このエルマー90mmはそれまでの4枚のレンズから、1枚減らした3枚のレンズを使って生産されたので『トリプレット』と呼ばれるレンズです。非常に高い解像力を誇り、「剃刀のような」描写とすら言われたレンズですが…この描写です。レンズ枚数が少ない分、光が濁らず色も瑞々しく再現され、葉の1枚1枚を繊細に描き出すその様子はまさに素晴らしいの一言でしょう!4枚構成の通常のエルマーも捨てがたい描写ですが、この繊細さ、この瑞々しさはトリプレットタイプだからこそのものです。
快晴、逆光ではもちろんフレアが生じますが、この程度であれば心地の良いもの。ビル壁面材の縞も見事に描写し、解像力がM9-Pの画素ピッチを超えてしまいモアレが。現代のレンズはコンピュータ処理で作られ、10枚以上のレンズが複雑に組み合わされて居ますが、たった3枚のレンズからこの描写が得られるとは…。オールドレンズの世界、滲みやボケだけが魅力なのではありません。
90mmという画角、これは実に扱いやすい焦点距離で、被写体を切り取るレンジファインダーの楽しみをしっかり味わう事が出来ます。どうも望遠というと人気が無い様なのですが、ライカの望遠は銘レンズ揃い。まき上がる砂粒まで捉えるこの描写、ぜひ体験していただきたい!
1960年代に生産され、齢50を超えるレンズ。それがこの描写とは…当時の設計者の技量が伺えます。
『Triplet-Elmar』は姿かたちの美しいレンズとしても有名。ライツ黄金期の上質なメッキと加工、スリムで軽快なそのボディデザインは非常に完成度の高いものです。そして、その高い描写力。軽量な90mmレンズのチョイスとして、ぜひ候補に入れていただきたいレンズの1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff