの良い場所での撮影では、改めて解像力の高さを感じることができました。手前の東京駅舎から奥のビル群まで、拡大表示するとはっきり見えてしまう細部に怖さも感じます。
直線が綺麗に出る広角レンズは構造物を撮影するのにも最適です。広大な景色をよりワイドに撮る印象の強い画角ですが、想像以上の撮影用途の広さがありました。
さて、ここからは機材を変えて『Canon EOS 5D Mark IV』で撮影した作例をご紹介いたします。
先ほどまでの写真とは別日に撮影をしたのですが、この日は清々しいまでの晴天。キヤノンパートではこのレンズの逆光耐性を存分に味わっていただけるかと思います。
ずっしりとした重厚感のあるカメラとレンズを携えて向かった先は代官山。ピカピカに磨かれた建物のガラスに渡り廊下が綺麗に反射して写っています。ヌケの良い描写が気持ちいいですね。
途中寄ったカフェでの1枚。特に強調したい被写体は、開放+近接撮影でしっかり引き立たせてあげましょう。
普段撮影をしているときはあまり被写体に選ばないのですが、広角レンズを持っているときはついつい歩道橋や橋を撮ってしまいます。撮った写真を改めて見返してみると、画面越しではありますがVR体験をしているかのような錯覚に陥ります。ツァイスの公式にも書いてある通り、臨場感のある写真を得意としているレンズですね。
光の当たっている葉っぱを狙ってピントを合わせました。周辺部分まできれいに正円のボケを描いてくれています。ハイライトからシャドウまで逃すことなく捉える諧調豊かな描写も推すべきポイントの1つ。
Milvsuシリーズは交換レンズの中でも高価な部類に入りますが、このレンズでないと味わえない描写が、そこにはあります。
雲1つない空から放たれる強い光をものともしない逆光耐性には惚れ惚れします。特に広角レンズは風景撮影を得意とするレンズなので、逆光に強いのはとても心強いですよね。日の光に臆することなく撮影を楽しむことが出来ます。
最後のカットは、しゃがみこんでローアングルで撮影をした1枚。ローアングルで撮ったことによりパースがつき、勢いのある描写となりました。
広角レンズほど撮り手の頭を悩ませるレンズは無いと個人的に思うのですが、そのぶんガチッとハマった時には思わずガッツポーズをしてしまいたくなるほどの写りを魅せてくれます。
人間の目の画角は50mm相当と言われていますから、それを超えるものを見るとどこか非現実感があり、そしてそれと同時に実際に自分の目を通して見たときの何倍もの感動を与えられることの出来るレンズであるとも思います。きっと、使い方によっては一番化けるレンズなのではないでしょうか。
ニコンパート、キヤノンパート合わせて計14枚の写真をご紹介しましたが、『Milvus 18mm F2.8』いかがでしたでしょうか。
上の写真をご覧いただいてもわかるように、Milvsuシリーズ特有の滑らかで美しいフォルムが目を引きます。レンズフードもレンズと同じく金属製なので、広角レンズならではの大きな前玉をしっかりと守ってくれるのも嬉しいポイント。実際にカメラに付けて構えてみると、ずっしりとした重みがレンズを支えている指先にかかるのですが、その重みは決していやなものではなく、むしろ「このレンズでいったいどんな写真が撮れるんだろう」といったワクワク感を与えてくれます。
マニュアルフォーカスの広角レンズ…と考えると少々敷居が高いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、操作しやすいピントリングと見やすいファインダーのおかげか、想像よりずっとピント合わせが容易でびっくりしました。パンフォーカス以外の時でも、です。光学ファインダ―でのマニュアル撮影を苦手とする私でも今回の打率はかなり高かったです。
ぜひ一度お手に取っていただきたい、プレミアムな広角レンズのご紹介でした。
Photo by MAP CAMERA Staff