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NIKKOR Z F1.2シリーズ3本目、主役を美しく際立たせる柔らかなボケを描く開放F値1.2の大口径35mm単焦点レンズ『Nikon NIKKOR Z 35mm F1.2 S』が登場しました。15群17枚のレンズ構成のうちEDレンズ3枚、ED非球面レンズ1枚、非球面レンズ3枚を採用した高度な光学設計により、解像感と収差の最適なバランスを実現しているとのこと。「メソアモルファスコート」、「ナノクリスタルコート」、「アルネオコート」により優れた逆光耐性でゴーストやフレアーを最小限に抑制します。「メソアモルファスコート」はNIKKORレンズ史上最高の反射防止効果を持つコーティングでNIKKOR Z F1.2シリーズとしては初の採用です。この3つのコートが同時に使われているのもおそらく今回が初となります。そして僅かではありますがNIKKOR Z f1.2シリーズの中では最も軽量なモデルとなりました。「Z8」に装着して撮影してまいりましたのでぜひご覧ください。
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規則的に植えられた葉牡丹。真上から撮影したのですが射し込んだ光のおかげで奥行きと立体感をしっかり感じることの出来る写りになりました。葉牡丹の淡いピンクやグリーンからパンジーのパッキリとした色味を忠実に再現してくれています。
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手前、奥それぞれに枝を配置して中間に置いた梅の花をどう彩ってくれるのか撮影してみました。開放F1.2のボケ味は雑味がなく、立体感のある写真になっています。ピント面までの透き通った写りが見ていて、とても気持ちが良いです。逆光性能も非常に優秀で、かなり大胆に逆光で撮影したのですがコントラストの低下などもなくクリアに写すことが出来ました。
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移動中に見つけた古民家の木彫り。玄関から入り込む光に照らされていました。ピント位置は木の枝が伸びていく辺り。割れ目のような細い線の輪郭をはっきりと写してくれました。艶のある色と陰影のつきかたに見惚れた一枚です。背景にある窓の光もいいボケ感で奥行きを伝える役割を果たしてくれました。
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太陽が雲間を抜け、影がなくなる寸前のタイミングで撮影しました。周辺減光は絞るごとに改善されていてF2.8くらいから明確に変わり、F3.5~F4くらいからほぼ気にならなくなっていきました。瓦屋根を拡大してみると絞り込む必要性をあまり感じさせないほどすでに解像感は非常に高いです。
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少し一休み。日当たりのいい席に座ることが出来たのでクロワッサンを撮ってみました。座ったままで上下左右の空間を作って撮ることが出来るのは画角の広い35mmだから出来る芸当です。そして肝心の写りですが、まずファインダーを覗いた時点で思わずニマっとしてしまいました。クロワッサンのパリッとした層の質感がしっかりと出ていますし、木製テーブルや石のプレートのザラザラした質感の違いも明確に描き分けてくれていて、手に取れてしまいそうなほどリアルな写りです。自然光だけでこれほど仕上げられるのかと驚きました。
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限られた光のなかでも最高の写りを見せてくれます。ブランケットの柔らかさとザラっとした床の質感をしっかりと描き分けてくれました。
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黄色いチェアの光が当たった縁の部分は立体感があって素晴らしい写りです。『NIKKOR Z 35mm F1.2 S』で撮影していると35mmの画角でこの距離感でこれだけ立体感が出るのか、と驚かされてばかりです。50,85mmも素晴らしい立体感が出ますが、準広角でも同じような体験が出来るとは思っていませんでした。
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5人のフラダンサーのフィギィアが並んでいて、その真ん中にいる一人に焦点を当てました。これだけごちゃごちゃと要素があるなかでも、その一人にピントが合っていることがはっきりとわかる立体感が素晴らしいです。
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奥行きをしっかり表現できているからこそのカット。ピントを合わせた中央のシルエットから、なだらかにボケていきます。
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水槽越しではクラゲの傘の質感や触手の繊細さなどディテールを出すのが非常に難しいのですが、解像感の高くクリアな仕上がりです。水泡や反射したライトが丸ボケとなり、神秘的な世界を演出してくれました。
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たまたま、というよりはおそらく人が落としていった食べ物を狙って来ていたのでしょう。とても近い位置に鳥が飛んできました。ダメで元々、しゃがんでみたところ逃げなかったので撮影しました。分かりにくいですが、日没後のカットです。ISO感度を上げすぎることなく撮影できたのは明るいレンズのおかげです。難しいシチュエーションでしたが、クチバシのディテールや羽毛の細かな模様をしっかりと写してくれました。
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夕暮れの青みがかったトーンと街や灯台のオレンジ色の灯り。開放絞りでありながら遠景もシャープに写してくれます。雲のディテールも素晴らしい。僅かな光さえあれば、ISO感度を上げずに夜間撮影できるのも頼もしいです。
ありのままに光を描く
シャープネスとソフトネスのベストバランスの実現。このレンズを使ったあとに感じたことがその言葉通りでした。毎回撮影する中ではなるべく様々な質感の被写体を見つけて撮るようにしています。全てにおいて理想的な結果を得るというのは非常に難しいことなのですが、『Nikon NIKKOR Z 35mm F1.2 S』はその一つ一つを限りなく理想形に近い形で実現してくれました。時にはその予想すら超える画さえも。ファインダーの中で見つけたその光をありのままに描くこのレンズにきっと虜になるでしょう。ぜひ一度使ってみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff