
ついに登場したM型ライカの最新モデル『ライカM10』。通常のデジタルカメラならば新しい機能を追加するのが『進化』かもしれませんが、ライカM10は純粋に写真を撮影するカメラとして、動画機能を無くし、ボタンの数も減らし、よりシンプルで直感的に操作できるカメラへと生まれ変わりました。そして一番のポイントと言っていいのがボディのサイズ感。“ドリームサイズ”と呼ばれていたM型フィルム機とほぼ同じ厚みを実現した事により、手にピタリとフィットする『理想のMデジタル』となっています。 今回はそのライカM10についての疑問や今後の展開について、ライカカメラ社のグローバルディレクター ビジネスユニット フォトを務めるステファン・ダニエル氏にインタビューを行いました。 なぜ名称にナンバリングを復活させたのか?新たなCCDセンサー搭載機は登場するのか?など、気になる質問もしてきましたので、ぜひ最後まで御覧ください! |


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本日は1月28日についに発売された『ライカM10』についてお話を伺わせていただきます。よろしくお願いします。 さて、世界が注目するライカM10ですが、プレスリリースの言葉を借りれば、ライカM10のボディサイズは“ドリームサイズ(夢のサイズ)”と形容されています。この夢の実現に向けたプロジェクトはいつごろから始まり、進行していたのか。また、実現にはどのような技術をもちいたのでしょうか。 |
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実際の開発期間は約2年前からスタートし、その6~9ヶ月前からユーザーからの意見を集めたり、コンセプトをまとめたりなどの準備をしてきました。ですので、ライカM10は完成するまで約2年半~2年9ヶ月の期間をかけて開発しています。 |
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通常ならば小型化というと「より小さく」というのがテーマで、ボディサイズも技術面やコスト面と折り合って開発するのだと思いますが、ライカM10に関しては「M型フィルム機の大きさ」という偉大な存在を目標に作られたのでしょうから、相当な苦労があったのだろうと思います。 私も“ドリームサイズ”を待ち望んでいた一人ではあるのですが、ボディサイズだけではないライカM10の魅力や、その他の注目すべきポイントも教えていただいてもよろしいでしょうか? |
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ライカM10はボディサイズがM型フィルムカメラと同様になったことが大きな特徴ですが、サイズだけでなく、M型フィルムカメラを使っているようなフィーリングや操作感、ハンドリングを追求して作られています。 |
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今回ライカM10が小型化したが故に、搭載が見送られた機能や、できなかった事などはありましたか? |
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特にそういった機能は無いですね。想定していた機能は実装できているのではないかと思っています。 どちらかというと、今回は何かを加えるよりも機能を減らすことを想定していました。 “La perfection est atteinte, non pas lorsqu’il n’y a plus rien ὰ ajouter, mais lorsqu’il n’y a plus rien ὰ retirer.”(完璧がついに達成されるのは、 何も加えるものが なくなった時ではなく、 何も削るものが なくなった時である。) という言葉がありますが、今回のライカM10はそのようなコンセプトで生まれたカメラです。 |

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実機に触れてみて、ファインダー倍率を0.68から0.73へと変更したことにより、ピント合わせなどが従来よりも容易になったと感じます。今回のファインダー変更はメーカーとしてはどのような意図があってのことだったのでしょうか? また、電子ビューファインダーのビゾフレックス(Typ020)を使える事も魅力の一つです。現在の高精細なEVFファインダーは、撮影画像そのままの画角でフレーミングできることや、ピント精度を極限まで詰められますので、『ライカSL』をはじめとするプロフェッショナル機でも多く搭載されてきています。 野暮な質問かもしれませんが、ライカMが「レンジファインダー」へこだわり続ける事の意義と、今後「レンジファインダー機」のさらなる技術革新があるのかを教えてください。 |
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もちろん我々は今後もM型カメラに関してはレンジファインダーこだわって作っていきます。その理由の一つはM型カメラの根幹に、『Messsucher』(ドイツ語でレンジファインダー)であることだと思っています。 また、M型の撮影スタイルの大きな特長として、撮像フレームの外側まで見えることにより、フレーム外から入ってくる被写体の動きを予測して撮影できます。これはレンジファインダーでなければできないことです。 今後のレンジファインダー技術ですが、ライカM10は今我々のできる技術を最大限に投入したカメラと言えます。技術の革新に終わりはありませんが、ライカM10では理想の実現に向けて大きな改良をしましたので、今のところ更なる改善や改良については未定です。そのくらい今回のライカM10ではやりきりました。 |


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続いてはライカM10の描写に関しての質問なのですが、素晴らしい色表現と切れ味、階調表現に弊社の試写担当者も「今までのどのカメラとも違う」と驚いていました。 ライカM10発表において「専用に新設計されたCMOSである」と発表されましたが、世間的にライカSLに搭載されたものと同一、あるいはライカQと同一ではないかと噂もされています。具体的にライカSLや、ライカQのセンサーとは何がどう違うのでしょうか?そして描写にはどのような差があるのでしょうか? |
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ライカMデジタルに搭載されているセンサーと、他のセンサーとの一番の大きな違いは、今までの数あるMレンズを快適かつ最適に使用できるように、カメラ側がレンズに合わせるように設計してあるところです。 本来デジタルカメラのセンサーというものはセンサー面に対して光がまっすぐ入ってくる事が理想的なのですが、Mレンズは小型なので光の入射角度が深いんですね。そのため、このMレンズの特徴に合わせたセンサーを専用に開発しています。 もちろんライカSLでもMレンズの性能を引き出せるように作られていますが、ライカSLのセンサーはライカSLのレンズを使用して最高の性能を発揮するように設計されています。それと同じように、ライカMデジタルのセンサーはMレンズの性能を最大限に引き出せるように設計されているというのが大きな特長です。 |

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初めてライカM10という名称を聞いた時、復活したMのナンバリングに喜びと「なぜ?」という疑問を持ちました。 それはライカM(Typ240)の発表時に「 “M10” “M11" “M12”と続くナンバリングのインフレをやめて、Mデジタルは『M』とし、製品の違いを『Typ***』という番号付けで識別する」というコメントを記憶していたからです。 今回の『ライカM10』への回帰にはどのような理由・意図があったのでしょうか? |
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たしかに、ライカM(Typ240)を発表した時に「これからはMでいきます」と言いました。それはTyp240というのは隠しナンバーのようなもので、皆様には「ライカM」として呼んでいただく事を期待したからです。 しかし、実際には「M(Typ240)」や「M240」など、まるで240が商品名やモデルナンバーのように呼ばれるようになりました。それは我々が意図していた考えとは違い、狙いが上手く行かなかったのだと思っています。それならば、「M10」の方が「Typ240」と呼ばれるよりも響きがいいですから、新モデルで親しみやすいMのナンバリングに戻し、「ライカM10」という名前にしたのです。 |

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今回ライカM10が発売となりましたが、当面はライカM(Typ240)シリーズと併売になるかと思います。 2台の明確な違いだと動画機能の有無が挙げられるかと思いますが、その他の部分で双方それぞれにはどのような違いと優位性があるかを教えてください。 |
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まず、ライカM(Typ240)は、一台で様々な撮影スタイルに対応出来るカメラです。動画撮影はもちろん、『マルチファンクション ハンドグリップM』を使用する事で大型ストロボを使用した撮影もできますし、USB端子もありますので、スタジオ撮影をはじめとする現場などに柔軟に対応できます。 ライカM10は他の機材、例えば一眼レフのようなカメラと並行して使用すれば、よりピュアに撮影を楽しむ事のできるカメラだと思います。 ライカM10を例えるなら「非常に良く切れるナイフ」のようなもので、そんなに色々な事には使えませんが、得意とする条件で使用すれば素晴らしい結果を残せることでしょう。そういった尖ったキャラクターの商品ですね。 |
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なるほど。 では、ライカM10で省かれてしまった動画撮影機能ですが、今後ライカ製品を用いて動画撮影をしたいと考えるユーザーには、どの機材をおすすめすればよろしいでしょうか。 |
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ライカM(Typ240)が登場した際に、カスタマーサーベイなどでお客様からのいろいろな意見を聞いたのですが、 割と多くのお客様が「M型ライカに動画は要らない」とおっしゃることが多かったのです。中には「動画機能が気に入らないから、ライカM(Typ240)は買わなかった」とおっしゃる方もいました。そこで今回ライカM10には動画は不要だと判断し、機能を省きました。 今は動画撮影機能を搭載したライカSLもラインナップしています。ライカSLは動画撮影に必要な端子等もついていますし、純正アダプターを使用してMレンズも使うことが出来ますから、もしMレンズで動画をとりたい、という方がいればライカSLを使っていただくのが一番良いと思います。 |
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ピーター・カルベ氏が作ってみたい「リバイバル・レンズ」とは 先ほど、ラインナップの充実という点について話題になりましたが、近年ライカでは「ズマロン M28mm F5.6」「タンバール M90mm F2.2」の様な、かつてのレンズをリメイクして世に出しています。過去に作られたレンズを現代に作り直すということは難しい部分があるのでしょうか? ... | |
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日本国内のメーカーはF1.4をはじめ、時にはF1.2やF0.95などの高性能な大口径レンズを発表しています。明るさへのこだわりが強くあるような印象を受けますが、ライカではこの「プライムレンズシリーズ」の開放F値をF2.0としました。 先のプレゼンテーションでもMレンズの「ズミルックス F1.4」に劣らないボケ感や画質のお話がありましたが、ライカにも... | |
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前回までのライカカメラ社の光学設計マネージャ、ピーター・カルベ(Peter Karbe)氏のプレゼンテーションを元に、同氏へのインタビューの模様をお届けいたします。 できるだけレンズをクリーンに作る 「ライカSL」で「アポズミクロンM75mm F2.0 ASPH.」「アポズミクロンM90mm F2.0 ASPH.」を使って感じたのですが、他の2,400万画素のカメラと比較... | |
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前回に引き続き、ライカカメラ社の光学設計部門マネージャであるピーター・カルベ(Peter Karbe)⽒のプレゼンテーションをお届けいたします。 高い信頼性を追求 続いては、製品クオリティの信頼性という観点から魅⼒をお話しします。高性能なレンズをつくるためには、光学設計において様々な工夫が可能ですが、一方で安定した一定品質の製品を供給するため... | |
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焦点距離:42mm / 絞り:F11 / シャッタースピード:1/320秒 / ISO:100 使用機材:Leica SL2 + バリオ・エルマリート SL24-90mm F2.8-4.0 ASPH. LEICASL2 M型とは別にライカを支える大きな柱として成長したLマウントシリーズ。その頂点に君臨する『Leica SL』が遂にフルモデルチェンジを果たした。今回のKasyapa for Leicaでは最新機種『Leic... | |
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