Canonから大口径広角単焦点L(Luxury)レンズ『RF35mm F1.4 L VCM』が発売されました。画面全域での高画質に加え、開放絞り値 F1.4 による大きく美しいボケ味や電子式フローティングフォーカス制御の採用による優れたフォーカス性能を実現しています。そしてなにより注目したいのが本レンズ発表にアナウンスされた「静止画/動画撮影の両方において、プロの高い要求に応える同コンセプトのレンズを拡充する」というコメント。シリーズで統一された筐体のレンズが続いて登場することが記されており、今後登場するだろうレンズの性能を占う意味でも本レンズの描写力は気になるところ。
静かなお堂の中で、頭上の龍の絵にカメラを向けると素早くピントが合焦しました。これまでのRF/EFレンズでも十分静かで素早動きでしたが、本レンズより搭載されたVCM(ボイスコイルモーター)では、より滑らかで静粛性の高い動きが確認できました。そこまで明るくない室内でも素早く捉えてくれます。動画撮影が開発の念頭に置かれていることがよくわかる動きでした。本レンズに搭載されている絞りリングは現在動画撮影時のみ使用できる仕様となっていますが、今後発売予定となっている「EOS R1/EOS R5 Mark II」では静止画の撮影でも絞り数値の設定が可能となる予定です。
開放F1.4の柔らかいボケ味と木の幹の立体感は凄いの一言。このカットを撮ったときは陽が射す前の薄曇りの天気だったのですが、そんなことをものともしない主題を浮き立たせるような描写は大口径Lレンズならではの納得の高画質です。
非球面レンズ2枚、UDレンズ2枚を効果的に配置したレンズはコントラストの高いクリアな画を描いてくれました。鮮やかな空の色は撮影時の日差しの眩しさを忠実に再現してくれています。開放絞りからシャープですが、絞ることで遠景もきっちりこなすことが出来ます。
最短撮影距離は28cm。35mmというやや広めの使いやすい画角で目の前の被写体を自在に切り取ることができます。開放絞りでも滲みが少なく感心しました。
ガラス越しでもハンドルの革やメタルの質感を忠実に描いています。ロゴまでしっかり認識できる高い解像力も見事です。
F5.6まで絞ってみました。ピントは中央に置いていますが、手前から奥まで解像してくれています。色の濃淡、質感の違いもしっかり描き分けてくれました。
蓮池を眺める人の脇に鳩が飛来。咄嗟にカメラを向けたにも関わらず素早く捉えてくれました。スナップでも確認できる素早いAFは動体の追従でも頼りになりそうです。そしてこの人物の浮き立ち方にも驚きました。浅い被写界深度が背景を分離させるでの、動画でも主役がしっかり引き立つことでしょう。
口径Φ67mm、重さ約555gと「EF35mm F1.4L II USM」より小型軽量化させているので、電車内でもサッと取り出して撮影が可能です。金属に反射する光の描写も見事です。
コーティングにASC(Air Sphere Coating)を施し、フレア・ゴーストを大幅に低減してくれる頼もしさがあります。よほど強い光源を入れない限りはフレア・ゴーストも発生しません。移動中の電車の中からすれ違いの電車を狙いましたが、汚れた窓に逆光と悪条件が重なってやっと解像感が落ちる感じです。これまでの写真からは解像力の高さばかり目立っていましたので、工夫さえすれば柔らかい描写もできるレンズと言えます。
F2.5まで絞り込むことで周辺減光はほぼ改善されました。歪曲収差はボディ内で収差補正をONにすることで全く気にならないレベルになりますので、撮影時には常時設定ONをおすすめいたします。
引き続き少し絞って波しぶきなどの解像を見てみました。開放絞りではシャープながら立体感のある描写やボケを、絞りではさらなる鮮鋭感を楽しむことが出来ます。どう撮っても画にしてくれる素晴らしい35mmでした。
最高峰の35mm
Photo by MAP CAMERA Staff