『Z fc』が登場してからいつかは来るのではないかと妄想したあの日からついに来たか。という思いです。フィルム時代を代表する『FM2』にインスピレーションを受けたフルサイズ/FXフォーマット『Nikon Z f』が登場しました。ペンタプリズム部に採用した1970年代から80年代のカメラと同じNikonロゴ、シャッターボタンや操作ダイヤルの感触など、細部にまでこだわり抜いた一台。伝統的なクラシックデザインでありつつ、『Z9』、『Z8』に搭載されている最新の画像処理エンジン、オートフォーカス性能を兼ね備えています。カラー1種「リッチトーンポートレート」と、モノクロ2種「ディープトーンモノクローム」「フラットモノクローム」のピクチャーコントロールが追加。新機能として最大で約9600万画素の高解像度の画が撮れる「ピクセルシフト撮影」を搭載。Zシリーズで最も優れた8段分の手ブレ補正など、もはや『Z6II』の後継機なのではないかと思うほどの性能が搭載されています。クラシックな外観に最先端の技術が詰まった『Nikon Z f』。ぜひその描写をご覧ください。
『Nikon Z f』で新搭載された白とびを抑えながら豊かな階調で人物の肌を表現するピクチャーコントロールの「リッチトーンポートレート」。秋に咲く桜、コスモスを被写体に使用してみました。これまでの「ポートレート」と比較すると花の赤やピンクの色合いにも変化があります。「リッチトーンポートレート」のほうが深みのある色で、コスモスの色味がより見たままの色になっていると感じました。レタッチして仕上げる際のベース画像にも適しているとのことです。
『Z9』や『Z8』にも搭載されている画像処理エンジン「EXPEED7」によるオートフォーカスと最高約14コマ/秒の高速連続撮影ができる『Z f』。被写体検出では人物(目、顔、頭部、上半身)、犬、猫、鳥、車、バイク、自転車、列車、飛行機の9種類の被写体を検知し、自動的に捕捉・追尾でき、画面の縦約89%、横約96%の範囲をカバーする273点のAFポイントのおかげで意図した構図で瞬間を狙えるので、花の蜜を運ぶ蜜蜂の姿をしっかりと捉えることが出来ました。
『NIKKOR Z 40mm F2』は小型軽量、明るく汎用性が高い画角でありながら自然なボケや適度なシャープさもあります。その小ささや軽さを活かして気軽にローアングル撮影を楽しむことも出来るので『Z f』のキットレンズとしてピッタリです。
今回モノクロに新搭載されたモノクロの新しいピクチャーコントロール「ディープトーンモノクローム」。青の感度が低いという特徴的な階調特性・感色性で青空が暗くなったおかげで、コントラストのある画になりました。角度や光の加減によって変わる建物のニュアンスの描き分けも見事です。
同じく新搭載。影から光へのグラデーションが滑らかで、中間調が豊かで温かく柔らかい印象の「フラットモノクローム」。柔らかい光が入り込む店内を撮影しました。椅子の背面にかかる柔らかい白やテーブルに反射した光のトーン、どれもが絶妙な仕上がりです。
このカットも「ディープトーンモノクローム」で撮影しました。射しこんでくる光をメリハリのある画で仕上げてくれます。
せっかくなので今回は全てのカラー写真を「リッチトーンポートレート」で撮影してみました。グリーン系の色味はあまり変わりはありません。トーンがしっかりするのでRAW現像で追い込みたい方におすすめのピクチャーコントロールです。今回サポートのつもりで持ってきた『NIKKOR Z 24-120mm F4 S』の使い勝手が良すぎてメインレンズになってしまいました。単焦点レンズを付けたくなる『Nikon Z f』ですがこのレンズとの組み合わせもフィーリングがとても良く、ぜひともおすすめしたい一本です。
中間調は暗めながらシャドー部の黒つぶれを抑えてダークトーンを再現した「ディープトーンモノクローム」。青の感度は低くなるという特性と同時に、赤の感度が高く赤が明るくなるという特性があります。撮って出しのカラッと晴れた青空に真っ赤なパラソル。「モノクローム」や「フラットモノクローム」と比較するとまるで反転したかのような違いがあります。少し重めの露出でトーンがはっきりと出るように撮影してみました。
『NIKKOR Z 40mm F2』は肩の力の抜けた画角と言いますでしょうか。『Nikon Z f』とのデザインマッチもありますが、キットレンズとしてまさに最適解。このレンズは開放絞り時に柔らさのある描写は一日を通して良い光を捉え、明るさのおかげで室内でも撮れます。何気ない日常の一コマ、大事な瞬間、いつでも一緒にいるからこそ撮れる瞬間を撮るのに最適な一本です。
伝統と最先端の融合
新しいカメラが登場したのであれば、もちろん性能面を見るべきなのですが。いざ手にしてしまったら、まるでもう自分のカメラであるかのように愛でたくなるカメラでした。『Nikon Z f』が何かの性能を犠牲にしてこのデザインを手にしたわけでなく、今ある最高峰の性能どころか新機能まで搭載させているということにメーカーの込めた思いをヒシヒシと感じます。無理をせず『Z6II』同等の2450万画素機を採用しているのもスナップメインで使いたいユーザーにとって嬉しいポイント。サクサクと撮れるうえにデータの負担も少ないのは長く使っていく中でとても大事なことです。今回『NIKKOR Z 24-120mm F4 S』をメインに撮影したのは装着したときのホールド感が想像以上に良かったことが理由でした。しかも「S-Line」の性能を引き出せる画質の良さはすでに実証済み。せっかくのオートフォーカス性能ですから、スペックをフルに活かした撮影に使うのも良し。クラシックでありながら、そのカメラを使う撮影者には何一つ制限はありません。まるでもうずっと使っていたかのような、誰にとっての「愛機」であり「パートナー」になるであろう『Nikon Z f』。ぜひその手の中に。
Photo by MAP CAMERA Staff
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