930:F2.8標準ズームを軽快に楽しむ『SONY FE 24-50mm F2.8 G』
2024年04月21日
まさに新世代の標準ズーム、といったところでしょうか。焦点距離は広角24mmから標準50mmまで。思い切って望遠側を抑えることで取り回しのよい最大径74.8mm×長さ92.3mmのコンパクトさに約440gという軽量さを実現させた開放値F2.8の大口径標準ズームレンズ『SONY FE 24-50mm F2.8 G』が登場しました。4枚の非球面レンズと2枚のED(特殊低分散)ガラスを効果的に配置することで、色収差などの諸収差を低減し画面周辺まで高い解像性能を実現。「α9 III」の最高約120コマ/秒の高速連写にも対応するトラッキング性能や、動画撮影時の高性能手ブレ補正「アクティブモード」にも対応しています。「コンパクトで明るくよく写るズームレンズが欲しい」という多くのカメラマンのニーズに応えるべく、望遠側の焦点距離を50mmに設定したことは開発側としても非常に決断に悩まれたのではないかと思います。ジャイアントキリング?いや、これは新しい可能性を示してくれる新世代といったほうが適切な気もします。挑戦的でありながら誰にも優しいコンパクトズームレンズ。どんな写りを見せてくれるでしょうか。早速撮影にいってまいりました。
中間域でこの解像感、立体感、ボケ感を出せるのですから、G Masterを襲名してもいいんじゃないだろうかと思うくらい良い写りです。高画素機「α7C R」の性能を遺憾なく発揮しています。
水面のとろっとした波紋の様子を驚くほど忠実に再現しています。このような描写ができるレンズは経験上「非常に魅力的なレンズ」に分類されます。錦鯉の色もスッキリとしたナチュラルな表現がとても好印象です。
35mm画角での開放絞り。実はサボテンの手前に一枚ガラスが挟まっているのですが、そんなことを感じさせない非常にクリアな描写です。24mmから50mmまでの焦点距離を単焦点レンズに遜色ないレベルで取り回しができるパフォーマンス抜群の一本だと思います。
広角端開放絞り、最短撮影距離で撮影。オートフォーカスで0.19m、マニュアルフォーカスではさらに0.18mまで接近することが出来ます。本カットはマニュアルフォーカスで最短撮影距離に設定したままタンポポに寄りきってみました。AF/MFを瞬時に切り換えられるフォーカスモードスイッチも搭載されているので簡単に操作の切り替えが可能です。またマニュアルフォーカス時の繊細なリング操作にもレスポンスよく反応する「リニア・レスポンスMF」を搭載しており、緻密なピント合わせが簡単に行えます。動画撮影も想定しているとはいえ、このコンパクトなレンズでオートフォーカス主体ではなくマニュアルフォーカス時の操作性まで気を配ってくれているというのは嬉しい限りです。
こちらはほぼ最短撮影距離で少し絞ってみました。F4でもボケはきれいなまま、周辺減光はかなり改善されます。ピント面は開放絞りと比べるとやはり厚くディテールをより精細に解像してくれました。
雨の日のカット。室内ですが大きな窓から入ってくる光を頼りに撮影しました。全体のしっとりした感じを収めつつ、水滴の一粒一粒の立体感もしっかり出ています。最短ではないですがかなり寄った状態でこの写りです。周辺がざわつくこともなく、綺麗にまとまってくれました。
テレ端開放絞り。筆者がとても好きな写りをしてくれました。奥側の蛇口にピントを合わせて撮影しましたが金属の硬い質感とツルンとした光沢感がしっかりと出ています。背景も綺麗にボケてくれました。望遠側が短いので一本で両役をこなすのは少しハードルが高いかなと考えていたのですが全くの杞憂。改めてGレンズのクオリティの高さを思い知りました。
24mmあれば室内でも沢山の情報量を詰め込みスケールのあるカットを撮ることが出来ます。歪みらしい歪みもなく非常に優秀です。
終わりを迎えた東京の桜を少し絞って広角端で撮影。ここまで細かい花びらだと実際にはどう画になっているかはその場ではよく分かりません。ただ写っていることを信じてシャッターを切るのみですが桜吹雪をしっかりと収めてくれていました。
また天気の悪かった日へ。実はこの日昼過ぎから晴れるという天気予報を信じて海辺にきたのですが晴れ予報がどんどんとずれ込む展開に。干潮のあいだに雨上がりの空をこのリフレクションで撮ろうと企てていたのですが見事に敗れました。まあそんな日もあります。気を取り直して「α7C R」のバリアングルモニターで構図を確認しながら水面ギリギリまでカメラを近づけて撮影しました。こういう撮影をするときにも、小型であるというメリットが活きてきます。何度か撮り直していましたが腕が疲れることもブレることもなく撮影できました。
広角端が24mmというのが魅力的。28mmも日常や旅先の一コマを撮りきるのに十分な広さがあるのですが、24mmの広さは想像していたフレームをもう一枠突き抜ける感覚があります。その想定外が「感動」になるか「しっくりこない」になるかの確率は半々なので24mmの画角だけで撮影するのはなかなか怖くて出来ません。だからこそズーム域に24mmがあるというのは嬉しいです。
F2.8標準ズームを軽快に楽しむ
マジックアワーの繊細な色合いまで美しく描くズームレンズ。テレ端が50mmということで最初の印象は短いのでは?と思ったのですが実際に使ってみて本当によく写るレンズだということが分かったあとはまた考えが変わってきました。基本はこのレンズで撮影しながら中望遠~望遠が欲しいとき用にサブレンズを携帯する。そうすることで普段のフットワークが軽くなるだけでなく、表現力を大事にしたい望遠レンズにもこだわれるので、かなり理想的な組み合わせなのではないかと。「24-70mmF2.8」と望遠レンズ一本と考えるとヘビーですが『SONY FE 24-50mm F2.8 G』となら多少大きいレンズでもカバンに入れてもそこまで苦になりません。先日発表された「FE 16-25mm F2.8 G」などのコンパクトな組み合わせというのも夢が広がります。大は小を兼ねると言いますが、大きければその分重いし気力も必要になります。軽かったり小回りが利くからこそ、行こうという意志やたどり着ける場所もあります。ありそうで今までなかった小さいF2.8ズームレンズ。新しい撮影スタイルをこのレンズと探してみるのはいかがでしょうか。
Photo by MAP CAMERA Staff