909: 柔らかくも凛と『Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount』
2023年12月30日
コンパクトながらフルサイズの40mmとして大口径F1.2を実現した『Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical』がついにRFマウントに登場しました。最短撮影距離は0.3m。電子接点を搭載しているのでExif情報、ボディ内手ブレ補正(3軸)、フォーカスアシスト機能に対応しています。金属製のフォーカスリングにはグリップ力に優れたダイヤパターンを採用しており、拡大してのピント合わせも緻密な調整が可能です。すでに発売されている『NOKTON 40mm F1.2 Aspherical』と最短撮影距離の細かな違いなど基本的なスペックは変わりませんが、フォーカスリングと絞りリングのデザインがRFマウントレンズに寄せたフラットなデザインとなっているので、初めてフォクトレンダーのレンズを使うという方にも馴染みやすいデザインになっていると思います。『NOKTON 40mm F1.2 Aspherical』はこれで4マウント目になるのですが実は担当させていただくのは初めてです。前から使ってみたかったレンズなので非常に楽しみな一本。それではフォトプレビューをご覧ください。
この逆光でこれだけ細かい描写をさせてしまったら当然フリンジも出てしまうだろう。と思いつつもシャッターを切りました。正確に言えば数枚同じカットを撮ったうえでフリンジが少ないカットを選んでいるのですが、それでもここまで綺麗に午前中の光を澄み切った白で描写できるとは。フリンジが出ることを想定したうえでの撮影だったのですが良い意味で期待を裏切ってくれました。
普段は目にも留めない景色でも、光の降り方次第でこんなにも見た目が変わります。地面に溜まる光、建物を照らす光と影、そのなかで一点映える鮮やかな赤。撮影者の小さな感動を取りこぼさず写してくれました。
影の方向があっちにもこっちにも。ビルに反射した光で少し不思議な空間になっていたのでモノクロにしてみました。光の強弱もしっかり描き分けてくれました。気持ちピントを手前に寄せてしまいましたが、F1.2の浅い被写界深度のおかげで立体感も出すことが出来ました。
太陽の光が窓ガラスに反射して、その光が射し込んだビルの一角。硬めな光の違いもうまく表現してくれました。
拡大してみると葉っぱの先端が光って丸ボケになっていたり、開放絞り特有の滲みがわかりやすく現れます。F1.4でもボケの形が変わるので点光源にこだわりたい方は開放絞りがおすすめです。
では開放絞りではシャープではないのかというとそんなことはありません。門の模様や壁の剥がれ具合など細部がよく分かるほど写ります。
中間域・遠景ならフォーカスリングを回す量は少なく、動いている被写体でも意外と捉えられることがあります。と言いつつもこの日は風が非常に強かったので滞空しているところを狙っただけなのですが。マニュアルフォーカスでこういう瞬間を撮れるのって楽しいです。そして楽しいって大事です。
開放絞りより少しシャープに撮りたいときはF1.8。カチッと撮りたい時はF2.8。周辺まですっきりさせたいときはこのくらいまで絞ります。開放時の滲みと比較するとその違いは一目瞭然です。
影の描写がいいレンズというのは例外なく好きなレンズです。柵の影が落ちているカットを前のカットと同じアングルで撮ってしまい泣く泣く外しました。影の描写が好きといっても具体的な言語化は出来ずニュアンスになってしまうのですが・・・「ちゃんと影が写ってる」。そんな感じです。
これだけ薄暗い環境でも高速シャッターを切れるので、波が引いていく瞬間も捉えることが出来ます。こういう状況だと陽の光を反射しているところは嫌な色が出てしまうこともあるのですが、そんなこともなく綺麗に写してくれました。
街灯のシルエットはしっかりしているのに、灯りはぼやぁっと滲む写りがとても「らしいな」と思いました。柔らかさや優しい描写のなかにもしっかりとした芯がある魅力的なレンズです。
柔らかくも凛と
EXIFを意識せずに写真をセレクトしていたら意図的に絞ったカット以外、全て開放絞りの写真になっていました。同じシーンを少し絞って撮ったカットも勿論あるのですが「せっかくのF1.2だし、これだけ写るのならば開放絞りを見せたい」。そのくらい良く写るレンズだということです。撮影時にピント拡大をすると開放絞りでは滲むような柔らかさがありますがF1.6~F1.8に絞るだけでもその滲みが収まります。近接撮影ではその霞むような滲みがよく分かると思うのですが、もう少し整えたいという時や周辺減光が気になってしまう場合は絞るくらいでいいのではないかと思います。そしてマニュアルフォーカス専用レンズはやはりフォーカスリングの操作感が本当にたまりません。リングが非常に滑らかでピント拡大時の微妙なピント調整もしっかりと出来ました。40mmという撮りやすい画角に開放F1.2の明るさ。柔らかく優しい描写ながらも凛とした写り。多くの方が魅了され、こうして色んなマウントで登場するのも納得の銘レンズでした。ぜひお手に取ってみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff