2023年のKasyapa3本目は2本目と同じく新時代の超軽量超望遠レンズ『Canon RF1200mm F8L IS USM』のご紹介です。「EF600mm F4L IS III USM」の光学系を受け継ぎ、なんと1000mmを超える焦点距離に重量約3,3kgを実現させました。ちなみに1993年に登場した「EF1200mm F5.6L USM」は重さなんと約16kgで当時の価格は980万。伝説級のレンズでお目にかかったことはありませんが、もし手にする機会があれば比較をしてみたいものです。
重さも価格も大幅減。しかし中身はそれ以上のボリュームで進化。『Canon RF1200mm F8L IS USM』を肩に背負いこんなに歩いて撮るようなレンズなのか、自問自答を繰り返しながらあちらこちらを練り歩きながら撮影してまいりました。ぜひご覧ください。
野生動物を撮りに遠出…とはいきません。筆者としては動物園も1200mmという超望遠で撮影したことがなかったため、新たな扉が開かれるのではないかとワクワクしながら行ってまいりました。舎奥で座りながらくつろいでいるチンパンジーをパシャリ。「エクステンダー RF2X」を装着した状態での開放絞りですが、素晴らしい解像力を見せてくれました。エクステンダーを装着していてもバシバシとAFが決まるのもとても気持ちが良いです。
コンゴウインコの眼をAFがしっかりと捉えてくれました。エクステンダーを装着した状態でも解像感がありますが、毛の生え方までわかるレンズ本来の鮮明な解像感はさらに衝撃的です。約3.3kgという超軽量化により手持ち撮影も不可能ではなくなりましたが、筆者の筋力ではやや不安があったため何か支えになる場所を見つけながら撮影をいたしました。
航空機を撮りに空港から少し離れたスポットに。頭上を通りぬけていったヘリコプターを手持ちで撮影しました。レンズの全長が長いため強い風が吹くとヘリコプターが画面から外れてしまうほどにあおられましたが連写しつつなんとか喰らいつきました。とっさに手持ちで1200mmを振り回していましたが、重さ自体は実はそこまで辛くありません。それよりもフード装着時の全長の長さの感覚が掴めるまで慎重に扱ったほうがいいでしょう。思いがけないところに引っかかったりするので慣れるまで動作はゆっくりゆっくり、をおススメいたします。
1200mmで交通標識を撮るとこうも距離感がまるで分からなくなるのかと面白くなりました。1200mm超望遠の圧縮効果がよく分かる1枚です。
すぐ近くの河原をウォーキングする方から大きな橋を挟み富士山までギュギュっと。実際に地図で位置関係を調べてみると確かに線で繋がっていて、撮影地点から富士山までは約95kmの距離がありました。
望遠単焦点らしい素晴らしいピントのキレ味です。実際にはそれほど高低差があるわけではありませんが圧縮効果により迫力のある画になりました。
エクステンダーを装着していないときにスズメの群れを見つけたのでクロップ機能を使ってとっさに撮影してみました。クロップ機能とエクステンダーを合わせれば約3,840mmの超超望遠撮影も可能という、実に夢が膨らむ話です。
「すごいレンズ持ってる」という声はもちろん施設に設置してある望遠鏡かと思った子供が嬉しそうに駆け寄ってきたり、とにかくビジュアル的に目立つレンズでした。固定砲台のようなイメージを持っていた『Canon RF1200mm F8L IS USM』でしたが撮影日の歩数を見ると約20,000歩を歩いて撮影出来たりしたので、重さで行動を制限されることもないことを実感しました。
新時代の超望遠
開放の明るさが違うとはいえ20数年前には約16kgだった1200mm超望遠が3.5kg以下のレンズとして登場するということの技術の進歩に感動を覚えます。実際に手に持ってみるとその外観と軽さのギャップに誰もが驚くことでしょう。レンズを装着したまま移動するのは困難だと思っていた筆者も最終的には三脚座を掴んでわが子を抱くような感じで歩き続けていました。空港・港湾での監視といった用途も想定されているようで、この高解像力と1200mmの超望遠があればとても容易なことであると感じました。
「1200mm超望遠+機動力」は今まで見たことのない瞬間を切り取れる新しい一手となりそうで、超望遠の歴史にまたしても名を刻む一本になることでしょう。おいそれと手に入れられるレンズではないからこそ、その存在はとても貴重で価値のあるものになります。ぜひ超望遠表現の一つの極みを手に入れたい方に。