ついに発売されたソニーのフラッグシップモデル『SONY α1』。ソニーのミラーレス機の中でも他機種とは一線を画する特別な存在です。スペックを知った当初は、高速性能に優れる『α9 II』と高解像度の『α7R IV』、そして高感度に強い『α7S III』のいいとこ取りだと思いました。それならば自分が撮る分野に合わせてカメラを選択すれば『α1』は手に入れなくてもよいのかもしれない、とも。しかしメーカーの方から受けた説明によると、そう簡単な話ではないことがわかったのです。一例を挙げると『α1』のセンサーは『α9 II』のものを高解像化したわけではありません。新たに開発されたセンサーが搭載され、より高解像にもかかわらずスピード自慢の『α9 II』よりさらに速いのです。BIONZ XRはWエンジンではなく2種類の異なるエンジンが搭載されているため、連写バッファ中にいろいろなことができるのも魅力です。速いだけでいい、高解像は要らないという方にとっても、スピード性能が勝るのは『α1』ですから手に入れる価値があるというわけです。そのような話がいくつも重なり、さらに使ってわかる快適さも相まってたどり着いた答えは、『α1』はいいとこ取りではなく格上の全く新しい「オールインワンのα」であるということ。フラッグシップは伊達ではありません。そんな『α1』でいろいろなシーンを撮影してきたのでご覧ください。
一面に敷き詰められた苔の上に椿の蕾が落ちていました。差し込む木漏れ日がスポットライトのよう。緑のやわらかな絨毯に横たわるその姿はどこか色っぽいとさえ感じます。
公園に着くと、シャボン玉で遊んでいる家族連れがいました。よかったらシャボン玉を撮らせてもらえませんか。そう声をかけると、姉弟とおぼしき2人が私のためにシャボン玉を作ってくれたのです。そして2人が「あー!」と声を上げたのがこの合体したシャボン玉。大きいのができたと大盛りあがりでした。青空ではなく黒っぽい背景を選ぶことで、シャボン玉自体の色合いを際立たせます。
横乗り系のスポーツを見るのが好きです。気持ちよさそうにスピードを出したりジャンプする様子は、こちらまで爽快な気分になるのでいくらでも見ていられます。場で一番印象的だった彼に声をかけたところ、私の友人がスポンサーを受けているアパレルブランドのスクールに通っているそうでご縁を感じました。こういう出会いがあるのが人を撮る醍醐味でもあります。このショットは見えないところから急にジャンプで現れたというシーンなのですが、『α1』はその飛び出る一瞬を逃さず捉えてくれました。
ドッグランのワンちゃんたちは、なにかに駆り立てられたかのように急にものすごい速さで走り出すことがあります。この体勢の角度を見ればそれがどんなスピードか想像に容易いでしょう。『α1』はそんなときもトラッキングでしっかり追ってくれます。
手前の芝生の縞模様、土手に斜めに落ちたポールの影などのパターンが美しいと思っていたところにワンちゃんが走ってきたので、主役に据えました。これもピントはトラッキング。遠目にもわかる躍動感がお気に入りです。
背中に夕日を受けながらフットサルのボールで遊んでいる友人を切り取ります。よくこんな風にボールを自在に操れるものだと感心します。顔ではなくあえて足先にピントを合わせトラッキング。『α1』は本当にトラッキングが楽しいです! アクロバティックなポーズなのでフリースタイルフットボールのように見えるかもしれませんが、フリースタイルとフットサルでは使うボールは異なるのだそうです。
公園に隣接したレストランで遅めのランチをいただきます。希望していたテラス席はペット連れのお客さんで満席だったので、中の窓際の席に案内されました。ガラス張りの店内からでも公園の木々がよく見え癒やされます。水が入ったボトルの緑色の影と、パスタに散りばめられたグリーンの葉がポイントです。
公園のトンネル内に光が差し込み、水面が天井に映ります。カラーの写真ですが幾何学模様をモノクロで切り取ったかのような不思議な一枚です。
『α1』の大きなトピックとして“鳥瞳AF”が新たに加わりました。その実力を試すべく向かったのは動物園の猛禽類コーナー。凛々しい姿で構えるオオワシをファインダーで覗くと、一瞬でフォーカスポイントが瞳を捉え続けます。世界最高峰のAFシステムを搭載する『α1』だけに、実際の野鳥撮影でも大きな力を発揮してくれるはずです。
動体撮影が得意な『α1』なのでもっと動きモノを撮ろうと水族館へ。かわいいイメージのイルカですが、近くでよく見ると思いのほかマッチョで驚きます。そこで筋肉を感じる写真がよいと思い、いくつか撮った中からこのショットを選びました。その逞しい筋肉で水の中から跳ね上がり、たくさんのきらめく水しぶきをまとっています。
以前にもKasyapaに書いたことがありますが、月を撮るタイミングは満月から少し欠けたときが好みです。この写真では右上が欠けています。欠けて影がかかることでその部分のクレーターが浮かび上がるからです。そして月を黄色くするようホワイトバランスも調整しました。黄色い月のクレーターを等倍で見るとなんだかゾクゾクします。大きく写したかったので、レンズの光学ズームに加えボディの全画素超解像ズームとAPS-Cサイズ相当の撮影を併用しました。『α1』は759点AFですが、今回のようにフルサイズ用レンズを装着してAPS-Cサイズで撮影する際にも759点AFのままです。クロップで測距点数が減ったりせずAPS-C機に変身するのは、常に全力で能力を出そうとする『α1』らしい挙動です。
最適解は、オールインワン。
フィルム時代にアシスタントから下積みを始めてたくさんの失敗を経て現在に至る私にとって『α1』は衝撃的なカメラでした。実に多くのことをカメラがやってくれるおかげで、腕が上がったような写真を撮ることができるからです。スポーツもポートレートもスタジオなども全ての撮影においてトップクラスのサポートをしてくれて、中途半端なものはありません。プロのニーズに的確に応えるフラッグシップモデルですから、結果の確実性を求めるプロにおすすめなのは言わずもがなです。しかしそれだけではなく、思い通りの最高品質の写真を得たい人、昔は頑張っていたけれど楽をしたくなってきた人など、多くの人がたどり着く最適解が『α1』なのです。プロ向けだと臆することなく、どうぞ享受してください。ここに『α1』があるのですから。
Photo by MAP CAMERA Staff