今やデジタルカメラ業界を牽引する存在となったミラーレス機。システム全体の高性能化が図られ賛美される一方、ファインダーに関しては「光学ファインダーの見え方が理想的だった」をいう声も多く耳にします。そんな中、正真正銘の光学ファインダーを採用するこだわりの一眼レフがペンタックスより登場しました。今回のKasyapaは新発売された『PENTAX KF』をご紹介いたします。
ペンタックスのラインナップでは人気機種である『K-3 Mark III』の弟分的な存在の本機。エントリー機の位置付けと思われがちですが、採用されている技術や機能はミドルクラス機と同等の実力を持った機種になります。
まず一眼レフで最も重要であるファインダーは視野率100%を実現するプリズムガラスを採用。そして2424万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーはリアルな立体感と解像感を実現するローパスレスフィルター仕様。さらに100カ所に及ぶシーリングを施した防塵・防滴構造とマイナス10℃までの動作を保証する耐寒性能を備えているのです。
まず今回の撮影では『PENTAX KF』の実力が試せるように、独自の色彩を表現するカスタムイメージを活用し全てJPEG撮影で行いました。そしてレンズはキットで付いてくる『DA L 18-55mm F3.5-5.6 AL WR』のみを使用です。
コンクリートの壁、綺麗な空、秋色の芝生、少しハイキーに振ったこのカットは「フラット」で撮影した一枚です。何気ないこの景色を“いい雰囲気の写真”へ変えてくれるのはペンタックスの色の力。シャドウの階調を持ち上げ、明るさと解像感が織りなす描写はまるで中判カメラで撮影した写真を見ているような錯覚を覚えます。
気持ちの良い天気の中、海沿いの道を歩くと多くのコンテナが積み上げられていました。鮮やかな色彩が目を引くこの一枚は「ポップチューン」で撮影した一枚。ポップカラー系のカラーモードはデジタルアートのように強い発色の機種が多い中、ペンタックスは色の深みを残し、写真として成立する鮮やかさを実現しています。
ペンタックス使いにはおなじみのカスタムイメージ「雅(MIYABI)」で撮影した一枚。花が持つ淡いマゼンタとイエローを上品に引き立て、魅力的な一枚に仕上げてくれました。また、本機にはバリアングルモニターが採用されているので草花をローアングルで撮影する時に活躍してくれました。
『K-5』よりカメラ内のカスタムイメージに加わった「銀残し」。全体的に低い彩度ながら深みのある色彩で映画のワンシーンのような写真に仕上げてくれます。
空にポツンと浮かぶカーブミラーを「リバーサルフィルム」で。濃いめの発色と締まりのある黒はスナップ撮影に適した印象的な色合いです。
秋を感じる街路樹を見上げての一枚。気づけば秋も深まり、晩秋という言葉が似合う季節になってきました。今回の『PENTAX KF』の特徴の一つに新たなカスタムイメージである「里び(SATOBI)」がアップデートなしに使用できるのです。まるで60~70年代のフィルム写真のような風合いにも似た色調が特徴です。
現代へ繋ぐ一眼レフの血統
撮影を終えて率直に感じたのは「すべてが想像以上」という事です。光学ファインダーや多彩な撮影機能はもちろんですが、基礎となるキットレンズのスッキリとした描写と、ボディが作り出す色彩と解像感。シンプルに良い写真が撮れるカメラだと感じました。
実は14年ほど前、初めて購入したデジタル一眼レフがペンタックスの『K20D』で、初心者だった私に撮影の“いろは”と一眼レフの面白さを色々と学ばせてもらいました。ミラーレス機との大きな違いは露出の数字を見て写真の仕上がりをイメージし、撮影をしなくてはいけないこと。写真好きからすると当たり前のことを言っていると聞こえますが、仕上がりの露出をEVFでリアルタイムに見ながら撮影をする現代のミラーレス機とは、写真というゴールは同じでも撮影プロセスや考え方が一眼レフとは違うと思うのです。
ベテランには信頼の一眼レフとしての『PENTAX KF』を、そしてビギナーにはカメラの使い方と写真の撮り方を教えてくれる『PENTAX KF』を。ミラーレス機全盛期に登場した新たな一眼レフ機は、写真を撮るための大切な事を改めて教えてくれました。ぜひ本機を手に写真撮影を楽しんでいただければと思います。
Photo by MAP CAMERA Staff