
今回はアポランターシリーズとして初の広角レンズとなる『APO-LANTHAR 28mm F2 Aspherical VM』をご紹介いたします。既発売のAPO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM、APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical VM、APO-LANTHAR 50mm F3.5 VMに続く、フォクトレンダー史上最高性能を有するVMマウント広角レンズです。フルサイズMマウントセンサーに最適化され、アポクロマート設計により軸上色収差をはじめとする各種の収差を徹底的に排除するとともに、解像力やコントラスト再現性に関しても究極の性能を追求。8群12枚構成のレンズには異常部分分散ガラス6枚、両面非球面レンズ2枚を投入し、28mmF2という大口径広角レンズの価値観を一変させる性能を誇ります。メーカーからも「究極の性能という技術者の夢は時として独善に陥り、レンズのサイズや重量が増えることで撮影者の喜びとつながらない場合もあります。フォクトレンダーのレンズは、妥協のない光学性能を達成しながら、ハンドリングにも優れているべきであると私たちは考えます。」とある通り、APO-LANTHAR 28mm F2 Aspherical VM の目指した究極の光学性能とコンパクトさの両立は、その理想形の一つであり、マウント面からの全長は50.0mm と既発売の準広角レンズAPO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical VMよりもさらに短く、引き締まったサイズ感を実現しています。
また、12枚からなる絞り羽根は円形に近く、点光源などのボケも素直に描写します。同梱の金属製バヨネットフードは専用設計で、遮光効果とブライトフレームのケラレ双方を考慮した花形のデザインを採用。そしてVMレンズには珍しくリバース装着も可能です。
トップの一枚目、階段に差し込むやわらかな自然光、陰影の差が強く出やすいこのような室内環境においても黒潰れすることもなく、木目の筋や使い込まれたことでできたわずかなへこみや色ムラまで、実に繊細に描き分けられています。

今回、ボディ内補正は全てオフの状態で撮影をしています。F8に絞ったカットですが周辺までしっかり写っているのはもちろん、光量落ちも見受けられません。

続いては開放絞りでのカット。木漏れ日の中を歩く人たちを非常に立体的に写してくれました。柔らかいトーンで表現される影がとても綺麗です。

歳月を感じさせるレンガの重厚感を保ちつつ、ガラスの反射も綺麗に描き、その湿度感も持ち合わせています。

28mmという画角から「スナップ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。F5.6に絞っていますが被写界深度がほどよく、赤と青のトンガリと背景の木々との境界が非常にクリアに描かれていて、驚いた一枚です。さらにその奥につながる空の描写まで総じて「気持ちのいい」カットになりました。

手前の手すり、正確には滑り止めにピントを合わせてのアプローチ。ピント面にはキレがありつつもアウトフォーカスされた部分も綺麗にボケています。モニターを見ての撮影でしたが、細かい溝がある滑り止めのところにピントが重なったときの浮かび上がり方にゾクっとしました。このレンズの解像力の高さを改めて実感した一枚です。

カーテンの繊細な透け感やハイライト部の光を掬い取る優しさ、ステンドガラスの色合いがしっかりと再現された様を見るとこのレンズの素晴らしさを改めて実感します。

最短撮影距離0.5mでの撮影。ペイントされた真鍮の質感が見事に再現されています。距離計に連動する最短撮影距離は0.7m(装着するカメラにより異なる)ですが、そこから更にヘリコイドを繰り出し、0.5mまで撮影可能です。 さらにフローティング機構を搭載し、近接撮影時でも高性能を発揮します。


質感の描写はガラス越しでも変わらず、むしろそこに存在する空気感までも見事に再現してくれました。

オーソドックスな被写体ではありますが、今回はその描写にただただ圧倒されました。やはりVoigltanderの誇る「APO-LANTHAR」ならではの味わいがあります。

公園の大池に住むカルガモは普段、近住民から餌をもらっているようで警戒心が薄く、近くまで寄ることが出来ました。このカットでようやく手前側のボケが硬いかな?と思いましたが、一日撮影してみて気になったのはこのカットくらい、というのはむしろ非常に好印象です。

この距離感をもった被写体がしっかりシャープに写っていることが素晴らしく思います。そして開放絞りだからこその、手前と奥の背景にかけての自然なボケ。何度見返しても惚れ惚れする描写でした。

海外からの観光客で賑わう繁華街でナイトスナップも行いました。光源が多く、様々なものに目移りしそうですが、自然な形で被写体に導いてくれました。
28mmの王道
アポランターは何本も撮ってきましたが、どのレンズもその写りの良さに唸らせられてばかり。今回初めての広角画角ということで、同じくらい感動できるのかという一抹の不安があったのですが、全くの杞憂でした。265gの軽さと、リバース装着可能なレンズフードで携行性能にも優れています。広角レンズに高解像力を求める方は多いと思いますので、このレンズはそういった方にとっての待望の一本となる『Voigtlander APO-LANTHAR 28mm F2 Aspherical VM』。ぜひ使ってみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff