Leicaで広角レンズ、28mmとなると筆頭に上がるのがこの『Elmarit28mm』のシリーズではないでしょうか。路上スナップを行う写真家やジャーナリスト達にも愛されたレンジファインダー機であるLeica、28mmの広角は相性が良く、重宝される画角なのは間違いありません。伝説と化した近似対称設計の初代Elmaritからアスフェリカルレンズの採用された現行まで、4度の大きなモデルチェンジを行いながら、様々な写真家の眼として活躍してきた銘レンズです。
私も以前、フィルムで同年代のレンズを使っていましたが、その印象は強いものでした。広角レンズというとシャープネスとコントラストが強く、ドライな描写のレンズが多い中、この『Elmarit28mm』はどこか湿潤で、潤いのある描写をしてくれるのです。Tri-Xの若干粗い粒子の中に浮かび上がる芳醇なトーンは、撮影地で感じた自分の気持ちを余すところ無く再現してくれるものでした。
設計ゆえか、手前の花や周辺部に収差が残り、何とも言えない甘やかな描写が印象的です。小雨降る中での撮影でしたが、Elmaritにはおあつらえ向きだったかもしれません。コントラストのつき方も今のレンズのようにきつく無く、緩やかなレンズなので暗部にも驚くほどトーンが残っていました。ラチチュードの狭いデジタルにはありがたい描写です。
もちろん絞り込めばグッとシャープに。初代Elmaritと比べてデジタルとの相性も良く、四隅までしっかり光が回っています。しかし、これだけ絞り込んでも描写に神経質さの無いのは大きな魅力です。
現行の『Elmarit28mm asph』は非球面レンズの採用でグッとコンパクト、開放から抜群のコントラストとシャープネスを誇るドライな描写のレンズに生まれ変わりました。ウェットな旧世代レンズをとるか、それともシャープな現行世代をとるか。得たい描写によって様々なチョイスが出来るのもライカレンズの楽しみの1つ。皆様はどちらがお好みでしょうか。
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.