

往年の銘玉をクラシックな外観と先端技術を融合して復刻する「クラシックレンズシリーズ」の第5弾として『ズミルックス M50mm F1.4 11714』が発売されました。
本レンズは1962年に登場したズミルックスM50mm F1.4の2ndモデルをベースに最短撮影距離を1mから70cmに短縮するなど、現在のM型カメラに合わせた改良が施されており、より自由な撮影スタイルに対応するようになっています。絞り開放から得られる美しいボケ味と絞った際のシャープかつコントラストが高い描写で人気のオリジナルレンズが復刻でどのように生まれ変わったのか。早速撮影に出掛けてきました。
公園で見つけた大寒桜。枝の下から見上げながら撮影したので花の部分に明るさを加えるべく露出は2段プラスに補正して撮影しましたが、花のグラデーションは損なわれず色のりの良さを感じることができました。柔らかいフレアの中にしっかりと被写体を解像しているのはさすがズミルックスです。

洋館の大階段にステンドガラス越しの優しい光が差し込んだシーンでは窓のハイライト部分の滲みにオールドレンズらしさを感じることができました。それでも暗部の粘りは最新レンズにも通じるライカらしさがあり、60年以上も前に設計されたレンズながら性能の高さを感じさせられます。

1つ上のカット同様、ハイライト部はかなり滲んでいますが、細かな装飾までしっかり描いており、被写体の立体感もしっかりと再現しています。

周辺減光もほとんど無く、絞り開放から隅々まで良く写るレンズです。とは言え、最新レンズのような鋭さはなく程よい柔らかさを加味してくれる印象です。細部まで忠実に切り取ると言うよりは、その場の雰囲気を上品に切り取ってくれる感じです。

被写体に70cmまで寄れるようになったので撮影の自由度が広がっただけではなく、より柔らかなボケが楽しめるようになりました。溶けるようなという言葉がピッタリな柔らかさを見せてくれました。

建物の煉瓦地まで細かく捉えようとF5.6まで絞ったカット。期待通り建物の細部までしっかり描いてくれましたが、硬くなり過ぎないのが嬉しいポイントです。

ショーウィンドウに飾られていた造花はレンズによる瑞々しさの演出で生花と見間違うほどです。そう言えば、ズミルックスM50mm F1.4 初代はしっとりとした描写が印象的でしたが、そんな先代の特徴をしっかり受け継いだ写りです。

雨が降り出す数分前。周囲がかなり暗くなってきた中にカラフルなテーブルを発見。もう少し派手な画になるかと思いましたが、周囲のしっとりとした雰囲気を取り込んだ大人しめな仕上がりになりました。よく空気感という言葉を耳にしますが、まさにそんな感じです。

オールドレンズを手にすると被写体にも古さを求めてしまう筆者。レンズの持つ柔らかさがその歴史をいい塩梅に仕上げてくれます。精緻かつ優しい描写は様々なシーンで活躍してくれそうです。
程よいオールドレンズらしさ
オリジナルのズミルックス M50mm F1.4 2ndは、初代と同じ5群7枚のレンズ構成のままレンズ貼り合わせ部分に空間を取り入れたことで空気レンズとも呼ばれています。初期モデルこそ貴婦人と呼ばれる初代と同じシルバークローム鏡筒で波型のローレットが採用されていましたが、その後ローレットのデザインやカラーが変更され、1991年に最短撮影距離が70cmになった3rdモデルへと進化していくのですが、光学系は2006年の非球面レンズが採用されたズミルックス M50mm F1.4 ASPH.(4th)になるまで40年以上変更がなかったと言われています。そんな球面レンズの完成形とも言えるレンズの復刻モデルは、外観デザインは最初期、使い勝手は3rdモデルと、マニア心をくすぐる面白い仕様になっていました。そしてヴィンテージデザインのラウンド型フードが付属するのも嬉しいポイントです。
高めのコントラストと柔らかい滲みは現代の寄りのオールドレンズといった感じです。かつて初代を使用した際、強めのフレアに難儀した記憶があっただけに、本復刻レンズは程よいオールドレンズらしさがちょうど良いのです。ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff