シルイのアナモルフィックレンズに新しい焦点距離、35mmが加わりました。既に発売されている「SIRUI 50mm F1.8 Anamorphic」に次ぐシリーズ第二弾。まず目に入るのが、写真用レンズでは聞き慣れない”アナモルフィック”と言うワード。これは、映画用の特殊なアスペクト比「シネマスコープ」で撮影するために開発されたレンズの総称です。映画用レンズと聞くだけでワクワクしますが、金属鏡胴の質感、ヘリコイドの感覚など、撮影前のフィーリングも素晴らしい印象です。では早速、その写りがいかなるものか、確かめていきましょう。
アナモルフィックレンズで撮る
アナモルフィックレンズは、映像を横方向に圧縮して記録することでフィルムやセンサーの記録面積を無駄にする事なく、よりワイドな映像を得られるように設計されています。映像の圧縮される割合はレンズの規格によって変わりますが、今回使用した『SIRUI 35mm F1.8 Anamorphic』は横方向に1.33倍圧縮して記録されます。
圧縮された映像を元に戻す作業は「Adobe Premiere」「Final Cut」「DaVinciResolve」など一般的な編集ソフトで対応できます。正しい縦横比の映像に戻すことで、通常の35mmレンズと比較して、水平視野を33%拡大でき、26.3mm相当の画角となります。(フルサイズ換算)
アナモルフィックレンズで撮影すると何気ない一コマも作品に変えてくれる雰囲気を持っています。もともとは1950年代、当時普及してきた家庭用テレビによって減少する観客に歯止めをかける対策の一環として、よりワイドな画面が開発された背景があります。
[twenty20 img1=”60000047064″ img2=”60000047063″ offset=”0.5″ before=”最短撮影距離(0.85m)で撮影” after=”無限遠で撮影”]
ボケ味を確かめるため、同じ画角で最短撮影距離から無限遠までフォーカスを送ってみました。シネマスコープ自体は通常レンズで撮影しても映像の上下をカットすることで再現できますが、特殊な光学系が生み出す楕円形のボケ味は他のレンズでは味わえないものです。
強い光源が入るとアナモフィックレンズ特有のフレアが発生します。一般的なレンズと比べてフレアが出やすい傾向ですが、このフレアこそアナモフィックレンズで撮影する醍醐味の一つ。こういったレンズのクセも知った上で、画作りに是非とも活用してみてください。
もちろんボディ性能の良さもあるのですが、夕日の諧調表現やビル群のシャドー部も完全に潰れてしまうことなく粘っています。中央に見えるスカイツリーの鉄骨のラインもきっちりと出ており、シャープさも十分です。
本レンズはマイクロフォーサーズマウント用。動画では「Panasonic GH5S」に装着して撮影しましたが、別売りのアダプターリングを取り付けることにより「ソニーE」「キヤノンEF-M」「ニコンZ」マウントのカメラに対応します。マウント毎にレンズを買い替える必要が無く、マウント交換も簡単に行えます。
何を写しても新鮮に見える楽しさ
いかがでしたでしょうか。写真用のレンズでは得られない特殊な画角は何を撮っても新鮮でシネマティックです。レンズの特性上、撮影後の後処理が必要となりますが、こういったレンズだからこそ使いこなしの面白さがあると思います。これまでのアナモフィックレンズと比べて入手しやすい価格設定も大変魅力的。動画撮影の楽しみを更に増してくれる、手にしたい1本と言えるでしょう。
Movie by MAP CAMERA Staff