1.4倍のテレコンバーターを内蔵した超望遠単焦点レンズ『NIKKOR Z 600mm F4 TC VR S』のフォトプレビューをご紹介いたします。600mmと840mmの2つの焦点距離を瞬時に切り換えが可能で、一瞬のシャッターチャンスも逃せないスポーツシーンや過酷な撮影環境でもレンズの着脱なく撮影できます。必要に応じて別売のテレコンバーターと組み合わせたり、クロップ機能を駆使することで最長1930mmの超望遠撮影も可能になりました。それでいて『AF-S NIKKOR 600mm F4E FL ED VR』より約550gも軽く、質量約3260gを実現。国際線の機内に持ち込める大きさのバッグに収納できるという機動力にも優れたレンズになっています。今回は雨の降りしきる中でのカーレースや野鳥撮影を含めた街中スナップの2シーンで撮影をしました。伝統的かつ革命的。機動力も手に入れた超望遠の写りをぜひご覧ください。
今回撮影をしたのはSUPER GTのテスト走行。ご覧の通りウェットコンディション。ドライバーやチームも非常に大変なコンディションではありますが、長いシーズン中にはこのようなレースウイークも当然出てくるはず。雨天時の走行を想定したテストに最適な環境なのでしょう。写真を撮る私たちはレンズにレインカバーを付けたり、あまり濡れないところから撮影をしたりと大変な1日になります。ですが、このようなコンディションでしか撮れない画もあるので、ワクワクしながら撮影に入ります。
第一印象はとにかくこのレンズはAFが滑らかということ。AF駆動用モーターに「シルキースウィフトVCM」を採用しているため、滑らかで高速なAFを体験できるのだと思います。サーキットなどでの撮影ではあまり気にならない部分ではありますが、こちらのレンズはAFの駆動音がほぼしません。望遠レンズはピントを大きく外し、再度ピントを合わせる際にモーター音が大きいですが、こちらのレンズはそういったこともなく、野鳥撮影などなるべく音を出したくない環境で撮影する方に最適なレンズです。
『NIKKOR Z 600mm F4 TC VR S』は重量が約3260gとFマウントの『AF-S NIKKOR 600mm F4E FL ED VR』と比べても550g軽くなっているため、雨が降る過酷な環境での撮影となりましたが、この重量の変化がこのような撮影環境で大きなアドバンテージとなりました。
次はシーンを変えて都内にある野鳥観察が出来る大きな公園にやってきました。少し遠いところにいたサギを見つけ、内蔵テレコンバーターを使用して撮影してみました。これだけ距離があれば警戒心を抱かれることもなく自然体を撮ることが出来ます。SRレンズ2枚、蛍石レンズ2枚、スーパーEDレンズ1枚、EDレンズ3枚を使用した贅沢なレンズ構成で、内蔵テレコンバーターを含めた焦点距離840mmでも高い描写力を発揮してくれました。
湖畔から向かい側を圧縮効果で撮影しました。この距離で木の幹の模様が分かるほど写っていたり、細い木の枝もよく見ればしっかりと一本一本描き分けられていて、『Nikon NIKKOR Z 600mm F4 TC VR S』の解像力を改めて思い知ります。
都内でもよく見かけるハクセキレイ。近づくと素早い走りで距離を取って飛んでいってしまう鳥ですが、とっさに切り替えることが出来る内蔵テレコンバーターを使用して近くで撮影することが出来ました。内蔵テレコンバーター切り換えスイッチは、カメラグリップを持ったまま右手の指で操作できるように最適な位置に配置されているため、いつどんな時でもシャッターチャンスを逃しません。
遠くの被写体に寄って撮れる、というだけでなく圧縮効果で遠くの被写体を浮き立たせるようなカットも超望遠ならではの表現方法です。600mmの超望遠ともなるとその効果も抜群で、私たちの眼では絶対に見ることの出来ない世界がファインダーに映ります。本当に素晴らしい写りを見せてくれるレンズです。
機動力も手に入れた超望遠
解像感とボケ味を両立させた描写力、2つの超望遠域をカバーする機動力。両立の難しい要素をどちらも限界まで突き詰めて、磨き仕上げたという感じがします。NIKKOR史上最高の反射防止効果を誇るメソアモルファスコートや動画撮影にも最適なシルキースウィフトVCM採用の限りなく無音に近い静音なAFなど数々の先進技術を搭載。最高5.5段分の手振れ補正や[SPORT]モード、高い防塵・防滴性能を備えておりプロフェッショナルの期待に応える一本となっています。決定的瞬間を逃さないための今考えられる中での最良の選択肢。ぜひ体感してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff