銀座は『ライカプロフェッショナルストア東京』、先日こちらでライカカメラ社の光学設計責任者”Peter Karbe”氏によるライカシステムの設計フィロソフィーについての講演が行われました。題して『Innovation vs Tradition?』!! 世界初の35mm判カメラ「ウル・ライカ」の開発から100年目の今年、ライカカメラ社は本社をゾルムスから創業の地ウェッツラーに移す大きな節目の年でもあります。長い歴史と伝統を持ちつつ、常に新しい革新的な技術を追求してやまないライカカメラ社。その”伝統対革新?”と題された講演について、弊社スタッフも勉強させていただきましたので、レポート致します!
「本日はお集まり頂きありがとうございます。」
ライカカメラ社光学設計責任者のPeter Karbe氏の挨拶から講演は始まりました。
ライカの生みの親である”オスカー・バルナック氏”、大判カメラが主流で静止的な写真、大きなボケ量と絵画的な写真の時代に、いかに35mmフォーマットを採用したライカが革新的であったかが語られます。
ライカのレンズ作りに関して、レンズ硝材の開発やコーティングの技術革新。そしてその判定基準についてもお話が有りました。当時の人々が鑑賞するプリントサイズから算出したレンズに必要な解像度のお話など、一味違った写真史が語られるのはライカが35mmフィルム写真の創立と発展のパイオニアとしてこれまで歩み続けてきた故でしょう。
F値と焦点距離別のライカMシステムの相関図。ライカM4時代のバリエーションで、広範な焦点距離は揃っていた事が伺えます。
更なる革新を求めて、小型化と高画質化に大きく貢献する非球面レンズに関してもライカは研究を随時進めていました。しかし通常の球面研磨と異なる非球面の研磨は技術的な難易度が非常に高く、数々の方法を試してはフィードバックを重ね、今のクォリティに暫時近づけて行った事が語られました。
これが今の非球面研磨に関しての簡単な見取り図。この他にも場合によって数多くの行程が必要になるとの事ですが、これだけを見てもいかに正確な非球面を削り出すのが難しい行程であるかが伝わってきます。
そうした技術革新を重ね、今に至ったライカカメラ社。しかし、それが決して伝統と革新の一方的な対決ではなかった事はこの写真を見て頂ければお分かり頂けるでしょう。決して過去の伝統を切り捨てず、より現代的に洗練させて行く事で生み出されるライカカメラ社のプロダクト達。それは初代M型カメラのライカM3と、最新機種のライカMのフォルムが非常に近しい事からもしっかりと伝わってきます。
そして、今やそのプロダクトはMシステムを誇示する事だけでなく”オスカーバルナック”をはじめとするLEICAを生み出した伝統の精神を引き継ぎ、ライカSシステムやライカXシリーズ、そしてコンパクトカメラなど様々なフォーマットで、最適なライカカメラ社の革新的なプロダクトを使用する事が出来る様になっています。
えてして対決の様相をとってしまいがちな”伝統”と”革新”。ですがその2つのより良い相乗効果を生み出せている事が、ライカカメラ社の各種のプロダクトが強い魅力を放っている所以なのでしょう!
1つのボディ、1つのレンズにまで、写真を撮る事の絶え無き伝統と情熱が詰まっているライカカメラ社のプロダクト。その熱い哲学に触れた一夜でした。