“Cinema Line”誕生
デジタル技術の目覚ましい進歩により、新たなカメラカテゴリーとして誕生した「デジタルシネマカメラ」。いち早くこのジャンルを開拓し、業界を牽引してきたSONYから新しいコンセプトラインが誕生しました。その名も「Cinema Line」。第一弾となる『FX6』はシネマカメラとスチルカメラで培った技術を結集させた、まさにハイブリッド。同社のシネマカメラ『VENICE』『FX9』に次ぐ3機種目のフルサイズ搭載モデルは、どんな映像を写してくれるのか。期待が高まります。
今回はその『FX6』を携え、海沿いの街へ撮影に出かけました。短いスケジュールではありましたが、まずはファーストインプレッションを作例と共にお届けしたいと思います。
SONYのシネマカメラと言えばプロフェッショナル向けのハイエンド機であり、一般には手が出ない高嶺の花でした。当然ボディサイズも大きく重く、金額的にも非常に高価なもの。そんな中『FX6』はフルサイズセンサーを搭載しながら、デザイン、スペック、価格、新時代の到来を感じさせてくれます。使用した第一印象は描写力・使用感・機動性、どれも「素晴らしい」の一言に尽きます。
カメラ側面の操作ボタンは直感的に設計されていて、この手の業務機に慣れていない筆者もすぐに扱うことが出来ました。やはり長年業務機を作ってきたメーカー、このあたりは「さすがSONY」という印象で、徹底的に作り込んでいるのだと感じました。
今回の撮影機材
撮影レンズはZEISS Loxiaシリーズを使用。小型・軽量でありながら描写力も優れ、数本携帯しても苦になりません。絞りリングはクリック感をOFFにすることもできるので動画撮影にも配慮された設計となっています。『FX6』の外観紹介はこちらをご覧ください。
“S-Cinetone”で撮影
今回の撮影ではS-Cinetoneで撮影を進めました。S-Cinetoneは、FX6のデフォルトのビデオガンマに設定されており、CineAltaカメラ VENICEの開発を通じて得られた知見を元に、人の肌を描写する際に使われる中間色の表現力を高めたルック。色あいはよりソフトに、ハイライトの描写は被写体を美しく際立たせる自然なトーンです。
人によって感じ方の違いはあると思いますが、従来のビデオガンマに比べてよりナチュラルになった印象です。階調は実になめらかで、ハイライトからシャドーまで素晴らしい設計。光量が多い時でも少ない時でも、映像に「ヌケ」の良さを感じます。このルックは、クリエイターからの「カラーグレーディング不要でシネマルックが得られるようにしたい」と言った声を受け開発されたそうです。
次は夕景のカット。『FX6』を使用して感じたのが、解像感と階調表現の豊かさです。解像感は使用したレンズ性能が良かったということもありますが、動画でここまで描写してくれるとは思いませんでした。もちろん、掲載画像は全て動画からの切り出しです。
最後は日が沈み、紅く染まった空が印象的だったカット。訪れる方は足を止めて風景を眺めながら思い思いの時間を過ごしていました。思いのほか日の入りが早く、もう少し様々な角度で撮影したかったというのが本音ですが、刻々と移ろいゆく景色を収める事が出来ました。こういった再現の難しい画さえもしっかりと成立させてくれます。
広ダイナミックレンジ
本機の特徴の一つは15ストップを超える(S-Log3使用時)ダイナミックレンジを扱えること。同じシチュエーションにおいて、メインで使用した『S-Cinetone』と、ポストプロダクションの工程で幅の広い階調表現を実現する『S-Log3』で撮影してみました。それでは実際に撮影したカットを見て行きましょう。
2つのカットを見比べると全体の見え方が異なることが判ると思います。描写の難しいシーンですが、S-Log3では全体の階調を均一に記録しています。眠い画ですが、ダイナミックレンジが豊かだという証でしょう。このレンジの広さはグレーディングで仕上がりを追求したい方にとっては頼もしいのではないでしょうか。日差しの強いシーンでしたが電子式可変NDフィルター(1/4ND~1/128ND)が撮影をサポートしてくれました。
「機動性」と「描写力」を合わせ持つ、新世代のシネマカメラ
短期間のロケでしたが『FX6』を使用してみて、大きさ、堅牢性、画質、機能など、全てが動画撮影のためだけに考えられていると実感しました。SONYの動画機の中でも、最も汎用性が高く幅広い層に支持される、これからの映像制作においてメインストリームを担うカメラになるでしょう。既にFS7/FS5シリーズを使用しているユーザーはもちろん、一眼レフ・ミラーレスからステップアップを考えるユーザーにも自信を持っておすすめできる1台に仕上がっています。このカメラを使って世界中のクリエイターたちがどのような作品を生み出してゆくのか、想像しただけでワクワクします。
動画新時代を切り拓く“Cinema Line”、ぜひそのポテンシャルの高さを感じて頂ければと思います。
Movie by MAP CAMERA Staff