最高レベルの描写性能、高速 AF、コンパクトネス。「Art F1.4」の評価を決定づけた『SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM』の後継レンズ『SIGMA Art 50mm F1.4 DG DN』がついに登場しました。一眼レフ用レンズとして登場してから約8年、愛用し続けてきた全てのユーザーが待ち焦がれていたレンズだと思います。8群13枚の構成から11群14枚の構成に変更し非球面レンズは3枚、SLDガラス1枚を採用(絞り羽根枚数も11枚に変更)。唯一ネックだった重さも905g(Lマウント版)から670gと大幅な軽量化とサイズダウンを実現しました。筆者個人も長らく愛用していたレンズ、DNシリーズとしてどんな進化と変化を遂げたのか見ていきたいと思います。ぜひご覧ください。
F2のカット。少し距離があるある被写体を非常に立体感のある画で見せてくれました。色にじみのないクリアな画に驚かされます。
F4まで絞ると開放絞りのときに出ていた周辺の減光もなく、画面全域でフラットで均整のとれた画になりました。『SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM』は絞るとかなり硬めの写りになるイメージがありましたが、とても自然なシャープさと解像感です。
冬の午前中の光を逆光で受けてみたところ開放絞りの柔らかいコントラストも表現できました。パキっとしたコントラストだけでなく、こういう表現も出来るのは嬉しい限り。開放絞りのピント面のキレの良さは相変わらずというか、さらに磨きがかかったような気がします。
他のスタッフに撮って出しのこの画を見せて「開放絞りですよ、どうですか凄くないですか」と撮っただけの筆者が自慢してしまいたくなるほどの鮮鋭な写り。開放付近(とはいえF2でほぼ解消)の周辺減光もむしろ良い雰囲気作りをしてくれています。
手すりの光沢感や色艶、開放絞り独特の周辺減光、ボケ感。撮って出しの状態で後から手を加える必要性を感じさせないアートな描写です。作品作りにおいて非常に頼りになる一本ではないでしょうか。
F2くらいまで軽く絞るとピント面とボケのバランスが『SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM』と比べても良い感じです。開放絞りからF2を多用していた筆者にとっては一番喜ばしい進化です。
今回はなるべく色んな質感のものを撮ってみようと撮影してみましたが、どの質感描写も見事なものでした。このカットのガラスの冷たい光沢感も反射も手前のボケ感も、嫌だなと感じる要素はありません。
フルフレームミラーレス専用設計のArtラインとしては初めてリニアモーター「HLA(High-response Linear Actuator)」を採用しフォーカスレンズを両面非球面レンズ1枚にすることで、大口径ながら高速・静粛なフォーカシングと高い追従性を発揮。後ろからきたランナーにもとっさの反応を見せてくれました。
この日は暗雲が立ち込みつつも、今まであまり見たことのない真っ赤に燃える夕焼けに立ち会うことが出来ました。明暗差が激しいシーンでしたがハイライトもよく粘ってくれました。
帰る間際に記念にとピンク色に染まる遠くの空を撮影しました。特に期待もしていなかったカットなのに雲の立体感がしっかりと出ていて、ここまで描き分けてくれるのかと最後の最後まで驚かされました。そして個人的に気になっていた「レンズ補正」。RAWデータからJPEGに変換して歪みなどをチェックしてみましたが問題点を感じることはありませんでした。
大口径標準レンズの新基準
『SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM』が登場して数年経ちますが、大口径標準レンズの性能基準の比較として今でも例に挙げられるほどの高い完成度をもつレンズです。その後継レンズとなればやはり期待値は非常に高く、むしろ出てきても超えられるのか?という不安さえありました。そうして実際に触れて撮ってみた『SIGMA Art 50mm F1.4 DG DN』はその複雑な感情を吹き飛ばしてくれる期待通りのレンズでした。
「あらゆる設計要素を、最高の光学性能と豊かな表現力に集中して開発。高水準の芸術的表現を叶える」その言葉通りの造り、そしてきっと誰もが納得できる新生『SIGMA Art 50mm F1.4』が誕生したと思います。ぜひご自身の手でまた大口径標準レンズの新基準となるであろう『SIGMA Art 50mm F1.4 DG DN』の実力を確かめてみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff